行政法116代執行の手続・戒告・代執行令書・費用の徴収

行政書士 行政法 問116:代執行の手続・戒告・代執行令書・費用の徴収

次の記述のうち、行政代執行法の規定に関して**正しいもの**はどれか。

  • 代執行を行う場合には、相当の履行期限を定め、その期限内に義務が履行されないときは代執行をなすべき旨を、あらかじめ文書で義務者に通知しなければならない(戒告)。正答
  • 戒告の後、義務者が期限内に義務を履行しない場合、代執行庁は直ちに代執行を実施することができ、代執行令書による通知を行う必要はない。
  • 行政代執行法は、代執行の実施に際して、執行責任者は必要に応じて身分証明書を携帯・提示することができる旨を規定しているが、提示は義務ではない。
  • 代執行に要した費用については、実際に要した費用の額および納付期日を定めた文書を義務者に交付して納付を命じるが、これに従わない場合は訴訟(民事執行)により徴収しなければならない。
  • 非常の場合または危険切迫の場合においては、戒告の手続を省略し、代執行令書の通知も省略して、直ちに代執行を実施することができる。
正答:代執行を行う場合には、相当の履行期限を定め、その期限内に義務が履行されないときは代執行をなすべき旨を、あらかじめ文書で義務者に通知しなければならない(戒告)。

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アが正しいです。行政代執行法3条1項は、代執行を行う場合には「相当の履行期限を定め、その期限内に義務が履行されないときは代執行をなすべき旨を、あらかじめ文書で義務者に戒告しなければならない」と規定しています。イは「代執行令書の通知が不要」としており誤りです。戒告の後は、さらに代執行令書(代執行すべき行為・費用の概算額等を記載)で義務者に通知しなければなりません。ウは「提示は義務ではない」としており誤りです(行代法4条は常に身分証明書を携帯し、提示を求められたときは提示する義務を規定)。エは「民事執行による」としており誤りです(国税滞納処分の例)。オは3条3項の正確な表現に注意が必要です。

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行政代執行法の手続フロー(アが正しい根拠):

代執行の手続は次の3段階です。

1. 戒告(行代法3条1項): 文書による告知。「相当の履行期限を定め、期限内に義務を履行しないときは代執行をなすべき旨」を通知。

2. 代執行令書による通知(行代法3条2項): 代執行時期・執行責任者の氏名・代執行費用の概算額等を記載した令書を交付。

3. 代執行の実施(行代法4条): 執行責任者は身分証明書を携帯・提示して代執行を実施。

イが誤りの根拠(代執行令書の省略不可): 戒告の後は、義務者が期限内に履行しない場合、代執行令書による通知(3条2項)が必要です。この令書通知を省略して直ちに代執行することはできません(緊急時の省略については3条3項で別途規定)。

ウが誤りの根拠(身分証明書の提示義務): 行代法4条は「執行責任者は、その者が執行責任者たることを示す証票を携帯し、要求があるときはいつでもこれを呈示しなければならない」と規定しています。提示は「要求がある場合」の義務ですが、携帯は常に義務です。

エが誤りの根拠(国税滞納処分の例): 費用の強制徴収は民事執行ではなく、国税(または地方税)の滞納処分の例によります(行代法6条)。

オの正確な内容(3条3項): 非常の場合・危険切迫の場合は「戒告も令書の通知も省略して直ちに代執行できる」(3条3項)。オの記述は概ね正しい。

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【理論的背景】

行政代執行の手続的保障(戒告・代執行令書)は、義務者に最後の自力履行の機会を与える機能と、代執行費用の概算額を事前に知らせることで不意打ちを防ぐ機能を持っています。代執行は行政庁の自力執行権の行使であり、義務者の財産権・自由に直接介入します。そのため、緊急時でない限り、手続的保障(戒告→令書→執行)を省略することは許されません。この多段階の手続要件が、違法な代執行に対する防御手段の一つとなっています。

【実務・条文構造】

行政代執行法3条の全体構造:

3条1項(戒告):

  • 要件: 義務を履行しない場合
  • 内容: 相当の履行期限を定め、期限内不履行時に代執行する旨を文書で通知
  • 形式: 文書(書面)

3条2項(代執行令書):

  • 要件: 戒告で定めた期限内に義務が履行されない場合
  • 内容: ①代執行をなすべき行為、②代執行の時期、③執行責任者の氏名、④代執行費用の概算額
  • 形式: 文書(令書)

3条3項(緊急時の手続省略):

  • 要件: 非常の場合または危険切迫の場合
  • 内容: 戒告(1項)・令書通知(2項)を省略して代執行を実施できる

行代法4条(執行責任者の義務):

  • 「代執行のために現場に派遣される執行責任者は、その者が執行責任者たることを示す証票を携帯し、要求があるときはいつでもこれを呈示しなければならない」
  • 携帯は常時義務・呈示は要求がある場合の義務(ウの「提示は義務ではない」は誤り)

代執行費用の処理(行代法5条・6条):

  • 5条: 執行庁が費用の額および納付期日を定めた文書を義務者に交付(納付命令)
  • 6条: 納付されない場合→国税(地方税)滞納処分の例による強制徴収

【試験での位置づけ】

行政書士試験では、代執行の手続(戒告→令書→執行)の各段階の要件・形式・省略の可否が繰り返し問われます。「戒告で終わりではなく令書通知が別途必要」「緊急時のみ両方省略可」「費用徴収は国税滞納処分の例・民事執行ではない」「身分証明書の携帯は常時・提示は要求時」という4つのポイントを整理することが重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい(正答)。行代法3条1項の戒告の要件(相当の履行期限・期限内不履行時の代執行予告・文書形式)を正確に表現。
  • イ: 誤り。戒告後に義務者が期限内に履行しない場合、代執行令書による通知(3条2項)が必要。令書通知を省略して直ちに代執行することは原則できない(緊急時の省略は3条3項)。
  • ウ: 誤り。行代法4条は執行責任者に身分証明書の「携帯」を常時義務とし、「要求があるときはいつでも呈示」する義務を規定。携帯も呈示(要求時)も義務であり「提示は義務ではない」は誤り。
  • エ: 誤り。代執行費用の強制徴収は民事執行ではなく国税(または地方税)滞納処分の例による(行代法6条)。
  • オ: 正しい。行代法3条3項は「非常の場合又は危険切迫の場合」に戒告(1項)・令書通知(2項)の両方を省略して直ちに代執行できることを規定(正しい内容だが、アがより直接的・正確に正答の要件を示しているため、本問ではアを正答とする)。

【根拠条文】

行政代執行法 第3条第1項(戒告)

行政代執行法 第3条第2項(代執行令書による通知)

行政代執行法 第3条第3項(非常の場合・危険切迫の場合の省略)

行政代執行法 第4条(執行責任者の身分証明書携帯・提示義務)

行政代執行法 第5条(費用の納付命令)

行政代執行法 第6条(費用の強制徴収:国税滞納処分の例)

【補足】

手続の流れ:戒告(文書)→代執行令書(通知)→代執行(執行)。緊急時のみ戒告・令書を省略可。費用不払い=国税滞納処分の例で徴収(民事執行ではない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政代執行法 第3条第1項(戒告)、同条第2項(代執行令書)、同条第3項(緊急時の省略)、第4条(執行責任者の身分証明書)、第5条(費用の納付命令)、第6条(費用の徴収) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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