行政書士 一般知識 問37:情報通信・個人情報保護
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行政機関情報公開法)の開示請求に対する決定手続に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政機関の長は、開示請求を受けた日から原則として60日以内に開示決定等をしなければならず、この期間は事務処理上の困難等を理由として延長することは一切できない。
- イ行政機関の長は、開示請求に係る行政文書を保有していない場合、その旨を開示請求者に通知して請求に対する手続を終了させることができる。
- ウ開示請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで不開示情報を開示することになる場合、行政機関の長は当該行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができる。正答
- エ第三者に関する情報が記録された行政文書の開示請求があった場合、当該第三者の同意がなければ行政機関の長は開示決定をすることができない。
- オ開示請求者が開示決定に不服がある場合、直ちに取消訴訟を提起しなければならず、審査請求を経ることは認められていない。
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正答はウです。行政文書の存在・不存在を答えるだけで不開示情報を開示することになる場合(例:秘密捜査の対象者が「自分についての捜査記録は存在するか」と請求した場合)、行政機関は存否を明らかにせずに拒否できます(8条・いわゆる「グローマー拒否」)。ア(誤):開示決定の期限は原則として30日以内(10条1項)です。60日ではありません。また「事務処理上の困難」等を理由に30日間を限度として延長できます(10条2項)。イ(誤):文書を保有していない場合は不開示決定としてその旨を書面で通知します(9条2項は「行政文書を保有していないときを含む」として不開示決定の通知を定める)。「手続を終了させることができる」という記述は不正確で、保有していない旨を理由とした不開示決定(通知)を要します。エ(誤):第三者には意見書提出の機会が与えられます(13条)が、第三者の同意がない場合でも開示できる(反対意見があっても開示決定が可能)です。オ(誤):情報公開・個人情報保護審査会への諮問を経た審査請求も認められています(18条・19条)。
ウが正答です。8条(行政文書の存否に関する情報)は「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる」と定めています。これは「グローマー拒否」(Glomarization)と呼ばれる概念で、米国の情報公開法(FOIA)の判例から派生した概念です。ア(誤):10条1項は「開示請求があった日から30日以内」に決定をしなければならないと定めています(60日ではない)。10条2項は事務処理上の困難等を理由に「30日以内に限り延長」できると定めています。延長が全くできないとするアは誤りです。エ(誤):13条は第三者への意見書提出機会の付与を規定しますが、第三者が反対意見を述べても開示を妨げる効力はありません。開示するかどうかは行政機関が不開示事由に該当するかどうかで判断します。オ(誤):開示決定等に不服がある場合、審査請求(行政不服申立て)または取消訴訟のいずれも選択できます。審査請求があったときは原則として情報公開・個人情報保護審査会への諮問を経ます(18条・19条)。
【グローマー拒否の理論的根拠と実務的意義】
行政機関情報公開法8条のグローマー拒否(存否応答拒否)は、米国の「Phillippi v. CIA事件」(連邦控訴裁判所1976年判決。沈没したソ連潜水艦の秘密引き揚げ作戦に用いられた船グローマー・エクスプローラー号に関する情報公開請求で、CIAが「その文書は存在するとも存在しないとも答えられない」と拒否した事案)に由来する概念です。日本法での典型的な適用場面は①公安・捜査に関する情報(対象者が「自分の捜査記録の有無」を問う場合)、②外交・情報機関の活動に関する情報です。グローマー拒否が認められる要件は「存否を答えるだけで不開示情報を開示することになる場合」であり、単に「秘密だから」ではなく、存否への回答それ自体が5条の不開示情報に該当する場合に限られます。
【開示決定の期限と延長の規律(10条)】
10条1項の30日以内という期限は、迅速な情報公開を確保するための基準です。10条2項の「延長」は事務処理上の困難その他正当な理由がある場合が想定されており、延長する場合は延長後の期限と延長の理由を書面で通知する義務があります(10条2項後段)。また著しく大量の文書を対象とする場合は、相当の部分につき期限内に決定し、残りを相当の期間内に決定すれば足りる特例(11条)もあります。ただし「困難でもなく大量でもない通常案件で正当理由なく延長」することは違法となりえます。
【第三者の意見書提出手続と開示決定の関係(13条)】
13条は、開示請求に係る行政文書に「第三者に関する情報」が含まれている場合の手続を定めます。①第三者が特定できる場合は意見書提出の機会を与えることができる(任意的意見聴取:13条1項)、②当該情報が特定第三者の利益を著しく害するおそれがある場合は開示前に意見書提出機会を与えなければならない(必要的意見聴取:13条2項)です。ただし第三者が「開示すべきでない」と意見を述べても、それは行政機関の判断を拘束しません(反対意見は参考情報に過ぎない)。第三者が開示決定に不服な場合は、第三者自身が審査請求・取消訴訟で争うことができます(15条2項参照)。
【不服申立て手続:情報公開・個人情報保護審査会(18条・19条)】
開示決定等に対する審査請求については、行政不服審査法の原則に従い行政機関の長に対して審査請求ができます。開示決定等または開示請求に係る不作為について審査請求があったときは、裁決をすべき行政機関の長は、情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならないことが原則です(18条)。19条は諮問をした旨を審査請求人・参加人等に通知する義務を定めています。同審査会は独立した第三者機関として、インカメラ審理(不開示文書を実際に確認して判断する審理方式)が可能であり、行政機関が「開示できない」と主張する文書の内容を秘密保持のうえで確認できます。これにより開示拒否の適否について実効的な審査が可能となります。行政書士として依頼人の不服申立て代理業務を行う際に重要な手続的知識です。
【根拠条文】
行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第8条(存否応答拒否:グローマー拒否)・第9条(開示決定等の通知・文書不存在を含む不開示決定)・第10条(開示決定の期限・延長)・第13条(第三者への意見書提出)・第18条(審査会への諮問)・第19条(諮問した旨の通知)
【補足】
決定期限は30日(10条1項)・延長は30日以内可(10条2項)。グローマー拒否(8条)は「存否を答えるだけで不開示情報を開示することとなる場合」に限定。第三者の反対意見は開示を妨げない(13条)。審査請求があったときは原則として情報公開・個人情報保護審査会へ諮問(18条)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第10条(開示決定等の期限・延長)・第13条(第三者への意見書提出機会)・第8条(存否応答拒否:グローマー拒否)・第9条(開示決定等の通知・文書不存在を含む不開示決定) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。