衛生管理者 関係法令(有害業務) 問46:労働安全衛生法令(安衛法第55条・第56条・第57条)
労働安全衛生法における有害物の譲渡・提供制限に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア安衛法第55条が規定する製造等が禁止されている有害物(安衛令第16条第1項各号に列挙された物質)は、試験研究目的で製造する場合に厚生労働大臣の許可を受けた場合であっても、他の者への譲渡・提供は原則として禁止されている。
- イ安衛法第57条の規定に基づく表示義務(ラベル)の対象となる危険物または有害物を容器に入れて譲渡または提供する場合は、当該容器にラベルを貼付しなければならない。
- ウ安衛法第57条の2の規定に基づき、危険性または有害性が明らかな物質(GHS分類対象物)を他の事業者に対して譲渡または提供する場合は、安全データシート(SDS)を交付しなければならない。
- エ安衛令第16条第1項に掲げる製造禁止物質を無許可で製造・輸入した場合の罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金である。正答
- オ安衛法第57条に規定するラベル表示の義務は、不特定多数を対象とした市販製品にも適用されるが、一般消費者の生活の用に供される製品については表示義務が免除されている。
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誤りはエです。安衛法第55条違反(製造禁止物質の無許可製造・輸入等)の罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です(安衛法第116条)。「5年以下・500万円以下」という数値は誤りです。
安衛法の罰則体系は複数あり、試験では「いくつかの違反行為に対してどの条文の罰則が適用されるか」が問われます。製造禁止違反(3年以下・300万円以下)は比較的重い罰則ですが、刑法上の重大犯罪と比べると数値は異なります。
他の選択肢は全て正しい内容です。特にオのラベル表示義務が「一般消費者向け製品」には適用されない点(SDSとラベルは労働者保護のための制度)は重要な例外として覚えておく必要があります。
安衛法の有害物規制における主要な義務と罰則:
| 規制内容 | 根拠条文 | 違反時の罰則 |
|---|---|---|
| 製造禁止物質の無許可製造・輸入等 | 安衛法第55条・第116条 | 3年以下懲役または300万円以下罰金 |
| 第1類物質の無許可製造 | 安衛法第56条・第116条 | 同上(3年以下・300万円以下)|
| ラベル表示義務違反 | 安衛法第57条・第120条 | 50万円以下の罰金 |
| SDS交付義務違反 | 安衛法第57条の2・第120条 | 50万円以下の罰金 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 試験研究目的での製造許可(大臣許可)を受けた場合であっても、製造した禁止物質を他者に譲渡・提供することは禁止されています(安衛法第55条は製造・輸入・使用・譲渡・提供・貯蔵のすべてを禁止対象として規定しています)。
- イ(正): 安衛法第57条に基づき、ラベル表示義務の対象物質(安衛令別表第9掲載物質等)を容器に入れて譲渡・提供する際は容器へのラベル貼付が義務です。
- ウ(正): 安衛法第57条の2に基づき、GHS分類対象物質(通知対象物質)を他の事業者に譲渡・提供する際はSDSの交付が義務です(事前または同時交付)。
- エ(誤): 製造禁止物質の違反の罰則は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です(第116条)。「5年以下・500万円以下」という数値はいずれも誤りです。
- オ(正): 安衛法第57条のラベル表示義務は労働者保護を目的とした制度であり、「一般消費者の生活の用に供される製品」については表示義務が免除されています(安衛法第57条ただし書き)。これは化管法(PRTR法)・消費者庁の規制との管轄分担によるものです。
【理論的背景】
安衛法の有害物規制は「製造禁止→製造許可→ラベル表示・SDS交付」という3段階の規制の濃淡で構成されており、有害性の高さに応じた規制強度が設計されています。譲渡・提供制限は、有害物が適切な管理知識を持たない者の手に渡ることを防ぎ、サプライチェーン全体での化学物質管理を実現するための仕組みです。
安衛法の有害物規制体系の構造:
第55条(最強規制): 製造禁止物質の製造・輸入・使用・譲渡・提供・貯蔵を原則禁止
- 対象: 安衛令第16条第1項各号(黄りんマッチ・ベンジジン・石綿等)
- 罰則: 第116条(3年以下・300万円以下)
- 例外: 試験研究目的の大臣許可のみ(ただし譲渡・提供の許可は別途必要)
第56条(強規制): 第1類物質(安衛令別表第3第1号)の製造に大臣許可必要
- 罰則: 第116条(同上)
- 設備基準(密閉式)・作業主任者選任等の付随義務
第57条(中規制): 通知対象物(安衛令別表第9等)のラベル表示義務
- 罰則: 第120条(50万円以下の罰金)→製造禁止違反より軽い
第57条の2(中規制): 通知対象物のSDS(安全データシート)交付義務
- 罰則: 第120条(50万円以下の罰金)
【実務・条文構造】
ラベル表示(安衛法第57条)の必須記載事項:
1. 名称(物質名)
2. 人体への影響
3. 貯蔵または取扱い上の注意
4. 表示をする者の名称・住所・電話番号
5. 注意喚起語(「危険」「警告」等・GHS分類に基づく)
6. 危険性・有害性の情報(GHSハザードステートメント)
7. 安全対策(GHSプレコーションステートメント)
8. 絵表示(GHSピクトグラム)
SDS(安衛法第57条の2)の構成(GHS対応・16項目):
1. 化学品の名称および会社情報 / 2. 危険有害性の要約
3. 組成・成分情報 / 4. 応急措置 / 5. 火災時の措置
6. 漏出時の措置 / 7. 取扱いおよび保管上の注意
8. 暴露防止・保護措置 / 9. 物理的・化学的性質
10. 安定性・反応性 / 11. 有害性情報 / 12. 環境影響情報
13. 廃棄上の注意 / 14. 輸送上の注意 / 15. 適用法令 / 16. その他の情報
ラベルとSDSの適用除外(一般消費者向け製品):
- 安衛法第57条・第57条の2は労働者保護の観点から事業者間の取引に適用される
- 「一般消費者の生活の用に供するためのみに提供される製品」は適用除外
- 消費者向け製品は製品安全法・化管法・特定化学物質の環境への排出量の把握等に関する法律(PRTR法)・GHS対応JIS規格等の別の規制体系に服する
【試験での位置づけ】
罰則の数値(製造禁止違反=3年以下・300万円以下)は試験で数値の入れ替えが定番の引っかけです。「5年以下・500万円以下」という架空の数値や「1年以下・100万円以下」との混同が典型例です。また「ラベル・SDS義務は一般消費者向け製品には適用されない」という適用除外も毎回登場する重要な例外です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 製造禁止物質の試験研究許可(安衛法第55条ただし書き)は、許可された研究施設内での限定的な使用を認めるものです。他機関への譲渡・提供には別途の許可が必要であり、製造した物質が一般流通することは想定されていません。
- イ: ラベル表示・SDS通知の対象物質(安衛令別表第9+GHS分類で危険性・有害性が認められる物質)は、化学物質の自律的管理(令和4年改正)に伴い段階的に大幅拡大されており、2024年4月・2025年4月の追加で対象は数千物質規模に拡大しています(随時追加)。GHS分類のクラス・カテゴリーに基づいた絵表示(ピクトグラム)の掲示が義務化されています。
- ウ: SDSの交付は「譲渡・提供する際に同時に、またはあらかじめ交付」が原則です。電子メール・Webサイトでの交付も認められており(2022年改正で電子交付が明示的に認容)、実務では自社Webサイトへの掲載で対応している企業が増えています。
- エ: 安衛法の罰則体系では、第116条(第55条の製造禁止違反等:3年以下・300万円以下)が最重い水準であり、第120条(ラベル表示義務違反等:50万円以下)・第122条(法人重課)と体系化されています。製造禁止違反が最重に設定されているのは、当該物質の管理なき流通が労働者・一般市民の健康に直接的な重大被害をもたらすためです。
- オ: 家庭用洗剤・市販農薬・化粧品等の消費者向け製品がSDS・ラベル表示義務の適用外である理由は、「不特定多数の一般消費者は法令上の労働者ではなく、事業者間関係を前提とした安衛法の直接的な保護対象外」であるためです。ただし実務上は消費者向けにも類似情報(成分表示・取扱い注意事項)を提供する義務は別途存在します。
【根拠法令】労働安全衛生法第55条(製造等の禁止・譲渡提供も禁止対象)・第116条(第55条違反の罰則:3年以下懲役または300万円以下罰金)・第57条(ラベル表示義務・一般消費者製品は除外)・第57条の2(SDS交付義務)・第120条(ラベル表示義務違反等の罰則:50万円以下罰金)
【補足】製造禁止違反の罰則は「3年以下・300万円以下」(5年・500万円は誤り)。ラベル・SDS義務は一般消費者向け製品に不適用。試験研究許可があっても譲渡・提供禁止。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第55条(製造等の禁止)・第116条(第55条違反の罰則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金)・第57条(ラベル表示)・第57条の2(SDS交付)・第120条(ラベル表示義務違反等の罰則:50万円以下の罰金)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。