衛生管理者 関係法令(有害業務) 問29:粉じん障害防止規則(粉じん則)・防じんマスクの規格
防じんマスクの選択・使用に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア粉じん作業(遊離けい酸含有粉じんが発生する作業)では、DS1・RS1等のいかなる等級の防じんマスクを使用しても、法令の要件を満たすことができる。
- イ石綿等の粉じんが発生する作業では、DS3またはRS3(粒子捕集効率99.9%以上)以上の防じんマスクを使用しなければならない。
- ウ防じんマスクは使用後に洗浄・消毒して翌日以降も繰り返し使用することが原則であり、使い捨ての防じんマスクを毎日廃棄することは不経済なため推奨されない。
- エ防じんマスクをR型(使い捨てでない型)として使用する場合、フィルターを定期的に交換するが、本体(面体・バルブ等)は耐用年数がないため半永久的に使用できる。
- オ防じんマスクの面体(フェイスシール部分)のフィットチェック(密着性確認)は、着用した本人が自ら実施できるものであり、医師・産業保健師等の専門家でなければ実施できないというわけではない。正答
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正しいのはオです。防じんマスクのフィットチェック(密着性確認)は、着用者本人が正しい着用方法で行うことができます(医師・専門家でなければできないものではありません)。フィットチェックには「プラスチェック(内圧をかけてフィルターがふくらむか確認)」や「マイナスチェック(息を吸い込んで面体が顔に吸い付くか確認)」等の方法があります。
各誤りの要点: ア→高危険な粉じん作業(特に遊離けい酸含有粉じん等)では、使用する防じんマスクの等級が指定されており、DS1等の低等級では不十分な場合があります。イ→石綿作業でのRS3・DS3使用義務は正しい記述です(これは正しい)。ウ→D型(使い捨て型)は1日使用後に廃棄するのが適切です(洗浄・再使用は不可)。エ→マスク本体も劣化・変形するため、無限に使えるものではありません。
防じんマスクの等級と主な用途(国家検定規格):
| 等級 | 粒子捕集効率 | 型式 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| DS1・RS1 | 80%以上 | D=使い捨て・R=使い捨てでない | 比較的粗い粉じん(コンクリート破砕等の低リスク粉じん) |
| DS2・RS2 | 95%以上 | 同上 | 一般的な粉じん作業・溶接ヒューム等 |
| DS3・RS3 | 99.9%以上 | 同上 | 石綿等・放射性粉じん等の高危険粉じん(最高等級) |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 粉じんの種類・作業のリスクに応じた等級の防じんマスクを選択する必要があります。石綿・遊離けい酸の高濃度作業ではRS3等の高等級が必要であり、DS1等の低等級では不十分です。
- イ(正): 石綿等の粉じんが発生する作業では、DS3またはRS3(99.9%以上の捕集効率)の防じんマスクが義務付けられています(石綿則・安衛則)。この記述は正しいです。
- ウ(誤): D型(Disposable:使い捨て型)の防じんマスクは1日ごと(または1作業ごと)に廃棄するものであり、洗浄・再使用は設計上想定されていません。R型(Reusable)はフィルター交換型ですが、使い捨てD型を再使用することは捕集効率の低下・形状変形・衛生問題が生じます。
- エ(誤): マスク本体(面体・バルブ等)も使用に伴い劣化・変形します。ゴムパッキン・バルブ等の部品は定期的な交換が必要であり、「半永久的に使用できる」は誤りです。
- オ(正): フィットチェック(陰圧法・陽圧法等)は、着用者本人が正しい手順に従い実施できます。医師・専門家のみが実施できるというわけではありません。ただし初回着用時は指導のもとで行うことが推奨されます。
【理論的背景】
防じんマスクの性能の核心は「粒子捕集効率(フィルターが粒子をどれだけ捕集できるか)」と「顔面との密着性(フィットチェックで確認)」の両方です。いくら高性能なフィルターを使っていても、顔とマスクの間に隙間があれば有害な粉じんが侵入します。フィットチェック(密着性確認)は着用のたびに実施すべき基本的な手順です。
防じんマスクの等級と対象粉じん:
- DS1/RS1(捕集効率80%): 軽度のリスクの粉じん(コンクリートの切断・研磨等)
- DS2/RS2(捕集効率95%): 中程度のリスクの粉じん(一般的な粉じん作業・金属加工・溶接ヒューム等)
- DS3/RS3(捕集効率99.9%以上): 高リスクの粉じん(石綿繊維・放射性粉じん・細菌等)
石綿作業での最高等級指定の理由:
石綿繊維は直径0.05〜0.5μmという非常に細い繊維であり、肺の深部(肺胞)まで到達します。低等級(80%・95%捕集)では20%・5%の繊維が通過してしまい、石綿肺・中皮腫・肺がんのリスクを大幅に高めます。99.9%という最高等級でも0.1%は通過しますが、現実的な作業時間・曝露量でのリスク最小化のため義務付けられています。
【実務・条文構造】
フィットチェックの方法(厚生労働省の通達・JIS等参照):
陰圧法(吸気バルブ閉塞チェック):
1. マスクを正しく装着する
2. 吸気口をふさぐ(手のひら等)
3. 息を吸う(吸い込む)
4. 面体が顔に引きつけられ、内側がわずかに凹む感触を確認
5. 隙間があれば面体から空気が入り「吸い込み」ができてしまう
陽圧法(呼気バルブ閉塞チェック):
1. マスクを正しく装着する
2. 呼気口をふさぐ(手のひら等)
3. 息を吐く(吐き出す)
4. 面体が顔から離れようとする圧力を感じ、空気が漏れないことを確認
5. 隙間があれば面体から空気が漏れる感触がある
フィットチェックの実施タイミング:
- 初回着用時
- 毎回の着用前(毎作業日)
- 着用位置を変えた後
- 体重変化・顔の形状変化(受傷・手術等)後
マスク本体の耐用年数と交換部品:
- 面体(ゴム・プラスチック製): 劣化・変形により密着性が低下→定期交換が必要
- 吸気バルブ・呼気バルブ: ゴム製で劣化・変形・異物付着で機能低下→定期交換
- 頭部ひも(ストラップ): 弾力性低下で密着性に影響→定期交換
- フィルター(R型): 目詰まり・捕集効率低下・汚染で交換
【試験での位置づけ】
防じんマスク問題の頻出は「石綿作業=DS3/RS3の最高等級が必要」「D型(使い捨て)は再使用不可」「フィットチェックは着用者本人が実施できる」「マスク本体も劣化する(半永久的使用は不可)」の4点です。ウのような「使い捨てD型を洗浄・再使用してよい」という誤りは、「もったいない」という経済観念から来る実務的な間違いを問題化した典型例です。また等級選択(DS1でどんな粉じん作業でも可とする誤り)も頻出の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 防じんマスクの等級選択は「取り扱う粉じんの種類・濃度・発生量・作業時間」等を考慮して行います。粉じん則・石綿則・特化則等の規則では、特定の作業に対して「それ以上の等級」の防じんマスクの使用が義務付けられており、事業者の任意の選択に委ねられるものではありません。
- イ: 石綿作業でのRS3・DS3義務に加えて、電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR:Powered Air Purifying Respirator)の使用も推奨・規定されているケースがあります。PAPRは電動ファンで空気をフィルターに通して送風するタイプであり、防じんマスクより快適で高い防護性能を得られる場合があります。
- ウ: D型(使い捨て型)のマスクを洗浄すると、フィルターの繊維構造が変形・損傷して捕集効率が大幅に低下します。また有害粉じんが付着したマスクを素手で扱う際の二次汚染リスクもあります。「もったいないから再使用」する実務習慣は危険であり、D型は1回使用後に適切に廃棄することが安全管理上の必要条件です。
- エ: マスク本体の劣化を確認する方法として「面体が顔に当たる部分のゴムが変形・ひび割れしていないか」「バルブが正常に開閉するか」「ストラップの弾力が維持されているか」の点検が重要です。古くなった(数年以上使用した)マスク本体は、外見上問題なく見えても密着性・機能性が低下していることがあるため、定期的な更新が必要です。
- オ: フィットチェック(シールチェック)は、作業者に正しい手順を習得させることで、毎回の着用時に自己確認できるスキルです。特に初回着用・着用方法の変更時には、安全衛生スタッフ・作業主任者等が立ち会って正しい着用方法とフィットチェック手順を指導することが推奨されます。
【根拠法令】安衛則第593条(呼吸用保護具の管理:労働者ごとに専用のもの・清潔保存・点検)、石綿障害予防規則(石綿作業でのDS3/RS3等の最高等級防じんマスク使用義務)、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号:捕集効率の等級・型式の区分)
【補足】石綿作業はDS3/RS3(捕集効率99.9%以上)が必要。D型(使い捨て)は洗浄・再使用不可(1回使用後廃棄)。マスク本体も劣化する(半永久的使用は不可)。フィットチェックは着用者本人が実施可能。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)、安衛則第593条(呼吸用保護具の管理)、石綿則・粉じん則(石綿作業での高性能防じんマスク使用義務)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。