行政書士 行政法 問71:行政不服審査法・審査請求の取下げ・審理手続の終結
行政不服審査法が定める審査請求の取下げおよび審理手続の終結に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア審査請求人は、裁決があるまでの間はいつでも審査請求を取り下げることができるが、取下げには審理員の許可が必要である。
- イ審査請求の取下げは、書面による必要があり、口頭で取り下げることはできない。
- ウ審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結し、審理員意見書を作成することができる。また、審査請求人が正当な理由なく出頭せず、または弁明書等を提出しないときも、相当の期間を定めた後に審理を終結することができる。正答
- エ審理手続が終結した後は、審査請求人は新たな証拠の提出を申し出ることができず、そのような申出は一切審理に反映されない。
- オ審査請求の取下げがあった場合、当該審査請求に係る裁決はなされず、審査請求がなかったものとみなされる。ただし、取下げ後も処分庁による当該処分の取消し・変更は妨げられない。
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ウが正しいです。行審法41条1項は、審理員は必要な審理を終えたと認めるときに審理手続を終結できると定めています。また41条2項は、審査請求人が正当な理由なく出頭せず、または弁明書等の書類を提出しないときには、相当の期間を指定した後に審理手続を終結することができると定めています。アは誤りで、審査請求の取下げは書面で行えばよく(27条1項)、審理員の許可は不要です。イは正しい内容で(27条1項は書面による取下げを規定)、ただしウの方がより核心的な設問のポイントです。エは誤りで、審理手続終結後でも例外的に追加審理が行われる場合があります(審理員の判断による)。オは概ね正しいですが条文との精密な対応確認が必要です。
審理手続の終結(41条・ウが正しいの根拠):
41条1項(通常終結):審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結します。審理員が「審理が尽くされた」と判断した時点で手続が終わります。
41条2項(例外的終結):審査請求人が、正当な理由なく①出頭すべき期日に出頭しない、②弁明書その他審理員が提出を求めた書類等を提出しない等の場合、審理員は相当の期間を指定した上で、その期間内に是正がなければ審理を終結することができます(失権的効果)。
審査請求の取下げ(27条):
- 書面による取下げ(27条1項):審査請求の取下げは書面でしなければならない(イが正しい根拠)。
- 取下げの時期:裁決があるまでの間はいつでも可能(27条1項)。
- 審理員の許可不要(アが誤りの根拠):取下げに審理員の許可は不要。ただし、取下げには「審査庁への届出」の形式をとります(審査庁が受領)。
- 総代制がある場合(27条2項):総代が全員で取り下げる必要がある(一部の総代のみでは不可)。
エの誤り(審理手続終結後の追加審理): 審理手続が終結した後でも、審理員の判断により追加の審理(物件の提出要求・参考人陳述の求め等)が行われる可能性があります。「一切審理に反映されない」という断言は誤りです。
【審理手続の段取り全体(審査請求開始から審理員意見書まで)】
行審法上の審理手続の流れを整理します。
段階1(審査請求書の受付・形式審査):審査庁が審査請求書を受け付け、形式的な要件(期間・資格等)を確認。不備があれば補正を求めます(23条)。
段階2(審理員の指名):審査庁が処分非関与の職員を審理員として指名します(9条)。
段階3(弁明書・反論書等の交換):審理員が処分庁に弁明書の提出を求め(29条)、弁明書を審査請求人・参加人に送付(29条5項)、審査請求人は反論書を提出できます(30条)。
段階4(証拠調べ・意見陳述):審理員が物件提出要求・参考人陳述・検証・質問等の証拠調べを行い(33条〜36条)、申立てがあれば口頭意見陳述の機会を付与します(31条)。
段階5(審理手続の終結):審理員が審理の終結を決定します(41条・ウの根拠)。
段階6(審理員意見書の作成・提出):審理員が審理員意見書を作成して審査庁に提出します(42条)。
段階7(行政不服審査会への諮問・答申):審査庁が行政不服審査会等に諮問し(43条)、答申を受け取ります。
段階8(裁決):審査庁が答申を参考にしながら裁決を行います(44条〜52条)。
【取下げの法的効果(27条)】
取下げがあった場合の法的効果:
- 審査請求が最初から存在しなかったものとして扱われます(手続の溯及的消滅)。
- 取下げ後、同一の処分について再度審査請求することは可能ですが、審査請求期間(18条)を徒過している場合は不可となります。
- 取下げによって処分庁が処分を取り消す・変更する義務は生じません(処分庁の任意による取消し・変更を妨げないが強制はしない)。
取下げの戦略的意義:審査請求人が審理の進行中に新たな証拠を入手した場合や、和解的解決が見込まれる場合に、一旦取り下げて改めて申立てるという戦略が考えられます。ただし期間制限(18条)の問題があるため慎重な判断が必要です。
【失権的終結の意義(41条2項・ウの第二部分)】
審査請求人が正当な理由なく出頭しない・書類を提出しない場合の失権的終結(41条2項)は、審査請求手続を無限に引き延ばすことで実質的に審理を妨害する行為を防止するための規定です。「相当の期間を指定した上で」という要件は、審査請求人に最後の機会を与えることを意味します。相当の期間を経過しても是正がなければ、審理員は審理を終結できます(強制的終結)。
この失権的終結の制度は、行訴法における口頭弁論期日への不出頭(欠席判決・民訴319条等の準用)とパラレルな仕組みです。ただし審理員意見書の作成義務(42条)は失権的終結後も維持されます。
【審理手続終結後の取扱い(エの詳細)】
エが誤りとされる根拠:審理手続の終結後に新たな証拠や主張が出てきた場合、審理員は必要があると判断すれば審理を再開することができます(明文規定はないが解釈上可能)。また審査庁(審理員意見書を受け取った後)が行政不服審査会への諮問段階で、答申に際して審査会が追加調査を行う場合もあります(74条〜76条)。したがって「審理手続終結後は一切審理に反映されない」は過度に厳格な断言であり誤りです。
【根拠条文】
行政不服審査法 第27条第1項(審査請求の取下げ:書面・裁決前いつでも可・審理員許可不要)、第41条第1項(審理手続の通常終結:必要な審理を終えたと認めるとき)、第41条第2項(失権的終結:出頭せず・書類提出しない場合の相当期間経過後の終結)
【補足】
取下げは「書面・裁決前いつでも可・審理員許可不要」。審理手続終結は①必要な審理を終えた(通常・41条1項)と②正当な理由なく出頭・書類提出しない(失権的・41条2項)の二パターン。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政不服審査法 第27条(審査請求の取下げ)・第41条(審理手続の終結) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。