行政法31行政手続法

行政書士 行政法 問31:行政手続法

行政手続法が定める行政指導に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 行政指導は、その根拠となる法律の規定がある場合にのみ行うことができ、法令上の根拠なく行政庁が行政指導をすることは行政手続法上許されない。
  • 行政指導に従わない場合であっても、そのことを理由として、行政庁は不利益な取扱いをしてはならないとされており、申請に関連した行政指導については、申請者が明示的に行政指導に従わない意思を表明した場合には、行政庁は直ちに申請に対する審査・応答をしなければならない。正答
  • 行政指導は事実上の協力を求めるものであり、これが国民の権利を侵害することはないため、行政手続法の適用対象に含まれていない。
  • 口頭で行われた行政指導であっても、相手方からの書面による行政指導の内容・責任者等の提示の求めに対しては、行政上特別の支障がない限り書面を交付しなければならない。
  • 複数の者に対して同一の内容の行政指導(行政指導の相手方が多数である場合)を行う場合、行政庁はあらかじめ行政指導指針を定め、かつ公にしておかなければならず、これを怠ると行政手続法違反となる。
正答:行政指導に従わない場合であっても、そのことを理由として、行政庁は不利益な取扱いをしてはならないとされており、申請に関連した行政指導については、申請者が明示的に行政指導に従わない意思を表明した場合には、行政庁は直ちに申請に対する審査・応答をしなければならない。

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行政手続法が定める行政指導の重要ルールを整理します。

イが正しい。 行手法32条2項は「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。さらに行手法33条は、申請に関連する行政指導について、申請者が「行政指導に従う意思がない旨を表明した場合」には「直ちに申請の審査を開始しなければならない」(応答義務)と定めています。

ア(誤): 行政指導は法律の根拠なしに行うことができます(任意の協力要請であるため)。ウ(誤): 行政手続法の適用対象に行政指導は含まれています(第4章: 32条〜36条の2)。エ(正): 口頭の行政指導について相手方から書面の交付を求められたら、行政上特別の支障がない限り交付義務があります(行手法35条3項)。オ(誤): 行政指導指針は「定め…公表しなければならない」(行手法36条)が、公表は「行政上特別の支障がない限り」という条件付きです。「これを怠ると当然に行政手続法違反」という断定(条件を無視した断定)が誤り。

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行政指導に関する行政手続法の規定体系:

| 条文 | 内容 |

|---|---|

| 32条 | 一般原則(任意性・不服従への不利益禁止) |

| 33条 | 申請に関連する行政指導(明示拒否への審査義務) |

| 34条 | 許認可等の権限に絡めた行政指導の禁止 |

| 35条 | 行政指導の方式(書面の要求) |

| 36条 | 複数の者に対する行政指導(行政指導指針) |

| 36条の2 | 行政指導の中止等の求め |

33条の詳細(イが正しい根拠):

行手法33条は「申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない」と定めています。明示的に拒否した後は直ちに審査に入らなければなりません。

行政指導指針(36条)の規律(オが誤りの根拠):

行手法36条は「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関はあらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない」と規定しています。指針の設定は義務、公表は「行政上特別の支障がない限り」という条件付きの義務です(努力義務ではありません)。オは「これを怠ると(当然に)行政手続法違反となる」と断定しますが、公表義務には「行政上特別の支障がない限り」という例外があり、この条件を無視した断定である点が誤りです。

口頭の行政指導と書面交付(エが正しい根拠):

行手法35条3項「行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前2項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない」。エの記述は正しいです(口頭指導後の書面交付義務は35条3項。なお35条2項は許認可権限を示して行う行政指導の場合に、根拠法令の条項等の明示を求める規定)。

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【理論的背景】

行政指導は、法律上の根拠を持たない(または持っても強制力のない)事実上の行為として、日本の行政実務で広く用いられてきました。その問題点は、事実上の圧力として機能し、相手方が拒否しにくい状況が生まれること(任意性の外観と事実上の強制)にあります。行政手続法は行政指導に関するルール(4章: 32条〜36条の2)を設けることで、透明性の確保と任意性の実質化を図っています。

34条(権限を背景にした行政指導の禁止)の重要性: 「行政庁は、行政指導に携わる者は、当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない」(32条1項の一般原則)に加え、34条は「許認可等の権限を有する者が、当該許認可等の申請をしようとする者に対し、許認可等の権限を背景に行政指導に従わせようとする場合」に実質的な強制となることを禁じています。

【実務・条文構造】

行政指導の中止等の求め(行手法36条の2・2015年改正で新設):

相手方が行政指導が行政手続法に反すると思料する場合、当該行政指導をした行政機関の長に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができます。これは行政指導への実質的な救済手段として機能します。ただし行政庁には中止の義務があるわけではなく、「必要な措置をとるよう求める」権利を相手方に与えるにとどまります。

行政指導と抗告訴訟の関係: 行政指導は原則として「処分」ではないため(任意的なもの)、抗告訴訟(取消訴訟・義務付け訴訟等)の対象とはなりません(処分性なし)。ただし判例は一部の行政指導に処分性を認める場合があります(例: 病院の開設中止勧告・最判平成17年7月15日)。これは行政指導と処分の境界が実務上難しい問題であることを示しています。

任意性の確保と事実上の強制の問題: 行政指導に従わなかった場合に不利益を受けることがある場合(例: 行政指導に従わないと許認可の審査が遅延する等の実態がある場合)、それは行手法32条2項違反となります。申請者が33条に基づき明示的拒否を表明した場合、行政庁は直ちに審査を開始する義務があります。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では「行政指導の任意性・不服従への不利益禁止(32条)」「申請に関連する行政指導(33条の明示拒否後の審査義務)」「口頭行政指導への書面交付義務(35条)」「行政指導指針(36条)」が頻出です。行政指導の「法的根拠不要」と「任意性の実質化(不利益禁止・書面交付等)」の両面を整理してください。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(誤): 行政指導は法律の根拠なしに行うことができます(任意の協力要請であるため)。行手法32条1項も「行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならない」という制限を課しますが、法律上の根拠を必須とはしていません。
  • イ(正): 行手法32条2項(不服従への不利益禁止)と33条(明示拒否後の審査義務)を組み合わせた正確な記述。
  • ウ(誤): 行政手続法第4章(32条〜36条の2)で行政指導について明示的に規定しています。行政指導も行政手続法の適用対象。
  • エ(正): 行手法35条3項のとおり。書面交付義務の要件は「相手方からの求め」+「行政上特別の支障がない限り」。
  • オ(誤): 行手法36条は指針の設定を義務、公表を「行政上特別の支障がない限り」公表しなければならないとします。「これを怠ると(当然に)行政手続法違反」という断定は、この条件(行政上特別の支障)を無視した誤りです。

【根拠条文】行政手続法 第32条(行政指導の一般原則)、第33条(申請に関連する行政指導)、第35条第3項(口頭の行政指導への書面交付義務)、第36条(複数の者に対する行政指導・行政指導指針)、第36条の2(行政指導の中止等の求め)

【補足】行政指導は法律の根拠不要。不服従への不利益禁止(32条2項)。明示拒否後は直ちに審査義務(33条)。口頭指導への書面交付義務(35条3項)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第32条(行政指導の一般原則)、第33条(申請に関連する行政指導)、第35条(行政指導の方式)、第36条(複数の者に対する行政指導)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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