行政書士 行政法 問156:行政法(国家賠償法)
国家賠償法の適用に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア国家賠償法は日本国籍を有する者のみに適用される法律であり、日本に在留する外国人は国家賠償法の保護を受けることができない。
- イ国家賠償法6条は外国人の取扱いについて「外国人が被害者である場合においては、相互の保証があるときに限り、この法律を適用する」と規定しており、外国人への国賠法の適用には相互保証が要件となる。正答
- ウ国家賠償法6条の「相互保証」の意義について、判例・通説は、日本に在留する外国人が当該外国人の本国(国籍国)において同一の権利保障を受けることを国際条約によって明文で保証している場合のみに相互保証があるとしている。
- エ国家賠償法6条の相互保証要件は、外国人が加害行為を受けた当時において充足されている必要があり、その後に相互保証の状況が変化しても賠償責任の成否には影響しない。
- オ日本が外国人に対し国家賠償を認めるかどうかは国際法上の問題であり、国家賠償法は外国人について一切の規律を持たない。
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イが正しい記述です。国家賠償法6条は「この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する」と規定しています(相互保証主義)。外国人が被害者の場合、その外国人の本国において日本人が同等の損害賠償を受けられる保証(相互保証)がある場合に限り、日本の国家賠償法が適用されます(イ正しい)。アは「外国人は国賠法の保護を受けられない」としていますが、6条の相互保証がある場合は外国人にも国賠法が適用されます(ア誤り)。ウは「国際条約による明文の保証のみ」としていますが、判例上の相互保証の認定は条約による明文保証だけでなく実質的な相互性を認める場合もあり(条件が緩やか)、ウの限定が誤りです。エは「加害行為当時に相互保証が必要」という時間的要件についての記述で、この点は一定の正確性があります。オは「国賠法は外国人について一切の規律を持たない」としていますが、6条が明示的に規律しており誤りです。
国家賠償法6条(外国人被害者への相互保証主義)の要件と解釈を整理します。
6条の条文: 「この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する」。
相互保証主義の趣旨: 国家賠償責任は主権国家間の相互主義に基づくものとされ、日本人が外国で国家賠償を受けられる保証がある国の国民にのみ、日本でも国家賠償を認めるという考え方です。これは国際法上の互恵主義(reciprocity)に基づく立法政策です。
イが正しい根拠: 6条は「相互の保証があるときに限り適用する」と規定しており、この記述はイの「相互保証が要件」という内容と一致します。
ウが誤りの理由(相互保証の認定基準): 判例・実務上、相互保証の認定は「国際条約に明文規定があること」のみを要件とせず、当該国の法令・運用・慣行等を総合考慮した上で、実質的に日本人が当該国において同等の保護を受け得る状況にあるかを判断します(ウの限定的解釈は誤り)。
外国人の権利と国賠法(アが誤りの根拠): 6条の相互保証がある場合は外国人にも国賠法が適用されます。相互保証のない国の国民については国賠法の適用がありませんが、その場合でも民法の不法行為等による請求の余地は別途論じられます。
【相互保証主義の国際法的背景と比較法】
国家賠償法6条の相互保証主義は、国際法上の「主権平等・互恵原則」に基づく制度です。国家賠償(政府の不法行為責任)は各国の主権的行為に関わるため、二国間で相互に認め合う形が望ましいという考え方があります。ドイツ等の一部の国でも類似の相互保証主義を採用していますが、国際人権法の発展とともに、外国人への差別なき国家賠償保護を求める立場も有力になっています。日本では6条の相互保証主義が現行法として残っていますが、実務上は多くの主要国との間で相互保証が認められると解釈されているため、問題になるケースは限られています。
【相互保証の認定基準(ウの詳細分析)】
6条の「相互の保証がある」とはどのような状態をいうかについて、判例・通説は以下の基準を示しています:
条約・明文規定がなくても可: 国際条約に明文の保証があれば当然に相互保証が認められますが、それのみが要件ではありません(ウの限定が誤りの根拠)。当該国の国内法令・法制度・行政・司法の実務・慣行等を総合考慮し、「日本人が当該国で国家賠償に相当する救済を実質的に受けられる」状況にあれば相互保証が認められます。
不平等条約は別: 相互保証が一方的に日本に不利な内容(日本人は当該国で保護を受けられないが当該国人は日本で保護を受けられる)であれば、それは相互保証ではなく6条の要件を満たしません。
【イの記述の精確性確認】
6条の条文「相互の保証があるときに限り、これを適用する」とイの「相互保証が要件となる」は対応しており、イは正しい記述です。なお、イは「相互保証が要件」と正確に述べており、その要件の内容(何が「相互保証」に当たるか)については記述していないため、ウの「条約明文のみ」という誤った限定はイに含まれていません。
【エの時間的要件の検討】
エの「加害行為当時に相互保証が必要」という記述は、理論的には一定の合理性があります。相互保証の存否は時間によって変化する可能性があり(外交関係の変化・法令改正等)、訴訟提起時ではなく損害発生時(加害行為時)の相互保証の状況が基準となるという解釈が有力です。ただし、この点については判例上明確な確立した立場は少なく、エの記述が「その後の変化が影響しない」とする部分は断言が難しいです(条件次第では影響する可能性も)。エが正答でない理由は、「加害行為当時」基準の点は一定正確ですが、「その後の変化が一切影響しない」という断言部分が問題になります。本問の正答はイです。
【外国人の憲法上の権利・国賠法との関係】
日本国憲法は権利の性質上許されない限り外国人にも基本的人権を保障するとされていますが(マクリーン事件・最大判昭53.10.4)、国家賠償請求権は財産権的性格を持つため外国人にも及ぶとされています。ただし国賠法6条が「相互保証」という条件を設けていることは憲法の外国人権利保障と緊張関係にあり、学説上批判もあります(相互保証がない国の国民は国賠請求できないという帰結が平等原則に反するのではないかという議論)。実務上は多数の主要国との相互保証が認められていることから、問題が顕在化するケースは少ない状況です。
【根拠条文】
国家賠償法 第6条(外国人が被害者の場合の相互保証主義)
日本国憲法 第17条(国家賠償請求権)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第6条(外国人への相互保証主義) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。