行政法117行政罰・行政刑罰・行政上の秩序罰(過料

行政書士 行政法 問117:行政罰・行政刑罰・行政上の秩序罰(過料

行政罰に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 行政罰には、刑事罰として科される行政刑罰と、秩序維持のための行政上の秩序罰(過料)の2種類がある。
  • 行政刑罰は刑法総則の適用があり、刑事訴訟法上の手続によって科される。
  • 行政上の秩序罰(過料)は、刑法典上の刑罰ではなく、刑事訴訟法の手続によらず、行政庁の決定または裁判所の過料決定手続(非訟事件手続法等)によって科される。
  • 行政刑罰と行政上の秩序罰は、いずれも行政上の義務違反に対する制裁であるため、同一の義務違反行為に対して両者を重ねて科することは、二重処罰禁止(憲法39条)に違反する。正答
  • 条例により、条例に違反した者に対して行政上の秩序罰(過料)を科す旨を規定することができるが、その上限額は地方自治法の定める範囲内でなければならない。
正答:行政刑罰と行政上の秩序罰は、いずれも行政上の義務違反に対する制裁であるため、同一の義務違反行為に対して両者を重ねて科することは、二重処罰禁止(憲法39条)に違反する。

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エが誤っています。行政刑罰と行政上の秩序罰(過料)は性質が異なります。行政刑罰は刑法典上の「刑」(懲役・罰金等)であるのに対し、行政上の秩序罰(過料)は刑罰ではなく行政上のペナルティです。両者は刑罰と非刑罰として性質を異にするため、同一行為に対して行政刑罰と秩序罰の双方を科することは原則として二重処罰禁止(憲法39条)には違反しないとされています(憲法39条は「刑事上の罪」について二度処罰することを禁じており、秩序罰は刑事処罰にあたらない)。アの2種類の区別、イの行政刑罰と刑事訴訟法、ウの秩序罰の手続、オの条例による過料はいずれも正しいです。

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行政罰の2類型(アが正しい根拠):

  • 行政刑罰: 刑法典上の「刑」(懲役・禁錮・罰金・拘留・科料・没収)として科される制裁。刑法総則の適用あり・刑事訴訟法上の手続による(イが正しい根拠)。
  • 行政上の秩序罰(過料): 刑罰ではなく行政上のペナルティ。刑法総則の適用なし・非訟事件手続法等による裁判所の過料決定または行政庁の過料決定手続による(ウが正しい根拠)。

二重処罰禁止と行政刑罰・秩序罰(エが誤りの根拠): 憲法39条後段(二重処罰禁止・二重の危険の禁止)は、「同一の刑事上の罪について、二重に刑事上の責任を問われない」という原則です。行政上の秩序罰(過料)は「刑事上の責任」(刑罰)ではないため、憲法39条の二重処罰禁止は適用されません。したがって、同一の義務違反行為に対して、行政刑罰(例:罰金)と行政上の秩序罰(過料)の双方を科することは、憲法39条には違反しないとされています(もちろん個別法の解釈として、立法政策上望ましくない場面はあります)。

条例による過料(オが正しい根拠): 地方自治法14条3項は「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる」と規定しています。

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【理論的背景】

行政上の義務違反に対する制裁として行政罰が存在しますが、行政刑罰と行政上の秩序罰(過料)は法的性質が根本的に異なります。行政刑罰は「刑罰」であり、刑法総則の適用(故意・過失・責任能力等の要件)、刑事訴訟法上の手続保障(起訴・公判・弁護権等)が及びます。これに対して行政上の秩序罰は「行政上のペナルティ」であり、刑事司法システムの外で科されます。

二重処罰禁止(憲法39条)の射程について: 憲法39条は「何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない」(後段)と規定し、同一の「刑事上の罪」について重ねて「刑事上の責任」を問うことを禁じています。秩序罰(過料)は刑事上の責任ではないため、この憲法規定の射程外です(エが誤りの核心)。

【実務・条文構造】

行政上の秩序罰(過料)の科す主体と手続:

1. 行政庁(非刑事的な過料): 行政機関が直接過料を決定する場合(例:戸籍法上の届出義務違反の過料)——行政庁の処分として→不服申立て・取消訴訟の対象

2. 裁判所(非訟事件手続法上の過料): 裁判所が過料決定を行う場合(例:商業登記義務違反等)——非訟事件手続として→即時抗告可

条例による制裁の上限(オの詳細):

地方自治法14条3項が定める上限:

  • 刑事罰: 2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料、没収
  • 過料: 5万円以下

なお、個別の法律が「条例で定める場合はより重い制裁を設けることができる」と規定している場合(上乗せ条例的な規定)は例外的に上限を超えることができます。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では行政罰の2類型の区別(行政刑罰と秩序罰・過料)、二重処罰禁止との関係、条例による過料の上限が典型的な出題ポイントです。「行政刑罰と秩序罰の二重科が二重処罰禁止に違反する」(エのような誤り)は最頻出の引っかけパターンです。また「行政刑罰に刑法総則の適用あり」「過料の手続は非訟事件手続法等」も重要な確認事項です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。行政罰の2類型(行政刑罰と行政上の秩序罰)の区別は正確。
  • イ: 正しい。行政刑罰は刑法典上の刑として科されるため刑法総則(故意・過失・責任能力等)の適用があり、刑事訴訟法の手続によって科される。
  • ウ: 正しい。行政上の秩序罰(過料)は刑罰でなく、非訟事件手続法等による裁判所の過料決定または行政庁の過料処分として科される。刑事訴訟法の手続によらない点が重要。
  • エ: 誤り(正答)。行政刑罰(刑事上の罪)と行政上の秩序罰(過料・刑事上の責任ではない)の双方を科することは憲法39条の二重処罰禁止に違反しない。両者は性質が異なるため二重処罰の問題は生じない。
  • オ: 正しい。条例により過料を科す場合の上限は地方自治法14条3項が規定する「5万円以下」(過料の場合)が原則。法律に特別の定めがある場合を除く。

【根拠条文】

地方自治法 第14条第3項(条例による制裁の規定:2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料、没収、又は5万円以下の過料)

非訟事件手続法 第119条以下(過料事件の裁判手続:裁判所による過料の裁判)

日本国憲法 第39条後段(同一の犯罪についての二重処罰禁止)

【補足】

行政刑罰=刑事罰(刑法総則適用・刑訴手続)。秩序罰(過料)=非刑事的ペナルティ(刑法総則不適用・非訟手続等)。両者を同一行為に重ねて科しても憲法39条違反にならない(性質が異なるため)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第14条第3項(条例による過料)、刑事訴訟法(行政刑罰の手続)、非訟事件手続法(過料決定)、日本国憲法 第39条(二重処罰禁止) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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