労働衛生(有害業務以外)81救急処置

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問81:救急処置

AED(自動体外式除細動器)の使用に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • AEDは電気ショックによって心臓の異常なリズム(心室細動)をリセットし、正常な心拍を再開させることを目的とした機器であり、操作は機器の音声ガイダンスに従って行う。
  • AEDのパッドを貼り付ける位置は、一方を右鎖骨下(右の胸の上部)、もう一方を左脇腹〜左わきの下(心臓の左下側)に貼ることが標準的な位置である。
  • 胸部に湿り気・水分がある場合は、パッドが密着しない・感電リスクがあるため、ガーゼやタオル等で胸を拭いてから(乾燥させてから)パッドを貼ることが推奨される。
  • AEDは心停止の原因に関わらず、どのような心停止(心臓停止・溺水・感電等すべての状況)でも有効であり、電気ショックによってあらゆる心停止を回復させることができる。正答
  • 除細動(電気ショック)を行う際には、AEDが「充電中」「離れてください」等の指示を出した場合、傷病者に触れていないことを確認してから放電ボタンを押す(または自動放電を待つ)ことが安全上重要である。
正答:AEDは心停止の原因に関わらず、どのような心停止(心臓停止・溺水・感電等すべての状況)でも有効であり、電気ショックによってあらゆる心停止を回復させることができる。

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誤りはエです。AEDは「あらゆる心停止」に有効なわけではありません。AEDが有効なのは、心臓が細かく震えるだけで有効な収縮ができない心室細動(VF)や、無脈性の非常に速い心拍(無脈性心室頻拍)の場合です。心臓が完全に止まっている無収縮(心静止)や、電気的活動はあるが収縮できない状態(PEA)には、電気ショックは有効ではありません。AEDは自動的にこれらを判断し、電気ショックが必要な場合のみ充電・放電します。

ア(AEDの目的と操作)・イ(パッドの貼り位置)・ウ(乾燥の重要性)・オ(離れてからの放電)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): AEDは「自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)」の略であり、心電図を自動分析して電気ショック(除細動)の適否を判断し、音声ガイダンスで操作者を誘導します。医療の訓練なしに一般市民が使用できるよう設計されています。
  • イ(正): パッドの標準位置(2電極パッド)は①右胸(右鎖骨下・胸骨右縁外側)②心臓の左下(左わきの下〜乳頭の左下)です。この位置で心臓を2つのパッドではさむように電流を流します。小児用パッドまたは小児モードでは位置が異なります(前胸・後背の配置も可)。
  • ウ(正): パッドと皮膚の密着が悪いとアーク放電(火花)・感電リスクが生じます。また汗・水分があると電流が分散してショックの効果が低下します。雨の中・溺水後の救命では特に胸部の乾燥確認が重要です。
  • エ(誤): AEDは心室細動(VF)および無脈性心室頻拍(pVT)という特定の異常リズムにのみ有効です。心停止の原因や心電図の種類によっては電気ショックが有効ではない場合があります。無収縮(心静止・Asystole)やPEA(無脈性電気活動)は電気ショックの適応ではなく、胸骨圧迫(CPR)の継続と医療機関での専門治療が必要です。AEDは自動分析でこれらを識別し、ショック不要の場合は充電・放電しません。
  • オ(正): 除細動放電時に傷病者に触れた人は感電します。「全員離れてください」の確認は安全上の絶対要件であり、AEDが音声で「離れてください」と指示した際には操作者・周囲の全員が傷病者から離れていることを確認してから操作します。
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【理論的背景】

AEDが対応する「心室細動(Ventricular Fibrillation: VF)」は、心室筋が無秩序に細かく震え(細動)、ポンプとしての機能を失った状態です。心室細動では心臓から血液が送り出されないため、脳への血流が止まり数分以内に不可逆的脳損傷が生じます。

除細動の原理:

電気ショック(除細動)は、心臓全体に瞬時に大電流を流すことで「すべての心筋細胞を同時に脱分極させ(電気的リセット)」、その後の自発的な正常リズムの再起動を促します。心室細動では多数の心筋細胞がバラバラのタイミングで動いているため、電気ショックでいったん全員を「同時スタート」させることで同期した収縮が再開できます。

心停止の4リズムと除細動の適応:

| 心電図リズム | 定義 | AED除細動の適応 |

|---|---|---|

| 心室細動(VF) | 心室筋の無秩序な細動 | あり(除細動が最有効) |

| 無脈性心室頻拍(pVT) | 非常に速い心室レート(脈なし) | あり(除細動が有効) |

| 無収縮(心静止・Asystole) | 心電図上の電気活動がない(フラット) | なし(CPRのみ継続) |

| PEA(無脈性電気活動) | 電気活動はあるが収縮せず脈なし | なし(CPRと原因治療) |

院外心停止の初期リズムの分布(統計):

  • 目撃あり・突然倒れた心停止(成人)の約50〜60%が初期VF/pVT(除細動適応)
  • 溺水・外傷・窒息等が原因の心停止では無収縮・PEAが多い(除細動適応でない場合が多い)

【実務・条文構造】

AED操作の標準的な手順(JRC蘇生ガイドライン2020準拠):

| ステップ | 操作内容 |

|---|---|

| ①AED電源ON | カバーを開ける・電源ボタンを押す(またはカバーを開けた時点で自動ON) |

| ②パッドを貼る | 音声指示に従い、右鎖骨下と左わきの下にパッドを貼る |

| ③心電図の自動分析 | AEDが自動的に心電図を分析(傷病者に触れない) |

| ④除細動が必要な場合 | 充電音・「離れてください」の指示→全員離れたことを確認 |

| ⑤放電 | 放電ボタンを押す(または自動放電) |

| ⑥CPR再開 | AEDの指示に従って直ちに胸骨圧迫を再開(約2分) |

| ⑦繰り返し | ②〜⑥を繰り返す(救急隊到着まで継続) |

小児(8歳未満・体重25kg未満)への対応:

  • 小児用パッド(または小児モード)の使用が推奨される
  • 小児用パッドがない場合は成人用パッドで対応可(前胸・後背の位置に配置)

【試験での位置づけ】

AEDの問題では「AEDが適応となるリズム(VF・pVT)と適応でないリズム(無収縮・PEA)の区別」「パッドの貼り位置(右鎖骨下・左わきの下)」「胸部の乾燥の必要性」「放電前の「全員離れる」確認の重要性」が頻出事項です。エのような「すべての心停止に有効」という誇張は、AEDの適応リズムの理解を問う典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: AEDの「自動」という特性は、心電図分析・ショックの必要性判断を機械が自動で行う点にあります。操作者は音声ガイダンスに従って操作するだけでよく、心電図の読解能力は不要です。これが一般市民でも使用できる設計の根拠です。
  • ウ: 溺水の被害者を救助した場合、胸部の乾燥が特に重要です。水に濡れた胸部にパッドを貼ると、水を介して電流が分散し十分な除細動効果が得られない上に、操作者・周囲への感電リスクも生じます。倒れた場所が濡れている場合は、傷病者を移動できる安全な乾いた場所に移してから(移動が安全な場合)パッドを装着することが推奨されます。
  • エ: 心臓ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)が埋め込まれている傷病者(胸部に小さな膨らみがある場合)では、ペースメーカー・ICDの位置にパッドを貼ることを避け(パッドをデバイスから2〜3cm以上離す)ます。また経皮薬物送達パッチ(ニトログリセリンパッチ等)は除去してから(または別の部位に)パッドを装着します。
  • オ: 「離れる」確認の徹底は救急講習でも特に強調されます。講習参加者から「患者に手が触れたまま放電してしまった」という経験談が報告されることがあり、全員離れているかどうかの目視確認と「全員離れています」という声かけが安全確保の実践的方法です。

【根拠】JRC蘇生ガイドライン2020(日本蘇生協議会)・AHA心肺蘇生ガイドライン2020。

【補足】AEDはVF・pVT(心室細動・無脈性心室頻拍)に有効。無収縮・PEAには除細動は適応なし。パッドは右鎖骨下・左わきの下。放電前に全員傷病者から離れることを確認。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した救急医学・除細動の原理)。AEDは「心室細動(VF)・無脈性心室頻拍(VT)」に有効な機器であり、無収縮(心静止)やPEA(無脈性電気活動)には電気ショックは有効ではない。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

AEDの操作手順・使用上の注意・適応頻出度A

労働衛生(有害業務以外)の他の問題

1
温熱環境・作業環境測定
2
食中毒・感染症
3
救急処置
4
メンタルヘルス・健康保持増進
5
労働衛生統計
6
採光照明・換気・事務室環境

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