衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問64:受動喫煙対策
職場における受動喫煙防止対策に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア健康増進法(令和元年7月施行・令和2年4月全面施行)により、多数の者が利用する施設において、施設の種類に応じて禁煙義務または喫煙室の設置・管理義務が課せられた。
- イ職場(事務所・工場等)においては、事業者は労働者の受動喫煙を防止するための措置を講ずるよう努めるとともに、室内での喫煙は専用喫煙室等に限定し、非喫煙者が喫煙者の煙にさらされないようにすることが求められる。
- ウ受動喫煙によって生じる健康被害には、肺がん・心疾患・脳卒中・乳幼児突然死症候群(SIDS)等が含まれ、これらのリスク上昇は非喫煙者が喫煙者と同じ職場・空間で長期間過ごした場合に特に問題となる。
- エ健康増進法の改正により、すべての職場において罰則付きの「完全禁煙義務」が課せられており、喫煙室の設置は一切認められていない。正答
- オ喫煙者の服や身体に付着したタバコの成分が、時間が経過した後に放散されることで非喫煙者に影響を与える現象を「サードハンドスモーク(三次喫煙)」と呼び、乳幼児への影響が指摘されている。
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誤りはエです。健康増進法の改正によって、すべての職場が「完全禁煙義務のみで喫煙室設置不可」となったわけではありません。職場(事務所・工場等)は「第二種施設」として原則屋内禁煙が義務化されましたが、一定の基準(性能・構造・管理基準)を満たした専用喫煙室(喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室等)の設置は認められています。完全に喫煙室の設置が禁止されているのは病院・学校等の「第一種施設(特定施設)」です。
ア・イ・ウ・オはいずれも正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 健康増進法の改正(令和元年7月一部施行・令和2年4月全面施行)により、施設の種類に応じた分類(第一種・第二種)に基づいて禁煙義務・喫煙室設置の基準が定められました。学校・病院・官公庁(第一種施設)では敷地内禁煙(原則)、それ以外(第二種施設)では屋内禁煙が義務化されました。
- イ(正): 労働安全衛生法第68条の2および関連通達により、事業者は労働者の受動喫煙防止のための措置(喫煙室の設置・換気管理・非喫煙区域への立入禁止等)を講ずる義務があります。
- ウ(正): 受動喫煙の健康被害として、肺がん(受動喫煙で約1.3倍)・心疾患・脳卒中・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・喘息悪化・SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスク上昇が科学的に確認されています。
- エ(誤): 職場(第二種施設)では原則屋内禁煙が義務化されていますが、所定の基準を満たした専用喫煙室の設置は認められています。「完全禁煙義務のみ・喫煙室設置不可」は過誤です。第一種施設(学校・病院等)は原則敷地内禁煙で喫煙場所の設置が厳しく制限されています。
- オ(正): サードハンドスモーク(THS)は比較的新しく注目されている概念で、タバコの残留成分が服・皮膚・壁・カーペット等に付着し、時間を経て再放散されることで生じます。特に乳幼児はハイハイ・床上での遊び等により残留物への暴露が多く問題視されています。
【理論的背景】
受動喫煙(Passive Smoking / Second-Hand Smoke: SHS)は、非喫煙者が喫煙者の吐き出す煙(主流煙)とタバコの先から出る煙(副流煙)にさらされることを指します。副流煙には主流煙より高濃度の有害物質(ニコチン・タール・一酸化炭素・発がん性物質等)が含まれており、受動喫煙の健康被害は科学的に十分に確立されています。
タバコ煙の健康影響の分類:
1. ファーストハンドスモーク(一次喫煙): 喫煙者本人が直接吸い込む煙
2. セカンドハンドスモーク(二次喫煙・受動喫煙): 非喫煙者が喫煙者の煙にさらされること
3. サードハンドスモーク(三次喫煙): 衣服・家具・壁等に付着した残留成分が再放散して暴露
WHO(世界保健機関)はタバコを「量に関わらず安全な量はない」と宣言しており、タバコフリーの環境が受動喫煙被害を防ぐ唯一の確実な方法であることを強調しています。
【実務・条文構造】
改正健康増進法(令和2年4月全面施行)の施設分類と規制内容:
| 施設区分 | 施設の例 | 規制内容 |
|---|---|---|
| 第一種施設(特定施設) | 学校・病院・官公庁・児童福祉施設等 | 原則敷地内禁煙(屋外の喫煙場所の設置は基準に従い可) |
| 第二種施設 | 事務所・工場・ホテル・飲食店(一般)等 | 原則屋内禁煙。基準を満たした喫煙室(喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室等)の設置は可 |
| 喫煙目的施設 | 喫煙を主目的とするバー・スナック(喫煙可能室がある施設として届出) | 20歳未満立入禁止を条件に喫煙可 |
専用喫煙室の基準(第二種施設):
1. 喫煙専用室: タバコを喫煙できる・飲食不可。出入口の風速0.2m/s以上の排気基準等あり
2. 加熱式タバコ専用喫煙室: 加熱式タバコのみ喫煙可・飲食可。専用喫煙室より基準が緩和
喫煙室の管理基準(風速・設備・標識):
- 喫煙室の出入口で室内から室外方向に風速0.2m/s以上の気流が必要
- 喫煙室を示す標識の掲示(20歳未満の立入禁止の表示を含む)
- 20歳未満の者の喫煙室への立入禁止(従業員・利用者とも)
受動喫煙防止の職場での実務対策:
- 喫煙室の設置・換気基準の遵守
- 喫煙区域と非喫煙区域の明確な分離
- 喫煙者が喫煙後に事務室等に戻る際のサードハンドスモーク対策(衣服の管理等)
- 禁煙支援プログラムの提供(禁煙外来への誘導・EAP等)
【試験での位置づけ】
受動喫煙防止の問題では「改正健康増進法による施設区分(第一種・第二種)と規制内容の違い」「職場(第二種施設)は原則屋内禁煙だが基準を満たした喫煙室の設置は可(完全禁煙義務ではない)」「受動喫煙の健康被害(肺がん・心疾患・SIDS等)」「サードハンドスモーク(三次喫煙)の概念」が出題ポイントです。エのような「すべての職場で完全禁煙・喫煙室不可」という過度な一般化は、第一種施設の規制を第二種施設に混同させる典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 令和元年施行・令和2年全面施行という段階的施行のスケジュールは試験で問われる場合があります。令和元年7月施行分は学校・病院・官公庁等の第一種施設の敷地内禁煙(一部例外あり)が対象で、令和2年4月施行分は飲食店を含む第二種施設の屋内禁煙が全面適用されました。
- イ: 事業者の受動喫煙防止義務は労働安全衛生法第68条の2に規定されており、安衛法改正(平成26年)以前は努力義務でしたが、その後の指針強化・健康増進法改正の流れで実質的に強化されています。違反した事業者は行政指導・勧告・場合によっては罰則の対象となります。
- ウ: 受動喫煙による肺がんリスク上昇(約1.3倍)は、喫煙者本人の肺がんリスク(約4〜5倍)と比べると低いですが、集団レベルでは受動喫煙暴露者の人口が多いため、公衆衛生上の意義は大きいです。心疾患・脳卒中についても1.3倍前後のリスク上昇が報告されており、心血管疾患への影響も無視できません。
- エ: 飲食店の全面禁煙については、改正健康増進法では規模・資本金等に応じた経過措置があり、中小規模・既存飲食店には一定の猶予期間・例外規定が設けられました。ただし令和2年4月以降は原則として屋内禁煙が義務化されており、例外規定は限定的です。
- オ: サードハンドスモークの主要な有害成分としてニコチン由来の発がん性物質(タバコ特異的ニトロサミン: TSNA等)が特定されており、特に乳幼児が喫煙後の床・カーペット・布地に接触したり、タバコ成分が付着した物体を口にしたりする「経口暴露」が問題視されています。
【根拠法令】健康増進法(改正・令和元年7月施行・令和2年4月全面施行)第25条の2以降・労働安全衛生法第68条の2(受動喫煙防止のための措置)。
【補足】職場(第二種施設)は「原則屋内禁煙」だが基準を満たした喫煙室の設置は可(完全禁煙義務ではない)。第一種施設(学校・病院等)は原則敷地内禁煙。受動喫煙健康被害:肺がん・心疾患・SIDS等。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康増進法第25条の2以降(令和元年7月施行)。職場・事務所等は「第二種施設」に分類され、罰則付きの原則屋内禁煙義務があるが、基準を満たした専用喫煙室の設置は認められており「喫煙室が一切認められていない」は誤り。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。