行政法11取消訴訟・執行停止・内閣総理大臣の異議

行政書士 行政法 問11:取消訴訟・執行停止・内閣総理大臣の異議

取消訴訟における執行停止に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 取消訴訟において、処分の効力を停止するためには、処分があった時点で自動的に処分の効力が停止されるため、特段の申立ては不要である。
  • 執行停止の申立てが認められるためには、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」という要件を充たすことが必要であり、また本案について理由がないとみえるときは認められない。正答
  • 内閣総理大臣の異議は、執行停止の決定がなされた後に出されると、当該決定は効力を失うが、裁判所は内閣総理大臣の異議に拘束されることなく、改めて執行停止の決定をすることができる。
  • 本案訴訟(取消訴訟)が裁判所に係属していない段階でも、執行停止の申立てを行うことができる。
  • 内閣総理大臣の異議を述べるには、内閣の承認が必要であり、内閣総理大臣単独では異議を述べることができない。
正答:執行停止の申立てが認められるためには、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」という要件を充たすことが必要であり、また本案について理由がないとみえるときは認められない。

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取消訴訟の執行停止について整理します。基本原則は「執行不停止原則」(訴訟提起しても処分の効力は自動停止しない)です(アが「自動的に停止」としており誤り)。例外として申立てによって執行停止を認めることができます(25条2項)。執行停止の要件:「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」こと+「本案について理由がないとみえるとき」は不可(イが正しい)。内閣総理大臣の異議(27条):内閣総理大臣が異議を述べれば執行停止の決定・申立て却下、異議後の再申立ても認められないとされており、ウは「改めて決定できる」とする点で誤りです。

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行訴法25条の執行停止の要件を正確に整理します。執行不停止原則(25条1項): 処分の取消訴訟の提起は、処分の効力・執行・手続の続行を停止しない(原則)。執行停止(25条2項): 申立てにより、重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、裁判所は処分の効力・執行・手続の続行の全部・一部の停止ができる。ただし次の2つは認められない:①本案について理由がないとみえるとき(イ後段が正しい)、②公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき。内閣総理大臣の異議(27条): 内閣総理大臣が裁判所に異議を述べると、執行停止の決定は取り消さなければならず(または申立てを却下しなければならない)、その後の同一事件での執行停止は認められない。内閣総理大臣は内閣に報告すれば単独で異議を述べることができます(オは「内閣の承認が必要」としており誤りで、「内閣に報告すれば足りる」)。ウは「改めて決定できる」としており誤りです。

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【理論的背景】

執行不停止原則の根拠は、行政行為の公定力と行政の実効性確保にあります。仮に取消訴訟提起だけで効力が停止されるとすれば、行政の相手方が取消訴訟を提起するだけで処分の効力を無力化できてしまい、行政目的の実現が困難になります。一方で、執行停止なしでは不可逆的な損害(取り消しても元に戻らない状態)が生じる場合もあるため、裁判所の判断による執行停止制度が設けられています。内閣総理大臣の異議制度は、行政と司法のバランスを内閣側に引き寄せる制度であり、権力分立上の論点として重要です。

【実務・条文構造】

行訴法25条・27条の要件詳細:

25条2項(執行停止の要件):

  • 要件1(積極要件):重大な損害を避けるため緊急の必要があること
  • 要件2(消極要件):①本案について理由がないとみえるとき、②公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ、のいずれかがある場合は認められない

25条3項は「重大な損害」の判断において、損害の回復の困難の程度を考慮し、処分の内容・性質、損害の性質・程度、処分の原因・状況等の事情を勘案するとしています(「重大な損害」要件の具体化)。

27条(内閣総理大臣の異議):

  • 内閣総理大臣が「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」場合に内閣に報告した上で異議を述べることができる(内閣の「承認」は不要・「報告」で足りる)
  • 異議の提出により執行停止決定は取り消さなければならない
  • 異議が提出された場合、その後の同一事件での執行停止は認められない(再申立て不可)
  • 制度の合憲性については議論があるが、最高裁は合憲としている

【試験での位置づけ】

本論点の典型的な引っかけは「訴訟提起で自動的に停止(×)」「内閣総理大臣の異議には内閣の承認が必要(×・報告で足りる)」「内閣総理大臣の異議後も改めて執行停止できる(×)」「本案について理由がなくても執行停止が認められる(×)」の4パターンです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。執行不停止原則(25条1項)。訴訟提起では自動停止しない。申立てが必要。
  • イ: 正しい。25条2項の要件(重大な損害を避けるための緊急必要性)と消極要件(本案理由がないとみえるとき不可)を正確に表現。
  • ウ: 誤り。内閣総理大臣の異議後は執行停止決定は取り消され、同一事件での再申立て・再決定は認められない(27条)。
  • エ: 誤り。執行停止は本案訴訟(取消訴訟)が係属中に申し立てるものであり、訴訟係属が前提となる。
  • オ: 誤り。内閣総理大臣は内閣に「報告」すれば足りる(承認は不要)。この点は行政書士試験での典型的な引っかけ。

【根拠条文】

行政事件訴訟法 第25条(執行不停止原則・執行停止の要件)、第27条(内閣総理大臣の異議)

【補足】

「内閣総理大臣の異議は内閣への報告で足りる(承認不要)」「異議後は再申立て不可」という2点は頻出。執行不停止原則が大前提であることも忘れずに。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政事件訴訟法 第25条(執行停止・執行不停止原則と例外)、第27条(内閣総理大臣の異議) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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