行政法157行政法(地方自治法)

行政書士 行政法 問157:行政法(地方自治法)

地方公共団体の条例による長の多選禁止(連続就任期間・就任回数の制限)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 地方自治法19条は普通地方公共団体の長の被選挙権として国籍・年齢・住所要件のみを規定しており、就任回数の制限は地方自治法に規定がないため、条例で自由に多選禁止を定めることができる。
  • 条例による長の多選禁止は、国民の被選挙権(憲法15条)という基本的人権を制限することになるため、法律の根拠(授権規定)がなければ条例で定めることはできず、現行法上は多選禁止条例は違憲・無効である。
  • 地方自治法89条は「普通地方公共団体に議会を置く」と規定し、地方自治法上、議会の権限・構成は法律で定められており、条例によって議員の任期や定数を法定より短縮・削減することはできない。
  • 地方公共団体の長の多選禁止を条例で定めることについては、①被選挙権への制限が法律の根拠なしに条例で行えるかという憲法上の問題と、②法律と条例の法令遵守(地自法14条1項「法律の範囲内」)の問題が検討課題であり、学説・実務上も議論がある。正答
  • 条例による長の多選禁止は、長に立候補する具体的な候補者の被選挙権(立候補の自由)を制限するため、憲法違反として既に最高裁判所が明確に違憲判決を下している。
正答:地方公共団体の長の多選禁止を条例で定めることについては、①被選挙権への制限が法律の根拠なしに条例で行えるかという憲法上の問題と、②法律と条例の法令遵守(地自法14条1項「法律の範囲内」)の問題が検討課題であり、学説・実務上も議論がある。

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エが正しい記述です。地方公共団体の長の多選禁止条例については、①被選挙権(憲法15条)を条例で制限できるかという憲法上の問題(法律の根拠(授権規定)が必要かどうか)、②地方自治法14条1項の「法律の範囲内」要件との関係、という2つの論点が並存しており、学説・実務で議論が続いています(エ正しい)。アは「条例で自由に定められる」としていますが、被選挙権という基本的人権を条例で制限することが「自由に」できるかは法律上・憲法上の問題があります(ア誤り)。イは「現行法上は多選禁止条例は違憲・無効」と断定していますが、最高裁がこの点を明確に判断した判例はなく、断定は誤りです(イ誤り)。ウは多選禁止条例と無関係の議員任期・定数の話であり論点がずれています。オは「最高裁が明確に違憲判決を下している」としていますが、そのような確定判決は存在せず誤りです(オ誤り)。

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地方公共団体の長の多選禁止条例をめぐる法的問題を整理します。

多選禁止条例の議論が生じる背景: 一部の地方公共団体で「知事・市長の連続就任を3期ないし4期に制限する条例」の制定が検討された際に、その適法性・合憲性が問題となりました。

論点①(憲法上の問題): 憲法15条は「公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である」と規定しており、選挙権・被選挙権(立候補の自由)は保障された権利です。条例によって被選挙権を制限することが、法律の根拠なしに許容されるかという問題があります。法律(公職選挙法等)で被選挙権の制限を定める場合は合憲性の根拠になりますが、条例でのみ制限する場合は「法律の留保」との関係が問われます。

論点②(地方自治法との関係): 地方自治法14条1項は「条例は法律の範囲内で定めることができる」と規定し、地自法19条が長の被選挙権要件(年齢・国籍・住所)を法定する中で、条例が法律の定める要件を超えた制限を加えることができるかという問題があります。

エが正しい根拠: エはこれらの論点が「学説・実務上も議論がある」と正確に述べており、断定を避けた適切な表現です。アの「条例で自由に定められる」もイの「違憲・無効と断定」も、確定した法的結論がない状況では誤りです。

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【多選禁止の立法論と問題の所在】

地方公共団体の長(知事・市長等)の多選禁止は、「長期政権による権力の固定化・腐敗防止・新陳代謝の促進」という政策的観点から議論されてきました。アメリカでは連邦大統領に2期制限(修正22条)があり、各州でも知事の任期制限(term limits)が広く定められています。日本では国会(国政選挙)・地方議会についての任期制限は法定されていませんが、地方公共団体の長の就任期間を条例で制限する案は各地で議論されています。

【憲法15条・被選挙権と条例制限の可否(アの誤り・イの過剰断定の詳細)】

憲法15条は「公務員を選定し及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と規定し、最高裁は被選挙権(立候補の自由)を憲法上の権利として認めています(最大判昭43.12.4等)。問題は、「条例で被選挙権を制限することが憲法上許容されるか」という点です。

法律では被選挙権の制限(公職選挙法10条の年齢・国籍・住所要件、11条・11条の2の欠格事由)が明文で規定されており、これは「法律の留保」に基づく正当な制限です。しかし、条例による制限については:

①条例が「法律の範囲内」(憲法94条・地自法14条1項)で制定されるためには、法律(公職選挙法・地方自治法)が条例による多選禁止を許容ないし授権していることが必要という見解(イの立場に近い・現行法に授権規定がないため無効とする)。

②被選挙権の制限は本質的に「法律」の専権事項であり条例では不可という見解。

③地方自治の本旨(憲法92条)に基づく自律的決定として、法律の明示的授権なく条例で長の多選を禁止することも「法律の範囲内」として許容されるという見解(アの立場に近い・条例で自由に定められるとする)。

この3つの立場が学説上対立しており、最高裁は多選禁止条例について明確な判断を示した事案がないため、「違憲・合憲」の確定した結論はありません(オの「既に違憲判決」が誤りの根拠)。

【徳島市公安条例事件との比較(エの正確性の根拠)】

地方公共団体の条例が国法(法律・政令)と「矛盾抵触するか」の判断について、徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10)は規定文言だけでなく趣旨・目的・効果を総合的に判断するとしています。多選禁止条例については、公職選挙法・地方自治法が長の就任回数について「制限しない」という態度をとっているのか、「地域の事情に応じた追加的制限を許容している」のかという趣旨・目的の解釈が決め手となります。この解釈が未確定である以上、「学説・実務上も議論がある」というエの表現が最も適切です。

【地方自治の本旨と条例制定権の限界の具体的適用】

多選禁止条例の問題は、地方自治の本旨(住民自治・団体自治)と国法による統一的規律という二つの価値の緊張関係を示しています。「地方公共団体が自らの首長の任期制限を住民意思で決定すること(住民自治の実現)」を支持する立場と、「国民の選挙権・被選挙権は法律レベルで統一的に保護すべき(国法による基本的人権保障)」という立場の衝突です。行政書士試験では、この問題の「確定的な正答が存在しない(判例未確立・学説対立)」という状況を正確に把握した上で、確定していない事柄を「断定的に述べた選択肢」が誤りになることを理解することが重要です。

【根拠条文】

日本国憲法 第15条(公務員の選定罷免権)、第92条(地方自治の本旨)、第94条(条例制定権)

地方自治法 第14条第1項(法律の範囲内の条例)、第19条(長の被選挙権要件)

公職選挙法 第10条・第11条(被選挙権の要件・制限)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第15条(公務員の選定罷免権・被選挙権)、第94条(条例制定権)、地方自治法 第14条第1項(条例の制定)、第19条(長の被選挙権) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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