衛生管理者 関係法令(有害業務) 問48:労働安全衛生法令(安衛法第57条・安衛令別表第9・安衛則第33条)
労働安全衛生法第57条が規定する危険物または有害物の容器・包装へのラベル表示に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アラベル表示義務の対象となる物質は、爆発性・引火性・可燃性等の危険性または急性毒性・発がん性等の有害性が認められる物質として安衛令別表第9に掲げられた物質に限定されている。正答
- イラベルには、①名称、②人体への影響、③貯蔵または取扱い上の注意、④表示者の名称・住所・電話番号を必ず記載しなければならない。
- ウラベル表示義務は容器または包装に貼付して譲渡または提供する場合に適用されるが、容器の大きさが著しく小さい場合には表示を省略してもよい。
- エ一般消費者の生活の用に供するためのみに提供される製品を製造・輸入する事業者は、当該製品に係るラベル表示義務が免除される。
- オ事業者が安衛令別表第9の物質を使用する作業の労働者に対し、当該物質の危険有害性や取扱い方法を周知する義務は、ラベル表示制度とは別に安衛法第59条の教育義務としても存在する。
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誤りはアです。ラベル表示義務の対象物質は、安衛令別表第9に掲げられた物質だけではなく、それらを含む混合物(一定割合以上含有する混合物)も対象となります。「別表第9の物質に限定されている」という記述が誤りで、混合物も対象に含まれます。
正しい内容: イ→ラベルの必須4項目(名称・人体への影響・取扱い注意・表示者情報)は正確な記述。ウ→著しく小さい容器の場合はラベルを省略した上でSDSで補完するなどの例外規定がある。エ→一般消費者向け製品はラベル義務が免除される(安衛法第57条ただし書き)。オ→ラベル表示とは別に、安衛法第59条の教育義務も並列して存在する。
安衛法第57条のラベル表示義務の対象範囲:
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 単一物質 | 安衛令別表第9に掲げられた物質(GHS分類で危険・有害が確認された特定物質) |
| 混合物 | 別表第9の物質を一定割合以上含有する混合物も含む(←Aの誤りポイント)|
| 適用除外 | 一般消費者向け製品・タンクローリー等(容器が著しく大きい場合の代替措置) |
ラベルの必須記載事項(安衛法第57条第1項各号):
1. 名称(製品名・主成分名称)
2. 人体への影響(急性毒性・皮膚刺激性・発がん性等のハザードステートメント)
3. 貯蔵または取扱い上の注意(プレコーションステートメント)
4. 表示をする者の名称・住所・電話番号
※GHS対応として: 注意喚起語(「危険」「警告」)・絵表示(ピクトグラム)も実務上必須
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): ラベル表示義務は安衛令別表第9掲載物質の単一物質だけでなく、これらを含有する混合物(成分として一定割合以上含む製品)にも適用されます。「別表第9の物質に限定されている」は誤りです。
- イ(正): 安衛法第57条第1項が規定する4必須記載事項(名称・人体への影響・貯蔵取扱い注意・表示者情報)の通りです。
- ウ(正): 著しく小さい容器についての省略・代替措置は安衛則第33条で規定されています。省略した場合は別途情報提供義務が生じます。
- エ(正): 安衛法第57条ただし書きにより、一般消費者の生活の用に供するためのみに提供される製品はラベル表示義務の対象外です(SSDも同様)。
- オ(正): 安衛法第59条(雇入れ時・配置転換時の教育義務)はラベル・SDS制度とは別の義務として並列して存在します。危険有害物を取り扱う業務への就業者には、物質の危険有害性・取扱い方法・保護具の使用等の教育が義務付けられています。
【理論的背景】
安衛法第57条のラベル表示制度は、化学物質が「容器または包装に入れられた状態で事業者間を流通する」際に、その危険性・有害性を受け取る側の事業者・労働者に確実に伝えるための一次情報手段です。GHS(国連「化学品の分類と表示に関する世界調和システム」)の採用により、絵表示(ピクトグラム)・シグナルワード(危険/警告)・ハザードステートメント・プレコーションステートメントの統一フォーマットが導入され、国際的に共通の危険有害性情報の伝達が可能になりました。
ラベル制度の対象範囲の変遷:
- 1970年代以降: 特定の危険物・有害物に限定した表示義務(数十〜数百物質程度)
- 2012年前後: GHS対応でラベル対象物質を大幅拡大(安衛令別表第9の改正)
- 2022年安衛法改正: 化学物質の自律的管理体制への移行に伴い、さらに対象物質を拡大
- 2024年以降: 事業者による危険有害性の自主分類義務(GHS分類が未実施の物質について)
【実務・条文構造】
安衛法第57条のラベル記載事項(詳細):
法定4項目(安衛法第57条第1項):
1. 名称
2. 人体への影響
3. 貯蔵または取扱い上の注意
4. 表示者の名称・住所・電話番号
GHS対応追加項目(厚生労働省告示・実務上必須):
5. 注意喚起語(危険 / 警告)
6. 危険有害性情報(ハザードステートメント: 各GHSクラスの危険有害性の記述)
7. 注意書き(プレコーションステートメント: 予防・対応・保管・廃棄の措置)
8. 絵表示(ピクトグラム: 9種類のGHS絵表示から該当するもの)
9. 製品識別情報(CAS番号・一般名等)
ラベル表示の代替・省略規定:
- 著しく小さい容器(安衛則第33条): 名称と表示者情報のみの簡略ラベルが認められる場合(残りの情報はSDSや別紙で補完)
- タンクローリー・大型コンテナ: 荷札・伝票等での代替が認められる場合あり
- 適用除外: 一般消費者向け製品・港湾荷役における通過貨物等
混合物のラベル作成基準:
- 成分物質のGHS分類に基づき、混合物全体のGHS分類を実施
- 含有成分の有害性情報(CAS番号・含有率範囲)をラベルまたはSDSに記載
- 企業秘密成分: 代替名の使用可(ただし「GHS分類に寄与する場合は開示が必要」という条件あり)
【試験での位置づけ】
ラベル表示の問題では「混合物もラベル義務の対象(別表第9物質の単一物に限られない)」「一般消費者向け製品は適用除外」「4つの法定必須記載事項の内容」が頻出です。また「ラベルとSDSは別制度(ラベルは容器・SDSは書類)」「ラベル義務違反は第120条(50万円以下の罰金)・製造禁止違反より軽い」という体系的な知識も問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 混合物へのラベル義務拡大の背景には、実際の作業現場では単一物質よりも多成分混合物(塗料・洗浄剤・切削油等)の取扱いが圧倒的に多く、混合物の危険有害性情報の伝達なしには労働者保護が不完全であるという実態があります。混合物のGHS分類は、成分物質の危険有害性データと含有率から算出する計算式(急性毒性の場合は加成性計算等)によって行います。
- イ: GHS対応後は「人体への影響」の記載がGHSハザードステートメント(例: 「吸入すると有害である」「皮膚に対して腐食性がある」等の定型文)として統一化されており、従来の自由記述形式より情報の正確性・国際比較可能性が向上しました。
- ウ: 著しく小さい容器(試験管・1ml未満の小バイアル等)への全項目ラベル貼付が困難な場合の省略規定は、化学実験・研究用試薬の流通に特に関係します。省略した場合でも、受け取る側(研究者・実験者)はSDSにより必要な情報を得ることができます。
- エ: 「一般消費者の生活の用に供するためのみ」という適用除外の条件は、同一製品が事業者・消費者の双方に販売される場合には適用されないという解釈が重要です。例えば業務用と家庭用の両方で販売される洗浄剤は、業務用途(事業者間取引)部分にはラベル義務が適用されます。
- オ: 安衛法第59条の教育義務(特に特別教育)はラベル・SDS制度とは独立した義務ですが、実務では「SDSの内容を教育に活用する→ラベルを見て適切な行動をとる」という連携が期待されています。化学物質の自律的管理(2022年改正)では、この教育義務をより具体的・定期的に実施することが求められています。
【根拠法令】労働安全衛生法第57条第1項(ラベル必須4項目・混合物も対象)・同条ただし書き(一般消費者向け製品の適用除外)、労働安全衛生規則第33条(著しく小さい容器の特例)、安衛令別表第9(表示義務対象物質)
【補足】ラベル義務は「別表第9物質を含む混合物も対象」(単一物質のみではない)。一般消費者向け製品は適用除外。必須4項目は名称・人体影響・取扱い注意・表示者情報。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第57条(ラベル表示義務)・安衛令別表第9(表示義務の対象物質)、安衛法第57条ただし書き(一般消費者向け製品の免除)、安衛則第33条(著しく小さい容器の場合の取扱い)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。