行政法142行政法(行政事件訴訟法)

行政書士 行政法 問142:行政法(行政事件訴訟法)

行政事件訴訟法上の客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟であって、一切の国民が自己の権利侵害なく提起できるが、法律に定める場合においてのみ提起が認められる。
  • 機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟であって、議院の内部的決定に関する事柄も含まれるため、裁判所は国会と行政機関の権限紛争について一般的管轄権を有する。
  • 住民訴訟は民衆訴訟の一類型であって、住民であれば誰でも提起できるが、その性質上、法律に定める場合においてのみ提起できるという制約はなく、住民固有の法的利益に基づき提起することが認められる。
  • 選挙訴訟(選挙の効力に関する訴訟)は民衆訴訟の典型例であり、選挙人として投票した者はすべて選挙の効力を争うことができるが、その際に自己の権利侵害を立証する必要はない。正答
  • 民衆訴訟と機関訴訟はいずれも客観的な法秩序の維持を目的とする客観訴訟であるため、民事訴訟の原則(弁論主義・処分権主義)が完全に排除され、職権探知主義が全面的に適用される。
正答:選挙訴訟(選挙の効力に関する訴訟)は民衆訴訟の典型例であり、選挙人として投票した者はすべて選挙の効力を争うことができるが、その際に自己の権利侵害を立証する必要はない。

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エが正しい記述です。選挙訴訟は行政事件訴訟法5条の民衆訴訟(自己の法律上の利益に関わらない資格で提起する訴訟)の典型例です。選挙人(投票権を有する者)は自己の個人的権利侵害を立証することなく、選挙手続の適法性という客観的法規違反を問題として選挙の効力を争うことができます(エ正しい)。アは「一切の国民が提起できるが法律に定める場合のみ」という部分の前半が誤りで、民衆訴訟は法律に定める場合に限り、当該法律に定める者に限り提起できます(行訴法42条)。イは「議院の内部的決定も含まれる」として機関訴訟の範囲を広げ、「裁判所が国会と行政機関の権限紛争に一般的管轄権を有する」としていますが、機関訴訟も法律の定めがある場合のみであり、国会内部の決定(国会自律)は司法審査の対象外が多く誤りです。ウは「法律に定める場合のみという制約はない」が誤りで、住民訴訟(地自法242条の2)は法律(地方自治法)が根拠です。オは「民事訴訟の原則が完全に排除される」が誤りです。

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客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)の基本的性質を整理します。

行訴法の訴訟類型(再確認):

主観訴訟(自己の権利利益救済): 抗告訴訟(3条)・当事者訴訟(4条)

客観訴訟(客観的法秩序維持): 民衆訴訟(5条)・機関訴訟(6条)

民衆訴訟(5条): 国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益に関わらない資格で提起。42条により「法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起することができる」。典型例:選挙訴訟(公職選挙法)・住民訴訟(地方自治法)。

エが正しい根拠: 選挙訴訟は選挙の効力を争う民衆訴訟であり、選挙人(当該選挙で投票資格を有する者)は自己の個人的権利侵害(例:自分の票が不正に操作されたこと等)を立証せず、選挙手続全体の違法・不正を客観的に争います。民衆訴訟の本質が「客観的法規違反の是正」にあるため、自己権利侵害の立証は不要です。

機関訴訟(6条): 国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争。こちらも「法律に定める場合に限り」提起可能(42条)。国と地方公共団体間(地方自治法251条の5等)が典型。議院の内部決定(国会の自律的領域)は原則として司法審査対象外(イ誤り)。

オの誤り: 行訴法7条は「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による」と規定しており、客観訴訟でも民事訴訟の原則が補完的に適用されます。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【客観訴訟の理論的意義】

行政事件訴訟は本来「個人の権利利益の救済」(主観訴訟)を目的とする制度設計ですが(行訴法1条:「適正な行政の確保に資すること」)、行政作用の適法性を客観的に維持するために客観訴訟制度が設けられています。客観訴訟は「出訴資格(standing)」の通常要件(自己の法律上の利益)を満たさない者でも提起できるという異例の制度であるため、42条が「法律に定める場合に限る」と厳格に限定しています。この「法定主義」は、濫訴防止と法的安定性の観点から重要です。

【民衆訴訟の具体的類型】

選挙訴訟(公職選挙法203条以下): 選挙の効力に関する訴訟。都道府県・市町村議会議員・長の選挙については選挙管理委員会に対する異議申出→審査申立て→選挙訴訟(高裁管轄)の経路をたどります。衆議院・参議院議員選挙については高裁が一審として管轄します。選挙人(投票資格者)が客観的な選挙手続の適法性を争います。

住民訴訟(地方自治法242条の2): 地方公共団体の財務会計上の違法行為に対して住民が提起する訴訟。①差止め(1号)、②行為の取消し・無効確認(2号)、③怠る事実の違法確認(3号)、④損害賠償請求・不当利得返還請求(4号)の4類型があります。住民監査請求を前置した上で提起します(前置主義)。住民であれば誰でも提起できますが、「法律に定める場合(地方自治法242条の2が根拠)のみ」という42条の要件は満たしています。ウの「法律に定める場合のみという制約はない」は誤りです。

【機関訴訟の具体的類型と国会内部の自律性(イの分析)】

機関訴訟の典型例は、国と地方公共団体間の紛争で、地方自治法251条の5(地方公共団体による違法確認訴訟)等があります。イは「議院の内部的決定も含まれる」「裁判所が国会と行政機関の権限紛争について一般的管轄権を有する」とし、これが誤りです。国会の議事手続・議員の懲罰・議長の議事整理等の「議院自律権」に属する事柄は、権力分立原則と議会制民主主義の観点から司法審査の対象外とされるのが原則です(警察法改正無効確認請求事件・最大判昭37.3.7等)。機関訴訟も42条の「法律に定める場合」に限定され、一般的な裁判所の管轄権として認められているわけではありません。

【オの誤り:民事訴訟の原則と客観訴訟】

行訴法7条の補則規定により、行政事件訴訟法に定めがない手続事項は民事訴訟の例によります。客観訴訟においても、書証の申出方法・証人尋問の手続等の手続法的事項は民事訴訟法の規定が適用されます。職権探知主義(裁判所が当事者の主張・申立てに拘束されず証拠収集・事実認定できる)については、行政事件訴訟法24条が「職権証拠調べ」を認めていますが、これは弁論主義の排除ではなく補充的な職権探知です。「民事訴訟の原則が完全に排除される」という断定は誤りです。

【行政書士試験での整理】

「客観訴訟は自己の権利侵害不要」「法律に定める場合のみ」「民衆訴訟=選挙訴訟・住民訴訟」「機関訴訟=国と地方公共団体間等の権限紛争」という4点のセットで押さえておくことが最重要です。

【根拠条文】

行政事件訴訟法 第5条(民衆訴訟)、第6条(機関訴訟)、第42条(民衆訴訟・機関訴訟の提訴要件)

地方自治法 第242条の2(住民訴訟)

公職選挙法 第203条(選挙訴訟)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政事件訴訟法 第5条(民衆訴訟の定義)、第6条(機関訴訟の定義)、第42条(民衆訴訟・機関訴訟の提訴要件) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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