行政法82国賠法2条・営造物の設置管理の瑕疵・無過失責任

行政書士 行政法 問82:国賠法2条・営造物の設置管理の瑕疵・無過失責任

国家賠償法第2条第1項に定める営造物の設置または管理の瑕疵に基づく損害賠償責任に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 国賠法2条の責任は、営造物の管理者が損害防止のために相当の注意を尽くしたことを証明した場合には免責されるため、1条と同様に過失を要件とする過失責任である。
  • 「公の営造物」とは、国または公共団体が公用・公共用に供している有体物をいい、動産・不動産の別を問わないが、自然公物(河川・海岸等)は人工的要素を持たないため「公の営造物」には含まれない。
  • 営造物の設置・管理の「瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、設置・管理に関与した者の故意・過失は要件とされない(無過失責任)とするのが判例・通説の立場である。正答
  • 道路管理者が、落石の危険について事前に認識可能であった場合であっても、危険防止のための工事を実施するための予算が不足していたため工事が遅れていたとき、当該落石により損害が発生しても不可抗力として損害賠償責任を負わない。
  • 国賠法2条は「営造物の設置または管理の瑕疵」を要件とするため、河川の管理の瑕疵について責任を問う場合には、国賠法2条ではなく、河川法等の個別法に損害賠償規定を設けなければ責任を追及できない。
正答:営造物の設置・管理の「瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、設置・管理に関与した者の故意・過失は要件とされない(無過失責任)とするのが判例・通説の立場である。

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ウが正しい記述です。国賠法2条の営造物責任の最大の特徴は、「過失」を要件としない無過失責任である点です。「瑕疵」とは「営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態」をいい、管理者が注意を尽くしたかどうかとは無関係です(アが誤りの根拠)。有名な高知落石事件(最判昭和45年8月20日)では、県道上に落石があり通行車が損害を受けた事案において、道路管理の瑕疵を認定し、予算不足を理由とした免責を否定しました(エが誤りの根拠)。イは「自然公物は含まれない」としていますが、河川・海岸等の自然公物も管理の対象として「公の営造物」に含まれると解されています。オは「河川法等の個別法が必要」としていますが、国賠法2条が直接適用されます。

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国賠法2条の特徴を整理します。無過失責任: 過失の有無にかかわらず「瑕疵」(通常有すべき安全性の欠如)があれば責任が成立します(ウが正しい・アが誤り)。これが1条(過失責任)との最大の違いです。被害者は「瑕疵の存在」と「損害との因果関係」を立証すれば足り、管理者の過失を立証する必要はありません。

「公の営造物」の範囲: 国・公共団体が設置・管理する公用・公共用有体物を広く含みます。道路・橋梁・学校・公園(不動産系)のほか、パトカー・消防車・官用車(動産系)、そして河川・海岸・港湾等の自然公物も含まれます(イが誤りの根拠)。自然公物についても国・公共団体が管理する以上、2条の責任が問題となります。ただし、自然公物については整備・管理の財政的・技術的限界が考慮され(大東水害訴訟・最判昭59.1.26)、道路等の人工公物よりも瑕疵の認定が緩やかになる傾向があります。

予算不足は免責事由にならない: 高知落石事件(最判昭45.8.20)は、道路管理者が落石の危険を知りながら予算の制約から防護工事を実施できなかった事案で、管理の瑕疵を認定し損害賠償責任を肯定しました(エが誤りの根拠)。予算不足・財政的困難は2条の免責事由とはなりません。

オは「個別法の規定が必要」としていますが、国賠法2条は一般規定として直接適用されます。

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【理論的背景】

国賠法2条は、フランス法系の無過失責任理論(危険責任・公の営造物から生じるリスクを管理者が負担する)を採用しています。過失責任(1条)と並べて無過失責任(2条)を設けた理由は、営造物は常時多数の公衆が利用するものであり、管理者の過失を被害者が立証することが困難であることと、国・公共団体という組織が管理する以上、特定の担当者の過失を問うのではなく組織としての管理状態(客観的な安全性)を問う方が合理的である、という立法政策的判断によります。

【実務・条文構造】

「瑕疵」の意義は「当該営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態」(客観的・物的状態)です。判例(最判昭45.8.20・高知落石事件)はこれを確立しました。瑕疵の判断における「予算不足」の位置づけが重要な論点です。同判決は、危険な状態を認識しながら財政的制約を理由に放置した場合の管理の瑕疵を認定し、「予算の制約から工事を実施できなかった」という主張を退けました。自然公物(河川・海岸)については、大東水害訴訟(最判昭59.1.26)が「河川管理の瑕疵」の判断において、整備の推移・整備状況・改修工事の財政的・技術的制約等を総合的に考慮する「過渡的安全性」の概念を導入し、道路等の人工公物と異なる判断枠組みを適用しています。これにより河川管理においては、同レベルの危険でも人工公物よりも瑕疵が認定されにくい傾向があります。

【試験での位置づけ】

国賠法2条は行政書士試験の頻出論点です。「無過失責任(過失不要)」「瑕疵=通常有すべき安全性の欠如」「予算不足は免責事由でない(高知落石)」「自然公物も対象(河川管理は過渡的安全性の考慮あり・大東水害)」の4点が核心です。また「1条(過失責任)と2条(無過失責任)の適用区分」も問われます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(誤): 「相当の注意を尽くしたことで免責」は過失責任(1条)的な構造。2条は無過失責任であり、管理者が注意を尽くしたことの証明では免責されません。
  • イ(誤): 河川・海岸等の自然公物も国・公共団体が管理主体となる「公の営造物」に含まれます。大東水害訴訟(昭59.1.26)は河川管理の瑕疵をまさに2条で論じた判例です。
  • ウ(正): 無過失責任としての2条の正確な説明。「通常有すべき安全性を欠いている」状態(瑕疵の客観的定義)と「故意・過失不要(無過失責任)」の両方が正確に記述されています。
  • エ(誤): 高知落石事件(最判昭45.8.20)が明確に否定した主張。予算不足は瑕疵の存在を否定せず、免責事由にならない。危険を認識しながら財政的理由で放置した場合は管理の瑕疵が認定されます。
  • オ(誤): 国賠法2条は一般規定として直接適用されます。河川法等の個別法に損害賠償規定がなくても2条で請求できます。

【根拠条文】

国家賠償法 第2条第1項(公の営造物の設置又は管理の瑕疵による損害賠償)

【参照判例】

高知落石事件(最判 昭和45年8月20日・道路管理の瑕疵・無過失責任・予算不足は免責事由でない)、大東水害訴訟(最判 昭和59年1月26日・河川管理の瑕疵・過渡的安全性)

【補足】

「2条=無過失責任(過失不要)」「瑕疵=通常有すべき安全性の欠如」「予算不足は免責事由でない」の3点セットが最重要暗記事項。自然公物(河川)は2条の対象だが過渡的安全性の考慮あり。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第2条第1項 判例: 高知落石事件(最判昭和45年8月20日)、大東水害訴訟(最判昭和59年1月26日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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