衛生管理者 労働生理 問20:消化吸収・代謝
三大栄養素の代謝に関する記述として、**正しいものを1つ**選べ。
- ア糖質は消化管でグリセロールと脂肪酸に分解・吸収された後、肝臓でグリコーゲンとして合成・貯蔵される。
- イ脂質は1グラムあたり約4kcalのエネルギーを産生し、糖質とほぼ同等のエネルギー効率を持つ。
- ウタンパク質は消化管でアミノ酸に分解・吸収され、体タンパク質の合成や必要に応じてエネルギー源として利用される。正答
- エ余剰の糖質はすべてグリコーゲンとして肝臓・筋肉に貯蔵され、体脂肪への変換は起こらない。
- オ安静時のエネルギー代謝は、主として脂質よりも糖質(グルコース)の酸化に依存している。
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タンパク質は胃・小腸でプロテアーゼにより分解されてアミノ酸として吸収され、体内では筋肉・酵素・ホルモン等の体タンパク質合成や、余剰時にはエネルギー源として利用されます(選択肢ウ:正しい)。アは「糖質がグリセロールと脂肪酸に分解」としており誤り(糖質はグルコースに分解される)。イは脂質1gは約9kcalで糖質の約2倍のエネルギーを持つ。エは余剰糖質が体脂肪に変換されることはあります(中性脂肪合成)。オは安静時も糖質より脂肪酸の酸化が主体です。
三大栄養素の代謝の基本を確認します。糖質(炭水化物)は消化管でグルコースなどの単糖に分解され小腸で吸収されます(アはグリセロール・脂肪酸という脂質の分解産物を「糖質の分解産物」としており誤り)。脂質は胆汁酸と膵リパーゼによりグリセロールと脂肪酸に分解されリンパ管経由で吸収されます。脂質のエネルギーは1gあたり約9kcal(タンパク質・糖質の約4kcalに対して約2倍)であり、イの「糖質とほぼ同等」は誤りです。余剰の糖質はグリコーゲン合成の限界(肝臓約100g・筋肉約250g)を超えると、アセチルCoAを経由して体脂肪(中性脂肪)に変換・蓄積されます(エ:誤り)。安静時のエネルギー代謝は脂肪酸のβ酸化が主体であり、特に長時間の安静・空腹状態では脂肪酸の割合が高まります(オ:誤り)。タンパク質がアミノ酸として吸収・利用されるとするウが正解です。
#### 1. 糖質代謝の経路とグリコーゲンの役割
糖質はデンプン・グリコーゲンなど多糖として摂取されます。唾液・膵液のアミラーゼが多糖を分解し、小腸表面の二糖類分解酵素(マルターゼ・スクラーゼ・ラクターゼ)が単糖(グルコース・フルクトース・ガラクトース)まで分解します。吸収されたグルコースは門脈を経て肝臓に達し、インスリンの作用下でグリコーゲンとして貯蔵(肝臓)または解糖系・TCA回路でATP産生に利用されます。筋肉は自己のグリコーゲンを分解して筋収縮エネルギーを得ますが、血糖の直接調節には関与しません(グルコース-6-ホスファターゼを持たないため血中に放出できない)。肝臓のグリコーゲン量(約100g)は空腹時12〜16時間で枯渇します。余剰グルコースはアセチルCoA→脂肪酸合成経路で中性脂肪(トリアシルグリセロール)に変換され脂肪組織に蓄積されます(エが誤りである理由)。
#### 2. 脂質代謝とエネルギー産生効率
脂質は膵リパーゼにより脂肪酸とグリセロールに加水分解され、ミセルを形成して小腸絨毛から吸収されます。長鎖脂肪酸はカイロミクロン(リポタンパク)として胸管リンパを経由して血中に入り、短鎖・中鎖脂肪酸は門脈経由です。脂肪酸はミトコンドリア内でβ酸化によりアセチルCoAに変換され、TCA回路・電子伝達系でATPを産生します。脂質は1gあたり9kcal(糖質・タンパク質は4kcal)の高エネルギー物質であり、同じ重量で2倍以上のエネルギーを供給します。安静時の基礎代謝や低強度の活動では、脂肪酸の酸化が主要エネルギー源となります(オが誤りである理由)。高強度運動(無酸素系)ではグルコースの解糖系に依存する割合が高まります。
#### 3. タンパク質代謝と窒素平衡
タンパク質は胃のペプシン・膵臓のトリプシン・キモトリプシン・エラスターゼ・カルボキシペプチダーゼ、さらに小腸の膜消化酵素によってアミノ酸まで分解され、小腸絨毛から吸収されます(ウ:正しい記述)。吸収されたアミノ酸は肝臓・末梢組織でタンパク質合成、酵素・ホルモン・免疫グロブリンの材料として利用されます。余剰アミノ酸は脱アミノ反応を受け、炭素骨格はアセチルCoAや有機酸としてTCA回路に入ってエネルギーを産生し、窒素は尿素回路(肝臓)で尿素に変換されて腎臓から排泄されます。窒素摂取量と排泄量が等しい状態を「窒素平衡」、摂取 > 排泄が「正の窒素平衡」(成長期・筋肉増強期)、排泄 > 摂取が「負の窒素平衡」(飢餓・消耗性疾患)です。
#### 4. 衛生管理者試験の頻出ポイントと職場の栄養管理
試験では「糖質はグルコースに分解(グリセロール・脂肪酸は脂質の分解産物)」「脂質1g≒9kcal(糖質・タンパク質は4kcal)」「余剰糖質は体脂肪に変換される」「安静時は脂肪酸酸化が主体」「タンパク質→アミノ酸として吸収→体タンパク合成またはエネルギー源」が繰り返し出題されます。職場の健康管理の観点では、産業栄養士・管理栄養士と連携した食堂メニューの改善、特定保健指導・健診後の栄養指導、肥満・脂質異常症・糖尿病のリスク管理が衛生管理者の実務と直結しています。労働安全衛生法に基づく特定健康診査との連携も重要です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 確立した生化学・栄養学的事実(三大栄養素の消化・吸収・代謝経路)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。