行政法158行政法(行政事件訴訟法・国家賠償法)

行政書士 行政法 問158:行政法(行政事件訴訟法・国家賠償法)

取消訴訟と国家賠償請求訴訟の関係に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 行政処分が取消訴訟で取り消されていない限り、当該行政処分の公定力により、国家賠償請求訴訟の受訴裁判所は当該処分を有効・適法と判断しなければならない。すなわち、取消訴訟で処分を取り消すことなく国家賠償請求だけを提起することは認められない。
  • 国家賠償請求訴訟において、受訴裁判所は当該処分の違法性を独立に判断することができるため、取消訴訟で処分が取り消されていなくても、国家賠償請求訴訟において当該処分の違法性を認定し、損害賠償を命じることが可能である。正答
  • 取消訴訟と国家賠償請求訴訟は完全に独立した訴訟であり、取消訴訟で処分が適法と確定された場合(原告敗訴確定)であっても、国家賠償請求訴訟で改めて当該処分の違法性を主張することができる。
  • 行政処分が違法として取消訴訟で取り消された後に国家賠償請求を行う場合には、改めて国家賠償請求訴訟で当該処分の違法性を証明する必要はなく、取消判決の既判力によって当該処分の違法性が確定されている。
  • 最高裁判例は、取消訴訟の出訴期間を経過したため取消訴訟を提起できなくなった処分について、国家賠償請求訴訟で当該処分の違法性を主張することも認められないとする立場をとっている。
正答:国家賠償請求訴訟において、受訴裁判所は当該処分の違法性を独立に判断することができるため、取消訴訟で処分が取り消されていなくても、国家賠償請求訴訟において当該処分の違法性を認定し、損害賠償を命じることが可能である。

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イが正しい記述です。取消訴訟と国家賠償請求訴訟は独立した訴訟であり、最高裁(最判昭36.4.21等)は、取消訴訟で処分が取り消されていなくても、国家賠償請求訴訟において裁判所が当該処分の違法性を独自に判断し、損害賠償を命じることができるとしています(イ正しい)。アは「公定力があるため国賠訴訟単独提起は認められない」としていますが、公定力は取消訴訟における審判権の排他性(取消訴訟以外で処分の効力を否定できない)であって、国賠訴訟での違法性認定まで排除するものではありません(ア誤り)。ウは「取消訴訟で処分が適法と確定した後も国賠訴訟で違法性を主張できる」としていますが、取消訴訟で処分が適法と確定した場合の既判力が国賠訴訟に及ぶかという問題があり、一般的には及ぶとは言えませんが「完全に独立」という断定も正確ではありません。エは「取消判決の既判力で違法性が確定される」としていますが、既判力の客観的範囲(基準時・訴訟物)が国賠訴訟との関係で一致するかどうかは別途検討を要します。オは「出訴期間経過後は国賠訴訟でも違法性を主張できない」としていますが、判例はそのような立場をとっていません(オ誤り)。

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取消訴訟と国家賠償請求訴訟の関係(公定力の射程)を整理します。

公定力の意味: 行政処分には公定力(処分が違法であっても、取消訴訟・無効等確認訴訟で取り消されるまでは有効として扱われる効力)があります。この公定力は「処分の効力の有無を争う訴訟」(取消訴訟・抗告訴訟)の排他的管轄と関連します。

公定力は国賠訴訟の違法性判断に及ばない(イの根拠): 判例(最判昭36.4.21等)は、「国家賠償請求訴訟においては、裁判所は処分の違法性を独立に判断できる」とし、「取消訴訟で取り消されていないことは国賠訴訟の違法性認定の障害にならない」としています。公定力は処分の「効力の存否」に関わるものであり、国賠訴訟での「違法性の存否(損害賠償の要件)」は独立した問題です(アの誤りの根拠)。

ウの「完全に独立」の問題: 取消訴訟で処分が適法と確定した場合(原告の取消訴訟敗訴確定)と国賠訴訟の関係については、取消訴訟の判決の既判力が国賠訴訟に及ぶかという問題があります。一般論として取消訴訟の判決の既判力は「処分の効力の存否」についてのみ及び、「違法性の有無(国賠上の違法)」は訴訟物が異なるとも言えますが、事実上の矛盾回避という観点から影響する場合もあります。ウの「完全に独立で影響なし」という断定は問題あります。

オの誤り(出訴期間経過後も国賠訴訟可能): 取消訴訟の出訴期間(14条)を経過しても、国家賠償請求権は別途の消滅時効(国賠法4条・民法724条の3年または20年)が適用され、国賠訴訟での違法性主張は可能です(オ誤り)。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【公定力の理論的意義と国賠訴訟との関係】

行政処分の公定力は「処分が違法であっても、取消訴訟・無効等確認訴訟等によって取り消されるまでは一応有効として扱われる」という実体的効力です。この公定力の根拠については、①行政法規の自力執行力の確保、②法的安定性・第三者の信頼保護、③権限ある機関(行政裁判所・行政庁)による処分の適法性推定、という複数の説があります。重要なのは、公定力の効果は「処分の効力の有効性」(処分の形成的効力)に関わるものであり、「国家賠償訴訟における処分の違法性の判断」とは別の問題です。

【国賠法上の「違法」と取消訴訟の「違法」の異同】

取消訴訟における「違法」(処分が行政法規に違反すること)と、国家賠償法1条1項における「違法」(職務行為が国家賠償法上の違法に当たること)は、概念として重複する部分が多いですが、完全に同一ではありません。

最高裁は「国家賠償請求における違法の判断は取消訴訟の違法とは別個に判断される」という立場を基本的に示しています。例えば:

  • 取消訴訟では処分が法令に適合しているかという客観的適法性が問題になりますが、国賠法では職員の行為が「組織的・体制的な相当性」を欠くという相対的違法の判断も入り込みます(具体的損害発生の予見可能性、結果回避義務の存在等)。
  • 取消訴訟では処分の適法性が正面から問われますが、国賠では加害行為の「損害発生との相当因果関係」も要件です。

【アの誤り(公定力と国賠の独立性)の判例根拠】

最判昭和36年4月21日は、固定資産税の過大な課税(違法な行政処分)について、納税者は審査申立てや取消訴訟の手続を経ることなく、直接に国家賠償を請求することができると判示し、取消訴訟と国賠訴訟の独立性を認めました。さらに最判平成22年6月3日は、金銭を納付させる課税処分について、たとえ国賠請求を認めることが課税処分を取り消した場合と同様の経済的効果を生むとしても、あらかじめ取消し・無効確認の判決を得る必要はないと明確に判示しています。これらの判例により、①取消訴訟と国賠訴訟は独立して提起可能、②取消訴訟で処分が取り消されていなくても国賠訴訟で違法性を認定可能、という実務が確立しています。よってアの「公定力により国賠単独提起不可」は誤りです。

【エの問題点(取消判決の既判力と国賠訴訟)】

エは「取消判決の既判力によって違法性が確定される」としていますが、この点は理論上複雑です。取消判決の既判力(民事訴訟法114条1項の原則)は「訴訟物についての判断」のみに生じます。取消訴訟の訴訟物は「処分の取消し(処分の違法による形成的取消し)」であり、国賠訴訟の訴訟物は「不法行為に基づく損害賠償請求権」と異なります。したがって厳密には取消判決の既判力が国賠訴訟の違法性認定に直接及ぶとは言えません(違法性の認定については事実上の影響に留まる)。エの「既判力によって確定される」という断定は過剰です。

【試験対策:取消訴訟と国賠の関係の整理】

「公定力の射程=処分の効力(取消訴訟・抗告訴訟で問題)≠国賠の違法性(独立に判断可能)」「取消訴訟未提起でも国賠訴訟は可能」「出訴期間経過後も国賠請求可能(別途の消滅時効)」の3点を確実に理解することが行政書士試験では重要です。

【根拠条文・判例】

国家賠償法 第1条第1項(公権力の行使に基づく損害賠償)、第4条(時効・民法の準用)

行政事件訴訟法 第3条(取消訴訟)、第14条(出訴期間)

最判昭和36年4月21日(固定資産税の過大課税・取消訴訟を経ずに国賠請求可)

最判平成22年6月3日(課税処分につき取消し・無効確認を経ずに国賠で違法主張可)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第1条(公権力の行使に基づく損害賠償)、行政事件訴訟法 第3条(取消訴訟) 判例: 最判昭和36年4月21日(公定力と国賠訴訟の独立性)、最判平成22年6月3日(取消訴訟と国家賠償請求) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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行政事件訴訟法・取消訴訟と国家賠償請求の関係・公定力と違法性の承継頻出度A

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