行政書士 一般知識 問36:情報通信・個人情報保護
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)における不開示情報の類型に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国もしくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ等がある情報は不開示情報とされる。
- イ公にすることにより、犯罪の予防・鎮圧・捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は不開示情報とされる。
- ウ法人その他の団体に関する情報または事業を営む個人の当該事業に関する情報で、公にすることにより当該法人等の正当な利益を害するおそれがあるものは不開示情報とされるが、人の生命・健康・生活・財産を保護するために公にすることが必要な情報については公開が優先される。
- エ国の機関、独立行政法人等、地方公共団体および地方独立行政法人が行う事務・事業に関する情報で、公にすることにより当該事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものは、その支障の程度や性質を問わず一律に不開示情報とされる。正答
- オ開示請求があった行政文書に不開示情報が含まれている場合でも、不開示情報に該当する部分を除いて開示することができる「部分開示」の制度が設けられている。
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正答(誤り)はエです。5条6号の「事務・事業に関する情報」は「支障を及ぼすおそれがあるもの」という要件が付いており、単に関連するだけで一律に不開示となるわけではありません。「支障を及ぼすおそれ」の有無を個別に判断する必要があり、「支障の程度や性質を問わず一律に不開示」とするエは誤りです。ア(正):国家安全情報(5条3号)の正確な説明です。イ(正):公共安全情報(5条4号)の正確な説明です。ウ(正):法人情報(5条2号)は一般に不開示とされますが、人の生命・健康・生活・財産保護のために公にする必要がある情報については公開が優先されます(5条2号但書イ)。これは食品安全・製品欠陥等の情報が典型例です。オ(正):部分開示は6条1項に明記されています。
エが誤りです。5条6号の「公にすることにより、当該行政機関又は独立行政法人等の事務若しくは事業の性質上、当該事務若しくは事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」という規定は、「支障を及ぼすおそれ」という具体的・個別的な要件充足が必要です。したがって「支障の程度や性質を問わず一律不開示」とするエは誤りです。不開示情報の六類型は5条各号に定められています:①個人情報(1号)、②法人等情報(2号)、③国家安全等情報(3号)、④公共安全等情報(4号)、⑤審議・検討等情報(5号)、⑥事務・事業情報(6号)。各号とも「おそれがある」「支障を及ぼすおそれ」等の要件を満たした場合にのみ不開示となる「枚挙的不開示事由」であり、当該情報に該当するかどうかは行政機関が個別に判断します。部分開示(6条)は不開示部分と開示可能部分が分離できる場合に不開示部分を除いて開示する制度で、開示の最大化を図る趣旨です。
【行政機関情報公開法の不開示情報規定の構造】
行政機関情報公開法5条は「不開示情報」を六号列挙しており、これらに該当しない限り原則開示という構造(開示原則・不開示例外)を採っています。各号は「おそれがあるもの」「支障を及ぼすおそれがあるもの」という形で、具体的な弊害発生の蓋然性を要件としています。この「おそれ」の判断は、行政機関が裁量的に行うものではなく、情報の客観的性質・内容から判断される(裁量を排除した客観的判断)というのが学説・判例の理解です。行政機関が不開示決定を行う際には、当該号の要件に該当することを具体的に示す「理由付記」が必要です(9条2項・行手法8条準用の趣旨)。
【各不開示事由の精緻な検討】
①個人情報(5条1号):特定の個人を識別できる情報または識別できないが公にすることで個人の権利利益を害するおそれがある情報。個人情報保護法の適用対象と重なりますが、行政機関が保有する情報については本条が適用されます(2022年改正前は行政機関個人情報保護法が別途適用・現在は個人情報保護法に統合)。②法人等情報(5条2号):法人・事業者の競争上・信用上の地位を害するおそれがある情報ですが、但書で「人の生命・健康・生活・財産を保護するために公にすることが必要と認められる情報」は開示されます(食品安全・消費者保護との緊張関係)。③国家安全情報(5条3号):外交・防衛・インテリジェンスに関する情報で不開示の要件が最も厳格に読まれる類型。④公共安全情報(5条4号):犯罪予防・捜査等に支障のある情報。⑤審議・検討等情報(5条5号):行政機関内部の審議・検討・協議中の情報で、意思形成過程の保護を目的とします。⑥事務・事業情報(5条6号):本問で論点となったエの類型。
【部分開示と「不開示情報の分離可能性」の実務的判断】
6条1項の部分開示は「開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」と規定しています。「容易に区分」できるかの判断は、①物理的・技術的に分離可能か(特定の段落・図表・氏名等のマスキングが可能か)、②分離後も残部が意味ある情報として読めるかという観点で行われます。また6条2項は「部分開示をする場合において、当該部分を除いた部分のみでは開示請求者に対して当該行政文書の意味内容が理解されないおそれがある場合には、当該部分の趣旨を明らかにしなければならない」と定め、趣旨説明義務を課しています。情報公開の実務では、担当者の氏名・連絡先等の個人情報部分をマスキングして開示するケースが典型的な部分開示の場面です。
【上位資格・実務への接続】
行政書士は依頼人の代理として行政機関情報公開法に基づく開示請求を行う業務(いわゆる「情報公開代理請求」)を担います。不開示決定に対する審査請求・情報公開・個人情報保護審査会への諮問手続についても把握しておくことが実務上重要です(16条〜18条)。また地方公共団体の情報公開条例は各自治体で制定されており、不開示事由が国の法律より広い場合・狭い場合があります。情報公開制度は民主主義・説明責任の基盤となる制度であり、行政書士として「市民の知る権利の代弁者」としての役割を果たす場面でもあります。
【根拠条文】
行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第5条各号(不開示情報の類型)・第6条(部分開示)
【補足】
不開示情報の六類型は「おそれ」要件が必要で一律不開示ではない(5条各号)。但書による優先開示(人の生命・健康等:5条2号但書イ)も重要。部分開示(6条)は開示最大化の実施手段。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第5条(不開示情報)各号・第6条(部分開示) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。