衛生管理者 関係法令(有害業務) 問47:労働安全衛生法令(安衛法第57条の2・安衛則第34条の2の4等)
安全データシート(SDS)の交付義務(安衛法第57条の2)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アSDS交付義務は、通知対象物(危険性または有害性が明らかな物質として政令で定めるもの)を他の事業者に譲渡または提供する場合に適用されるが、一般消費者への販売に対しても適用される。
- イSDSは、譲渡または提供するよりも前か、または同時に交付しなければならず、電子メールやインターネットによる提供は法令上認められていない。
- ウ複数の通知対象物が混合した製品(混合物)を譲渡または提供する場合は、各成分物質ごとに個別のSDSを作成・交付しなければならない。
- エSDSには、化学品の名称・危険有害性の要約・成分情報・応急措置・保管・廃棄・輸送上の注意等を記載しなければならず、16項目の記載事項が定められている。正答
- オ事業者はSDSを常時作業場の見やすい場所に掲示または備え付けることが義務付けられており、作業者がいつでも参照できる状態にしなければならない。
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正しいのはエです。SDSには「化学品の名称・危険有害性の要約・組成・応急措置・火災時の措置・漏出時の措置・取扱い・保管・暴露防止・物理化学的性質・安定性・有害性情報・環境影響・廃棄・輸送・適用法令・その他」の16項目の記載事項が定められています(安衛則第34条の2の6・GHS対応指針)。
各誤りの要点: ア→一般消費者への販売は適用除外(事業者間の取引にのみ適用)。イ→2022年改正により電子メール・インターネットでの電子交付が明示的に認められた。ウ→混合物のSDSは個別成分ごとではなく「混合物全体として1つのSDS」を作成・交付する。オ→SDSの「常時掲示・備え付け」義務は事業者が受け取ったSDSに対する義務(安衛則第34条の2の8)であり、設問の主語・対象がやや不正確です。
SDS(安全データシート)制度の概要:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 安衛法第57条の2 |
| 義務の主体 | 通知対象物を他の事業者に譲渡・提供する者 |
| 適用除外 | 一般消費者向け製品・非危険有害物 |
| 交付方法 | 書面・電子メール・Webサイト等(2022年改正で電子交付明示)|
| 交付タイミング | 譲渡・提供に先立って、または同時に |
| 記載事項 | 16項目(GHS対応) |
| 変更時 | 内容を変更した場合は速やかに通知(再交付または変更内容の通知)|
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): SDS交付義務は「事業者間」の取引に適用されます。一般消費者への販売には適用されません(安衛法第57条の2は「他の事業者に対して」と明記)。
- イ(誤): 2022年の安衛則改正(施行2023年4月)により、電子メール・インターネット(Web掲載等)による電子交付が安衛則第34条の2の4で明示的に認められました。改正前は書面交付が原則でしたが、電子交付のニーズに応える形で法令が整備されました。
- ウ(誤): 混合物全体として1つのSDSを作成・交付します。「各成分ごとに個別のSDS」という要件はありません。混合物のSDSには、主要成分物質(GHS分類に寄与する成分)の識別情報・含有率範囲・その物質の有害性情報を記載します。
- エ(正): 安衛則第34条の2の6およびGHS対応指針が定める16項目の記載事項の通りです。国際基準(GHSサブコミッティー文書)との整合性が確保されています。
- オ(誤): 事業者がSDSを受け取った場合に「作業者が閲覧できる状態に置く」義務はありますが(安衛則第34条の2の8)、「常時掲示・備え付け」の義務内容と「SDSを作成した者が掲示する」との混同があります。
【理論的背景】
SDS(Safety Data Sheet・安全データシート)は、化学物質の取扱い者が必要な安全・衛生情報を入手し、適切なリスク管理を実施するための情報文書です。GHS(化学品の分類と表示に関する世界調和システム)が国際標準化されたことで、世界共通の16項目フォーマットが採用されています。日本では安衛法第57条の2でSDS交付が義務化されており、化管法(PRTR法・第14条)とも連動しています。
SDSの歴史的背景:
- 従来は「MSDS(Material Safety Data Sheet・化学物質等安全データシート)」という名称で運用
- GHS日本版(JIS Z 7253)の改正(2012年・2019年)に伴い「SDS」に名称統一
- 2022年安衛法改正でSDS交付義務の対象物質が拡大(化学物質の自律的管理への移行)
【実務・条文構造】
SDSの16項目(GHS対応・安衛則第34条の2の6):
1. 化学品の名称・供給者情報・緊急連絡先
2. 危険有害性の要約(GHS分類・絵表示・シグナルワード・ハザードステートメント)
3. 組成・成分情報(CAS番号・含有率範囲)
4. 応急措置(吸入・皮膚接触・眼接触・誤飲時)
5. 火災時の措置(消火剤・特有の危険性)
6. 漏出時の措置(個人・環境への対策)
7. 取扱いおよび保管(換気・禁止事項・保管条件)
8. 暴露防止・保護措置(管理濃度・保護具仕様)
9. 物理的・化学的性質(外観・沸点・蒸気圧・引火点等)
10. 安定性・反応性(避けるべき条件・危険有害な反応物)
11. 有害性情報(急性毒性・発がん性・生殖毒性等・GHS分類根拠)
12. 環境影響情報(水生毒性・分解性・生物蓄積性)
13. 廃棄上の注意(廃棄方法・容器廃棄)
14. 輸送上の注意(UN番号・危険品輸送クラス)
15. 適用法令(安衛法・毒劇法・消防法・化管法等の該当条項)
16. その他の情報(参考文献・改訂日・改訂番号)
電子交付の法的位置づけ(2022年改正後):
- 安衛則第34条の2の4: 電子メール・Webサイト・記録媒体等による交付を明示的に認容
- ただし「相手方が電子的方法で受け取れる環境にあること」が前提
- 紙でのSDS交付要求にも応じる義務(相手方の希望に応じる)
SDSを受領した事業者の義務(安衛則第34条の2の8):
- 受領したSDSを作業場の見やすい箇所に掲示または備え付ける(労働者がアクセスできる状態)
- SDSの内容変更時: 変更通知を受けた場合は速やかに作業者に周知
【試験での位置づけ】
SDS交付の問題では「一般消費者向け製品は適用外(事業者間の取引のみ)」「電子交付が2022年改正で明示的に認められた」「混合物は1つのSDSを作成(個別成分ごとではない)」の3点が頻出です。また「16項目の記載事項」は数字として覚えておく必要があります。SDS交付義務違反の罰則(第120条・50万円以下の罰金)も問われる場合があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: SDS交付義務が「事業者間」に限定されている理由は、一般消費者は化学物質管理の専門知識を持つことが想定されていないため、消費者向けには別の表示規制(家庭用品品質表示法・毒劇法の表示等)が適用されるためです。事業者(受領者)は受け取ったSDSを自社の作業員教育・保護具選定・緊急時対応計画に活用します。
- イ: 電子交付の解禁(2022年改正)は、SDSが大量の物質(数百〜数千種類)にわたる化学品メーカーにとって大きな業務効率化になりました。電子交付では版管理・更新通知が容易になり、「古いバージョンのSDSが流通する」リスクも低下します。
- ウ: 混合物のSDSでは、混合物全体のGHS分類結果と、GHS分類に寄与する成分物質(危険有害性情報と含有率範囲)を記載します。ただし企業秘密に相当する成分については、代替名の使用や含有率範囲の開示が認められる場合があります(安衛則第34条の2の6の2)。
- エ: 16項目はGHSの国際基準(紫表紙文書)に準拠したものです。日本のSDSはJIS Z 7253(GHSに基づく化学品の危険有害性の情報伝達)との整合が求められており、EUのREACH規則(EU規則)・米国のHazCom 2012(OSHA規則)と基本的に共通の構造です。
- オ: 受領SDSの掲示・備え付け義務は、作業場で実際に化学物質を取り扱う労働者が必要な情報にアクセスできる環境を確保するためです。例えば有機溶剤を使用する塗装ブースにSDSを掲示することで、作業者が曝露した場合の応急措置・保護具の必要性等を即座に確認できます。
【根拠法令】労働安全衛生法第57条の2(SDS交付義務・事業者間取引に適用・一般消費者は除外)、労働安全衛生規則第34条の2の4(電子交付の認容・2022年改正)・第34条の2の6(16項目の記載事項)・第34条の2の8(受領事業者の掲示義務)
【補足】SDS交付は「事業者間のみ」(一般消費者不適用)。電子交付(メール・Web)は2022年改正で明認。混合物は1SDS。記載事項は16項目。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第57条の2(SDS交付義務)、労働安全衛生規則第34条の2の4(SDSの交付方法・電子交付認容・2022年改正)・第34条の2の6(SDSの記載事項)、化学物質等の危険性または有害性等の表示または通知等の促進に関する指針(GHS対応指針)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。