行政法143行政法(国家賠償法)

行政書士 行政法 問143:行政法(国家賠償法)

行政指導と国家賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**誤っているもの**はどれか。

  • 行政指導は非権力的事実行為であるため、行政指導によって損害が生じた場合に国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に該当するかどうかは問題となる。最高裁はかかる行政指導も「公権力の行使」に含まれるとする立場をとっている。
  • 行政指導が違法な国家賠償責任を生じさせるためには、その行政指導が法令に違反している(行政手続法の定める要件を満たしていない等)だけでは足りず、職員に故意・過失が認められなければならない。
  • 行政庁が違法な行政指導(建築工事の停止指導)を行い、申請者が指導に従ってその工事を停止した結果、損害が生じた場合には、行政指導の違法性と損害の因果関係が問題になり、申請者が行政指導に自由意思で従ったかどうかも考慮される。
  • 行政指導が長期にわたって継続し、行政庁が当該指導の撤廃に応じないことによって申請者が実質的に建築確認申請を妨害された場合は、行政庁の措置が違法であるとして国家賠償責任が認められることがある(最判昭60.7.16参照)。
  • 行政指導が国家賠償法上の「公権力の行使」に当たるとして賠償責任が認められる場合であっても、その行政指導について指導を行った職員個人に故意・重大な過失がない限り、個人賠償責任を問うことはできない。正答
正答:行政指導が国家賠償法上の「公権力の行使」に当たるとして賠償責任が認められる場合であっても、その行政指導について指導を行った職員個人に故意・重大な過失がない限り、個人賠償責任を問うことはできない。

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オが誤りです。国家賠償法1条2項は「公務員に故意又は重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と規定しており、国民が損害賠償を請求する相手は国または公共団体(1条1項)であって、公務員個人ではありません。公務員個人への賠償請求は、故意・重大な過失の有無にかかわらず、国賠法1条1項のもとでは認められないのが判例の立場(最判昭30.4.19等)です。「故意・重大な過失があれば個人賠償責任を問える」というオの記述は、国賠法の公務員個人免責の法理に反し誤りです。ア(行政指導も公権力の行使に含まれる)は概ね最高裁の立場に沿っています。イ(故意・過失が必要)は1条1項の要件として正しいです。ウ(任意性・因果関係の考慮)は判例の分析枠組みとして正しいです。エ(最判昭60.7.16参照)は正しい記述です。

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行政指導と国家賠償法1条の関係を整理します。

行政指導の「公権力の行使」該当性(アの根拠): 国賠法1条1項の「公権力の行使」は、最高裁判例において広く解釈されており、権力的処分に限らず国・地方公共団体の非権力的活動(事実行為を含む)も含まれるとされています。行政指導は非権力的ですが、「公権力の行使」として国賠法1条の適用対象となります。

違法な行政指導と国賠責任の要件: ①行政指導の違法性(法令違反・職権濫用等)、②公務員の故意・過失、③損害の発生、④違法行為と損害の因果関係、の4要素が必要です(イ・ウの根拠)。

品川マンション事件(最判昭60.7.16): 建築確認申請後に近隣住民と話し合いを求める行政指導が行われ、それに従った申請者が長期間建築確認を得られなかった事案。最高裁は、行政指導が任意性を失って申請者の意思に反して確認の留保が続く段階に至れば、その確認留保は違法として国賠責任が生じ得るとしました(エの根拠)。

オが誤りである根拠: 判例(最判昭30.4.19等)は、国賠法1条1項の下では被害者は国・公共団体に対して損害賠償を請求できますが、公務員個人への賠償請求は認められないとしています。故意・重大な過失は国・公共団体の公務員への求償権(1条2項)の問題であり、被害者が公務員個人に賠償請求する根拠ではありません。

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【行政指導に対する国家賠償法1条の適用構造】

国家賠償法1条1項は「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と規定します。行政指導は非権力的・任意的な事実行為ですが、「公権力の行使」に広く含まれるとする最高裁の解釈により、行政指導によって生じた損害についても1条1項の国賠請求が可能です。

【品川マンション事件(最判昭和60.7.16)の詳細】

事案: 建築確認申請後、行政庁(品川区)が近隣住民との話し合いを求める行政指導を行い、申請者がこれに従ったことで建築確認が長期間留保された。

判旨: 申請者が行政指導に「任意に従っている」段階は確認留保も適法。しかし、申請者が指導に従わない意思を明確にした段階以降も確認を留保し続けることは違法。行政指導に従う意思のない申請者に対して確認を留保することは国賠法上違法となり得る。

意義: 行政指導の「任意性」と「継続性」が国賠責任の分水嶺となることを示した重要判例。行政手続法(現行32条以下)の行政指導規制と連動して理解する必要があります。

【公務員個人の免責(オの詳細分析)】

最判昭和30年4月19日(公務員個人免責判決)は「国家賠償法に基づく損害賠償請求は、国又は公共団体に対してのみ許され、当該公務員個人に対しては民事賠償責任を問うことはできない」と確立しました。この「公務員個人免責」の根拠は:①国賠法が国・公共団体の賠償責任を代位責任として構成し、公務員個人は「国・公共団体の手足」として行動しているという制度設計、②公務員が萎縮して職務執行が困難になることの防止(職務の積極性確保)、③国・公共団体が確実に損害を補填できるという被害者保護。

重要なのは、故意・重大な過失のある公務員への求償(1条2項)は「国・公共団体が被害者に賠償した後、公務員への内部的な求償」であり、被害者が直接公務員個人に請求する権利は認められていないということです。オの「故意・重大な過失があれば個人賠償責任を問える」は、1条2項の求償権(国・公共団体→公務員)と、被害者の請求権(被害者→国・公共団体)を混同した誤りです。

【求償権と公務員個人免責の関係(オの核心)】

国賠法1条2項の求償権は「国・公共団体が被害者に賠償した後、故意・重過失のある公務員に対して内部的に求償する」権利です。これは国・公共団体と公務員の間の内部的求償関係を定めたものであって、被害者と公務員個人の間の賠償関係を定めたものではありません。したがって、「公務員に故意・重過失があれば被害者が公務員個人に直接賠償請求できる」というオの記述は、求償権(国→公務員)と被害者の賠償請求権(被害者→国・公共団体)を取り違えた典型的な誤りです。被害者が賠償を求める相手は、公務員の故意・過失の程度にかかわらず、常に国または公共団体です(最判昭30.4.19)。

【行政書士試験での位置づけ】

国賠法1条と行政指導の組み合わせは、行政手続法(行政指導の一般原則)・国家賠償法(賠償要件)・行政事件訴訟法(処分性・訴えの利益)の横断的理解を要求する発展問題として出題されます。品川マンション事件の「任意性喪失後の確認留保=違法」という判示内容を正確に理解しておくことが重要です。

【根拠条文・判例】

国家賠償法 第1条第1項(賠償責任)、第1条第2項(求償権)

行政手続法 第32条(行政指導の一般原則)、第33条(申請に関連する行政指導)

最判昭和30年4月19日(公務員個人の賠償責任の否定)

最判昭和60年7月16日(品川マンション事件・行政指導と建築確認の留保)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第1条(公権力の行使に基づく損害賠償) 判例: 最判昭和60年7月16日(品川マンション事件・行政指導と建築確認の留保)、最判昭和30年4月19日(公務員個人の賠償責任の否定) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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