労働衛生(有害業務以外)70救急処置

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問70:救急処置

骨折・脱臼の応急処置に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 骨折の応急処置においては、骨折部位を副木(添え木)や三角巾等で固定することで、二次損傷(血管・神経の損傷、出血の増悪)を防ぐことを目的とする。
  • 開放骨折(複雑骨折)とは、骨折部位の骨片が皮膚を突き破って外部に露出している、または骨折部位に外部から通じる傷がある状態であり、感染リスクが高いため優先的に傷口を清潔に保つ処置が必要である。
  • 骨折の固定を行う際、副木(添え木)は骨折部位のみを固定し、骨折部位の上下の関節は固定に含めないことで、関節の自然回復を促すことが推奨される。正答
  • 脱臼(関節の骨がずれた状態)の応急処置では、ずれた関節を現場で元の位置に戻そうとする「整復」は一般人が行うべきでなく、固定した状態で医療機関に搬送することが正しい対応である。
  • 脊椎(背骨・頸椎)の損傷が疑われる場合は、頸椎・脊椎を動かすことで脊髄損傷が悪化するリスクがあるため、できる限り頭部・頸部を動かさずに固定した状態で救急搬送を待つことが重要である。
正答:骨折の固定を行う際、副木(添え木)は骨折部位のみを固定し、骨折部位の上下の関節は固定に含めないことで、関節の自然回復を促すことが推奨される。

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誤りはウです。「骨折部位の上下の関節は固定に含めない」という部分が誤りです。骨折の固定では骨折部位の上下にある関節を含めて固定するのが原則です。例えば前腕(橈骨・尺骨)の骨折では、手首と肘の両方を固定範囲に含めます。関節を固定から外すと、関節の動きによって骨折部位が動いてしまい、二次損傷(神経・血管の損傷)が起きる危険があります。

ア(固定の目的)・イ(開放骨折の定義と対処)・エ(脱臼の整復は医療機関へ)・オ(頸椎損傷の固定搬送)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 骨折の応急処置の主目的は「固定による二次損傷の防止」です。固定なしで骨折部位が動くと、骨片が周囲の血管・神経・筋肉を傷つける二次損傷が起こります。副木(添え木)・包帯・三角巾等を用いて固定します。
  • イ(正): 開放骨折(複雑骨折)は骨が皮膚を突き破って外部と通じる状態であり、感染(骨髄炎)のリスクが高く、清潔なガーゼ等で傷口を覆い(露出した骨を押し込まない)感染対策を行いながら救急搬送が必要です。
  • ウ(誤): 骨折の固定は骨折部位の上下の関節を含めた範囲で行うことが原則です。例えば前腕の骨折では手首と肘を含む長さの副木で固定し、下腿骨折では足首と膝を含む長さで固定します。「上下の関節を固定に含めない」は誤りであり、関節を除くと骨折部位の動揺を防止できません。
  • エ(正): 脱臼の整復(ずれた骨を元の位置に戻す操作)は解剖学的知識と技術が必要であり、誤った整復は血管・神経損傷を悪化させる危険があります。一般人は整復を試みず、固定した状態で医療機関に搬送することが正しい対応です。
  • オ(正): 頸椎・脊椎損傷が疑われる場合(転落・交通事故・高所落下等)は、頭部・頸部の不用意な動きが脊髄を圧迫・損傷して四肢麻痺等の後遺症を残す危険があります。傷病者を動かさずに救急搬送を待つか、やむを得ず搬送する場合は専門の固定具(バックボード・頸椎カラー等)を使用します。
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【理論的背景】

骨折の応急処置における固定の原則「骨折部位の上下の関節を含めた固定」は、生体力学的な理由に基づいています。長管骨(大腿骨・上腕骨・橈骨等)の骨折では、骨折端から各方向に筋肉の引っ張り力が働いています。関節を含めた固定によってこれらの筋肉の作用が遮断され、骨折端の動揺が最小化されます。

骨折の分類:

1. 閉鎖骨折(単純骨折): 骨折部位が外部と交通していない状態。皮膚は無傷。

2. 開放骨折(複雑骨折): 骨折部位が外部と交通する(皮膚が破れて骨が見える・または傷が骨折部位まで達している)状態。感染リスクが高い。

3. 疲労骨折: 繰り返しの小さな負荷によって生じる骨折(マラソン選手・軍隊での長行軍等)。

4. 病的骨折: 骨腫瘍・骨粗鬆症等で骨が脆弱化した状態での骨折。

骨折の合併症(応急処置で防止すべきもの):

  • 神経損傷(骨片による神経圧迫・切断)
  • 血管損傷(骨片による動脈・静脈の損傷→出血・虚血)
  • コンパートメント症候群(骨折後の浮腫による圧力上昇→筋肉・神経の壊死)

【実務・条文構造】

骨折の応急固定の実施要領:

固定の原則:

1. 骨折部位の上下の関節を含める長さの副木・添え木を準備

2. 骨折部位に直接副木が当たらないよう間にガーゼ・布を挟む

3. 副木を包帯または三角巾で骨折部位の上下の複数箇所で固定

4. 固定後は末梢(手先・足先)の色・感覚・動き(3つ)を確認(神経・血管圧迫の有無)

各部位の固定範囲:

| 骨折部位 | 固定に含める関節 |

|---|---|

| 前腕(橈骨・尺骨) | 手首 + 肘 |

| 上腕 | 肩 + 肘 |

| 下腿(脛骨・腓骨) | 足首 + 膝 |

| 大腿(大腿骨) | 膝 + 股関節(体幹まで) |

脱臼の特徴と応急処置:

  • 肩関節脱臼: スポーツ・転倒で最も多い脱臼。三角巾で腕を固定し医療機関へ
  • 指(PIP関節・DIP関節)脱臼: スポーツ中に多い。引っ張って整復する「指を引く」行為は禁忌。添え木固定で受診
  • 顎関節脱臼: 大きく口を開けた後に起こりやすい。無理に閉じようとせず顎を支えて医療機関へ

【試験での位置づけ】

骨折・脱臼の問題では「骨折固定の原則(上下の関節を含める)」「開放骨折の定義と優先処置(感染対策・露出骨を押し込まない)」「脱臼整復は一般人が行わず医療機関へ」「頸椎損傷疑いは頭部を動かさずに固定搬送」が頻出事項です。ウのような「上下の関節は固定から外す」という誤りは、骨折固定の基本原則を逆にした典型的な引っかけです。「なぜ上下の関節を含めて固定するのか(関節が動くと骨折端も動く)」という論理的理解が記憶の定着に有効です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 副木がない場合の代替品として、雑誌・段ボール・杖・折った傘・定規等が使えます。板が平らでなくても包帯・布テープで固定することで応急固定が可能です。「救急用具がなくても身の回りのものを活用する」という発想が緊急時に重要です。
  • イ: 開放骨折の現場処置では「傷口から露出している骨片を元に戻そうとしない(禁忌)」「清潔なガーゼで傷口を覆う」「出血がある場合は直接圧迫で止血」「救急搬送を最優先」の4点が最重要です。骨片を皮膚の中に押し込む行為は、汚染された骨片を体内に持ち込んで感染を促進する危険な行為です。
  • エ: 脱臼の中でも「反復性脱臼(習慣性脱臼)」といって、一度脱臼した関節が繰り返し脱臼するようになる病態があります(肩関節・顎関節に多い)。このような既往歴がある場合でも、現場での整復は行わず医療機関での処置が原則です。
  • オ: 頸椎損傷疑いの傷病者を「救出」や「搬送」の必要がある場合(倒壊建物・水中等)は、可能な限り頭部と体幹を一直線(中立位)に保ちながら複数人で水平に引き出すことが重要です。1人で引きずる・頭だけを引く等の行為は脊髄損傷を悪化させる危険があります。

【根拠】医学的事実(確立した救急医学・整形外科)。日本整形外科学会・日本救急医学会の応急処置ガイドライン。

【補足】骨折固定=骨折部位の「上下の関節を含めた」範囲で固定(関節を除くは誤り)。開放骨折の露出骨は押し込まない。脱臼整復は一般人が行わず医療機関へ。頸椎損傷疑いは頭部を固定して救急搬送。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した救急医学・整形外科)。骨折の固定は「骨折部位の上下の関節を含めた固定」が原則であり、「骨折部位のみ固定し関節を除く」は誤り。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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