行政法118行政上の強制・総合問題・代執行・直接強制・即時強制の適用場面

行政書士 行政法 問118:行政上の強制・総合問題・代執行・直接強制・即時強制の適用場面

次の【事例】について、行政上の強制手段に関する記述として**最も適切なもの**はどれか。 【事例】 甲市の建築指導課は、建築基準法に基づき、違法に建築された建物を所有するBに対して、当該建物を除却(取り壊す)すべき命令を発した。Bはこの命令に従わず期限を過ぎても建物を取り壊さなかった。また、別の事案で、甲市の保健所は、感染症の蔓延を防ぐため、感染症法に基づき、感染症患者Cを法定の要件を充たしたとして強制的に入院させた。

  • Bに対して建物を取り壊す命令の不履行について、甲市が行政代執行を行うことができるのは、当該除却命令が法律(建築基準法)に基づくものであり、かつ代替的作為義務であることが要件の一つとなる。正答
  • Bが命令に従わない場合、甲市は直ちに(戒告なしに)代執行を実施することができる。ただし費用は市が負担する。
  • Cの強制入院は、行政代執行法に基づく代執行として実施される。
  • Cの強制入院は、義務者の事前の義務不履行を要件とする直接強制として実施される。
  • Cの強制入院のような即時強制は、法律の根拠なく行政の一般的権限として実施することができる。
正答:Bに対して建物を取り壊す命令の不履行について、甲市が行政代執行を行うことができるのは、当該除却命令が法律(建築基準法)に基づくものであり、かつ代替的作為義務であることが要件の一つとなる。

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アが正しいです。建物の除却(取り壊し)は「代替的作為義務」(Bでなくても市や業者が代わって実行できる)であり、建築基準法という「法律」に基づく義務です。行政代執行法2条の要件(代替的作為義務・法律上の根拠・他の手段が困難・著しい公益違反)を充たします。イは「戒告なし」かつ「費用市負担」としており誤りです(原則として戒告→令書→代執行の手続が必要・費用はB負担)。ウはCの強制入院を代執行としており誤りです。感染症法に基づく強制入院は「即時強制」(事前に義務を課さず直接実力行使)です。エは直接強制(義務の事前賦課が前提)としており誤りです。オは「法律の根拠なし」としており誤りです。

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Bの事例(アが正しい根拠): 建物の除却(取り壊し)命令は建築基準法に基づく「代替的作為義務」(誰でも代わって行える義務)です。行政代執行法2条の要件(①法律または条例に基づく代替的作為義務の不履行・②他の手段による履行確保が困難・③不履行の放置が著しく公益に反する)を充たせば、甲市は代執行を実施できます。

Bの事例について(イが誤りの根拠): 代執行は原則として戒告(行代法3条1項)→代執行令書による通知(3条2項)→代執行の実施(4条)という手続を経なければなりません。戒告なしの即時実施は非常時・緊急時(3条3項)の例外です。また費用はB(義務者)が負担します(行代法5条・6条)。

Cの事例(ウ・エが誤りの根拠): 感染症法に基づく感染症患者の強制入院は、Cが事前に「入院義務を課されたが履行しなかった」ケースではなく、感染症蔓延防止のために緊急の必要があり義務を課す余裕なく直接実力を行使する「即時強制」の典型例です。代執行(ウ)は代替的作為義務の不履行を前提とし、直接強制(エ)は何らかの義務の不履行を前提とします。いずれも「義務の事前賦課→不履行→強制執行」という構造を持ちますが、即時強制はこの前提がありません。

Cの事例について(オが誤りの根拠): 即時強制も法律の個別根拠が必要です(感染症法がその根拠)。

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【理論的背景】

本問は3種の行政上の強制手段(代執行・直接強制・即時強制)を事例で区別させる問題です。区別の核心は「事前の義務賦課があるか」「義務の不履行が前提か」「代替性があるか」という3軸です。

  • 代執行: 事前義務あり + 不履行あり + 代替的作為義務(行代法2条)
  • 直接強制: 事前義務あり + 不履行あり + 代替的でない義務または代執行が不可能な場合(個別法根拠)
  • 即時強制: 事前義務なし(または余裕なし)+ 直接実力行使(個別法根拠)

【実務・条文構造】

Bの事例(代執行)の詳細:

  • 根拠法: 建築基準法(除却命令の根拠)+ 行政代執行法(代執行の一般法)
  • 手続: ①戒告(文書)→②代執行令書(通知)→③代執行実施
  • 費用: B(義務者)の負担(行代法5条・6条)
  • 代替性: 建物の取り壊しは専門業者が代わって実行できる→代替的作為義務○

Cの事例(即時強制)の詳細:

  • 根拠法: 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
  • 手続: 感染症法の規定する要件(法定の感染症・蔓延防止の必要性等)を充たした場合に直接実施
  • 事前義務: なし(緊急の必要から義務を課す暇がない)
  • 即時強制の例: 感染症法(強制入院)、精神保健福祉法(措置入院)、警察官職務執行法(保護・制止)等

行政代執行と即時強制の混同を防ぐポイント:

  • 代執行は「除却命令→不履行→代執行」(事前命令あり・不履行が前提)
  • 即時強制は「(命令なし)→直接入院措置」(命令なし・不履行なし)

【試験での位置づけ】

本問のような「事例問題で手段を選ぶ」形式は行政書士試験の典型的な出題パターンです。3手段(代執行・直接強制・即時強制)の区別(事前義務の有無・代替性・一般法の有無)を事例に当てはめる能力が試されます。「感染症患者の強制入院=代執行」「建物除却命令不履行=即時強制」という組み合わせの誤りは最頻出の引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい(正答)。代執行の要件のうち「法律に基づく代替的作為義務」の部分を正確に指摘。建物除却命令は建築基準法(法律)に基づき、取り壊しは代替的作為義務(誰でも代わって実行可能)であることが代執行の前提となる。
  • イ: 誤り。代執行には原則として戒告(行代法3条1項)の手続が必要(非常時・危険切迫時のみ省略可)。また代執行費用はBが負担(市が負担するのは誤り)。
  • ウ: 誤り。Cの強制入院は即時強制(感染症法に基づく直接の実力行使)であり、代執行ではない。代執行は代替的作為義務の不履行を前提とするが、強制入院はCが事前に義務を課されたわけではない。
  • エ: 誤り。Cの強制入院は直接強制でもない(直接強制も事前の義務不履行を前提とする)。感染症法の強制入院は事前義務なしの即時強制。
  • オ: 誤り。即時強制も法律の個別根拠が必要(感染症法等)。「法律の根拠なく行政の一般的権限として」実施できるとするのは侵害留保原則に反する。

【根拠条文】

建築基準法 第9条(違反建築物に対する除却・移転等の是正命令。除却命令は代替的作為義務)

行政代執行法 第2条(代執行の要件:代替的作為義務・困難性・著しい公益違反)

行政代執行法 第3条(代執行手続:戒告→令書→実施)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)第19条・第20条(入院の措置・即時強制の例。具体の条番号は改正で変動しうるため制度=即時強制で理解する)

【補足】

区別の3軸:①事前義務の有無②義務不履行の前提③代替性。代執行=①あり②あり③あり。直接強制=①あり②あり③なし。即時強制=①なし(緊急)②なし。強制入院=即時強制の典型。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 建築基準法(除却命令)、行政代執行法 第2条(代執行の要件)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法・強制入院) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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