行政法64申請型義務付け訴訟・非申請型義務付け訴訟の要件

行政書士 行政法 問64:申請型義務付け訴訟・非申請型義務付け訴訟の要件

行政事件訴訟法が定める義務付け訴訟に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 非申請型義務付け訴訟(いわゆる直接型義務付け訴訟)は、行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされていない場合において、「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があり、「かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がない」(補充性)ときに提起することができる。
  • 非申請型義務付け訴訟を提起するには、「行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者」でなければならない(原告適格)。
  • 申請型義務付け訴訟(行政庁に申請をした者が、拒否処分の取消しまたは不作為の違法確認とともに提起する訴訟)は、拒否処分の取消訴訟または不作為の違法確認訴訟と「併合して」提起しなければならない。
  • 申請型義務付け訴訟において勝訴した場合、裁判所は行政庁が申請に対してすべき「一定の処分」の内容まで特定して義務付け判決をしなければならない。正答
  • 非申請型義務付け訴訟は、申請に基づかず行政庁が自発的に行うべき処分(例:危険な建物への是正命令等)を求める訴訟であり、重大な損害と補充性の要件が課されている。
正答:申請型義務付け訴訟において勝訴した場合、裁判所は行政庁が申請に対してすべき「一定の処分」の内容まで特定して義務付け判決をしなければならない。

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エが誤りです。申請型義務付け訴訟(37条の3)で勝訴した場合、裁判所が命じるのは「行政庁が申請に対し相当の期間内に一定の処分をすべき旨を命ずる」判決です。「一定の処分」の内容を裁判所が特定するものではなく、行政庁が申請を認容すべき処分(申請に沿う内容の処分)を「すべき旨を命ずる」形となります。ただし、「一定の処分以外の処分をすることを命じてはならない」(37条の3第6項)という制限はあります。アは正しく(37条の2第1項)、非申請型の要件(重大な損害・補充性)を正確に示しています。イは正しく(37条の2第3項)。ウは正しく(37条の3第3項)、申請型は拒否処分取消訴訟または不作為違法確認訴訟との「併合提起」が必要です。オは正しく、非申請型の説明として正確です。

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義務付け訴訟の二類型の対比:

| 比較項目 | 非申請型(37条の2) | 申請型(37条の3) |

|---|---|---|

| 前提状況 | 申請なく行政庁が処分をすべきなのにしない | 申請があるのに拒否処分または不作為の状態 |

| 積極要件 | 重大な損害・補充性 | 取消訴訟または不作為違法確認訴訟の要件充足 |

| 原告適格 | 法律上の利益を有する者 | 申請をした者 |

| 訴訟形態 | 単独提起可 | 拒否処分取消or不作為違法確認と「併合」必須 |

| 典型例 | 近隣住民が危険建物への是正命令を求める | 許可申請を拒否された者が許可を求める |

申請型の判決内容(エが誤りの根拠・37条の3第6項): 申請型義務付け訴訟の認容判決は「申請に対して相当の期間内に一定の処分をすべき旨を命ずる」ものです。裁判所が処分の内容を「許可する」等と特定するわけではありません(行政庁の第一次的判断権の尊重)。処分の内容は行政庁が改めて判断するものであり、裁判所はその処分を「すべき旨」を命じるにとどまります。

非申請型の要件(ア・オが正しい根拠・37条の2):

  • 「重大な損害を生ずるおそれ」(37条の2第1項・損害の重大性)
  • 「他に適当な方法がない」補充性(37条の2第1項・補充性)
  • 原告適格:「法律上の利益を有する者」(37条の2第3項)
  • 損害の重大性判断(37条の2第2項):損害の回復困難性・内容・程度等を考慮
上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【義務付け訴訟の2004年法定化の意義】

2004年改正前は義務付け訴訟が法定されておらず、学説・判例では「無名抗告訴訟(法定外の抗告訴訟)としての義務付けの訴え」の可否が論じられていました。一部の下級審は義務付けの訴えを認めましたが、最高裁は明確な肯定判断を示しておらず、制度的不安定さがありました。2004年改正で申請型(37条の3)と非申請型(37条の2)が法定化されたことにより:

1. 申請者が申請認容処分を直接命じるよう求める訴訟が明確に可能に

2. 第三者(近隣住民等)が行政庁に特定の処分(是正命令等)をさせる訴訟が明確に可能に

3. 不作為違法確認訴訟(違法確認のみ)より実効的な救済が制度的に確保された

【申請型義務付け訴訟の手続詳細(37条の3)】

申請型の要件(37条の3第1項):

  • 第1号:法令に基づく申請・審査請求について、当該行政庁が「相当の期間内」に処分または裁決をしない場合(不作為)
  • 第2号:法令に基づく申請・審査請求について、行政庁が拒否処分または棄却裁決をした場合

第1号(不作為型)の場合→不作為の違法確認訴訟と併合して提起(37条の3第3項第1号)

第2号(拒否処分型)の場合→取消訴訟または無効等確認訴訟と併合して提起(37条の3第3項第2号)

判決の要件(勝訴要件・37条の3第5項):

1. 取消訴訟(または無効確認訴訟・不作為違法確認訴訟)の各本案勝訴要件を充たすこと

2. かつ「行政庁がその処分もしくは裁決をすべきであることがその処分もしくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるまたは行政庁がその処分もしくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超えもしくはその濫用となると認められるとき」

このうち2番目の要件(「明らかに処分すべき」または「裁量逸脱・濫用」)が実質的な障壁となります。行政庁の第一次的判断権(裁量)を尊重するため、裁判所が義務付け判決を出すには高度の確信が必要です。

エの誤りの詳細(37条の3第6項):義務付けの訴えに係る判決においては、裁判所は行政庁が「一定の処分または裁決をすべき旨を命ずる」ものとし、それ「以外の処分または裁決をすることを命じてはならない」と規定されています。「一定の処分」は申請に沿う処分の「類型・種類」を指すものであり、具体的な処分内容(「月◯万円の生活保護費を支給せよ」等)を裁判所が特定する権限はありません(行政の第一次的判断権)。

【非申請型義務付け訴訟の実務例】

非申請型(37条の2)の典型的な活用場面:

1. 近隣住民が建築基準法上の違反建築物の是正命令(除却命令・使用禁止命令等)を行政庁に義務付けることを求める訴訟

2. 環境法令上の操業停止命令・改善命令を出すよう求める訴訟

3. 第三者が危険な製品の製造禁止命令を求める訴訟

重大な損害の要件(37条の2第2項):損害の回復困難性・内容・性質・程度を考慮。金銭的損害でも「回復困難」「身体・生命の安全に関わる」場合は重大な損害と認定されやすい。

補充性(37条の2第1項):「他に適当な方法がない」という要件は、義務付け訴訟による救済が唯一の実効的手段であることを意味します。例えば、民事仮処分で代替できる場合は補充性なし。

【仮の義務付けとの接続(37条の5)】

義務付け訴訟を提起した場合に、判決確定まで待てない緊急の場面では「仮の義務付け」(37条の5第1項)を申立てることができます。要件は「本案について理由があるとみえ」「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり」「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない」こと(執行停止より厳格な要件)。仮の義務付けは本案の義務付け訴訟と同時または提起後に申立てます。内閣総理大臣の異議(27条)は仮の義務付けにも準用されます(37条の5第4項)。

【根拠条文】

行政事件訴訟法 第37条の2(非申請型義務付け訴訟の要件・原告適格・補充性)、第37条の3第1項(申請型義務付け訴訟の適用場面)、第37条の3第3項(併合提起の義務)、第37条の3第5項(勝訴要件)、第37条の3第6項(判決内容:一定の処分をすべき旨を命じる)、第37条の5(仮の義務付け)

【補足】

申請型義務付けの判決は「一定の処分をすべき旨を命じる」(処分内容まで特定しない・行政の第一次的判断権の尊重)。非申請型は「重大な損害+補充性」が二大要件。申請型は「拒否処分取消訴訟または不作為違法確認訴訟との併合提起」が必須。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政事件訴訟法 第37条の2(非申請型義務付け訴訟)・第37条の3(申請型義務付け訴訟) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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