労働生理43感覚器

衛生管理者 労働生理 問43:感覚器

皮膚感覚および平衡感覚に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 皮膚の触覚・圧覚・温度感覚・痛覚はすべて同一の受容器(マイスナー小体)によって受容される。
  • 皮膚の痛覚(侵害受容)は皮膚が最も鈍く、内臓は痛覚に最も敏感であるため、関連痛(放散痛)は生じない。
  • 平衡感覚は内耳の前庭(卵形嚢・球形嚢)と三半規管によって担われ、卵形嚢・球形嚢は静的平衡(直線加速度・重力)を、三半規管は動的平衡(回転加速度)を感知する。正答
  • 振動感覚は皮膚の最表面(表皮)にある受容器のみが担い、深部組織の感覚(筋・腱・関節の位置感覚:固有感覚)とは完全に独立した系統によって処理される。
  • 内耳の有毛細胞は、蝸牛(聴覚)・前庭・三半規管(平衡)すべてに分布するが、蝸牛の有毛細胞は騒音による損傷を受けても完全に再生する。
正答:平衡感覚は内耳の前庭(卵形嚢・球形嚢)と三半規管によって担われ、卵形嚢・球形嚢は静的平衡(直線加速度・重力)を、三半規管は動的平衡(回転加速度)を感知する。

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正しいのはウです。内耳の前庭(卵形嚢・球形嚢)は静的平衡(重力・直線的な加速度)を、三半規管は動的平衡(回転運動・角加速度)を感知します。三半規管は互いに直交する3つの管から成り、3次元の回転を感知します。

各誤りの要点: ア→皮膚感覚の受容器は種類ごとに異なる(マイスナー小体だけではない)。イ→皮膚に痛覚受容器は豊富にあり(内臓より鋭い)、関連痛(放散痛)は存在する。エ→振動感覚と固有感覚は独立ではなく共通の経路(後索-内側毛帯路)を使う。オ→蝸牛の有毛細胞は損傷を受けると再生しない(不可逆性)。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 皮膚の感覚受容器は感覚の種類によって異なります。触覚・軽い接触: マイスナー小体(真皮乳頭部)・メルケル盤(表皮基底部)。圧覚・振動: パチーニ小体(真皮・皮下組織の深部)。温覚: ルフィニ終末。冷覚: クラウゼ終末。痛覚: 自由神経終末(最も広く分布)。「すべてマイスナー小体」は誤りです。
  • イ(誤): 皮膚には多数の侵害受容器(自由神経終末)があり、痛覚は比較的鋭いです。内臓の侵害受容は特殊で、痛みが皮膚や筋肉に「放散」して感じられる関連痛(referred pain)が生じます。例: 心筋梗塞→左肩・左腕・顎の痛み、胆嚢炎→右肩の痛み、虫垂炎→臍周囲→右下腹部への移動。
  • ウ(正): 前庭系: ①卵形嚢(utricle)・球形嚢(saccule): 耳石(炭酸カルシウム結晶)と有毛細胞からなるマキュラ(斑)が重力・直線加速度を感知→静的平衡。②三半規管(前・後・外側の3管): 内リンパ液の慣性による流れが有毛細胞(クプラ)を刺激→回転加速度を感知→動的平衡。前庭神経(第Ⅷ脳神経の前庭部)→脳幹・小脳→眼球運動(前庭眼反射)・姿勢調節。
  • エ(誤): 振動感覚(パチーニ小体が主役)と固有感覚(筋紡錘・腱紡錘・関節受容器)はともに「深部感覚」として後索-内側毛帯路を通ります(表在感覚の温痛覚は前外側路)。両者は同じ脊髄路を使うため、後索損傷(脊髄癆・ビタミンB₁₂欠乏性脊髄症等)で振動覚・位置覚がともに障害されます。
  • オ(誤): 哺乳類の蝸牛有毛細胞は一度損傷を受けると再生できない(不可逆的)。騒音性難聴・耳毒性薬物(アミノグリコシド系抗生物質・シスプラチン等)・加齢性難聴がすべて不可逆性である理由です。鳥類・両生類は有毛細胞が再生できるため難聴が回復しますが、哺乳類(ヒト含む)は再生できません(再生医療研究が進行中)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

感覚系は「外界の情報を電気信号(活動電位)に変換する受容器→末梢神経→脊髄・脳幹→大脳皮質感覚野」という経路を持ちます。感覚の種類ごとに受容器・神経線維・脊髄路・脳の処理部位が異なります。

皮膚感覚受容器の完全比較:

| 受容器 | 位置 | 感覚 | 特徴 |

|---|---|---|---|

| マイスナー小体 | 真皮乳頭(表面近く) | 軽い接触・識別触覚 | 手掌・口唇に多い(速適応) |

| メルケル盤 | 表皮基底部 | 圧・細かい質感 | 遅適応(持続的刺激に反応) |

| パチーニ小体 | 真皮深部・皮下組織 | 振動・圧 | 最も深く・速適応(高周波振動に敏感) |

| ルフィニ終末 | 真皮深部 | 温覚・皮膚伸展 | 遅適応 |

| クラウゼ終末 | 真皮 | 冷覚 | 主に低温(10〜40℃で逆説的温覚) |

| 自由神経終末 | 表皮・真皮全層 | 痛覚・温度感覚 | 最も分布が広い |

感覚神経線維の分類と伝導速度(関連):

  • Aβ線維(有髄・太い): 触覚・圧覚・振動覚→速い(30〜70m/s)
  • Aδ線維(有髄・細い): 鋭い一次痛(刺すような痛み)・冷覚→中程度(5〜30m/s)
  • C線維(無髄): 鈍い二次痛(じんじん・うずき)・温覚→遅い(0.5〜2m/s)

脊髄の感覚上行路:

  • 後索-内側毛帯路: 識別触覚・圧覚・振動覚・固有感覚(深部感覚)→同側を上行→延髄で交叉→視床→大脳感覚野
  • 前外側路(脊髄視床路): 痛覚・温度覚→脊髄で即座に交叉→反対側を上行→視床→大脳

【実務・条文構造】

皮膚感覚・平衡感覚と職業の安全:

振動工具使用と振動病(白蠟病):

  • チェーンソー・削岩機・手持ち振動工具の使用→手腕の振動(周波数8〜1000Hz)への長期曝露→末梢血管障害・神経障害・骨・関節障害
  • 白蠟病(レイノー現象): 振動刺激→血管収縮→指が白くなる(冬季・寒冷時に増悪)
  • 振動覚・触覚の低下(パチーニ小体・マイスナー小体の障害)→精密作業への支障

平衡感覚障害と高所作業:

  • 前庭機能障害(メニエール病・薬剤性前庭障害)→めまい・バランス障害→高所作業禁止の適応
  • 加齢による前庭機能低下→転倒リスク上昇(高齢労働者の安全管理)

動揺病(乗り物酔い)の機序:

  • 視覚情報(目に見える環境)と前庭情報(実際の運動感覚)の不一致→自律神経症状(悪心・嘔吐)
  • 乗り物の運転手は「自分で動かしている」ため酔いにくい(前庭+視覚+固有感覚の一致)

騒音と振動の複合曝露:

  • 振動工具使用者は騒音にも曝露されることが多い(コンプレッサー・削岩機等)
  • 振動病と騒音性難聴の合併リスクが高い

【試験での位置づけ】

皮膚感覚・平衡感覚の問題では「皮膚感覚受容器は感覚の種類ごとに異なる(すべてマイスナー小体は誤り)」「前庭(卵形嚢・球形嚢)=静的平衡(重力・直線加速度)・三半規管=動的平衡(回転)」「内耳有毛細胞(蝸牛)は再生不可(不可逆性の難聴)」「振動覚・固有感覚は後索-内側毛帯路で共通」「関連痛(放散痛)は存在する(内臓痛が皮膚の痛みとして感じられる)」が頻出です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 皮膚感覚受容器の二点識別閾(two-point discrimination threshold)は指先で最も低く(2〜3mm)、背中で最も高い(40〜70mm)。受容器の密度が異なるためで、指先にはマイスナー小体・メルケル盤が高密度に存在します。この概念は点字読取の訓練・精密触覚を使う職種(金属板目視検査者等)の適性評価に関連します。
  • イ: 関連痛の臨床的重要性: 心筋梗塞の「左肩・左腕の痛み」は消防士・産業救急担当者が知るべき重要な知識です。「肩が痛いだけ」と思っていた労働者が心筋梗塞だった、という事例が産業救急現場で生じます。関連痛の機序はデルマトームと内臓の感覚神経が同一の脊髄後角ニューロンに収束するため(収束-投射理論)。
  • ウ: 前庭眼反射(VOR: vestibulo-ocular reflex)は三半規管が回転を感知し、頭の動きを補償するように眼球を反対方向に動かす反射(頭が右に動くと目が左に動く)です。この反射で頭が動いても視野が安定します。VORが障害されると(前庭炎・小脳病変等)歩行中の視力低下・めまい・転倒が生じます。
  • オ: 蝸牛有毛細胞の再生研究は進行中で、アトーを(atoh1)等の転写因子による支持細胞からの有毛細胞の再生誘導、幹細胞療法、遺伝子治療が動物実験レベルで成果を示しています。また人工内耳(cochlear implant)は機能を失った有毛細胞の代わりに蝸牛神経に直接電気刺激を与える人工装置で、重度感音性難聴者の聴力回復(会話可能レベル)を可能にしています。

【根拠】医学的事実(確立した生理学・耳鼻咽喉科学)。前庭・三半規管の静的/動的平衡の分担・皮膚感覚受容器の種類・蝸牛有毛細胞の再生不可は確立した知識。

【補足】前庭(卵形嚢・球形嚢)=静的平衡(重力・直線加速度)。三半規管=動的平衡(回転加速度)。皮膚感覚受容器は種類ごとに異なる。蝸牛有毛細胞は再生不可(不可逆性難聴)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学・耳鼻咽喉科学)。前庭(卵形嚢・球形嚢)が静的平衡、三半規管が動的平衡を担うことは確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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