行政書士 一般知識 問40:諸法令・行政書士法
行政書士に対する懲戒に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政書士に対する懲戒は、戒告・業務停止・業務禁止の3種類であり、行政書士会の会長が処分権者となる。
- イ都道府県知事は、行政書士が行政書士法またはこれに基づく命令に違反した場合に、戒告・2年以内の業務停止・業務禁止の懲戒処分を行うことができる。正答
- ウ行政書士に対して業務禁止の懲戒処分を行う場合、都道府県知事は行政手続法に基づく聴聞の手続をとる必要はなく、書面による弁明の機会付与で足りる。
- エ行政書士に対する懲戒事由は行政書士法・命令への違反のみであり、行政書士の品位を損なう行為については懲戒の対象とならない。
- オ懲戒処分により業務の禁止の処分を受けた行政書士は、当該処分の日から2年間は行政書士となる資格を有しない欠格事由が生じる。
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正答はイです。都道府県知事は行政書士に対し、①戒告、②2年以内の業務の停止、③業務の禁止の3種類の懲戒処分を行うことができます(14条)。「登録取消し」ではなく「業務の禁止」が正式名称である点に注意してください。ア(誤):懲戒処分を行うのは行政書士会の会長ではなく都道府県知事です(14条柱書)。懲戒の種類(戒告・業務停止・業務禁止)の記述は正しいですが、処分権者を「行政書士会の会長」とする点が誤りです。ウ(誤):業務禁止の懲戒処分は重大な不利益処分であるため、行政手続法に基づく聴聞の手続が必要です(14条の3:「第14条第2号(業務停止)又は第3号(業務禁止)の処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならない」)。書面による弁明の機会付与では足りません。エ(誤):「行政書士たるにふさわしくない重大な非行」(品位を損なう行為等)も懲戒事由に含まれます(14条柱書)。オ(誤):業務禁止処分を受けた者は「当該処分の日から3年を経過しない者」が欠格事由となります(2条の2第6号)。「2年間」は誤りで、正しくは3年です。なお登録取消し処分を受けた者の欠格も「処分の日から3年」です(2条の2第5号)。
イが正答です。14条は「都道府県知事は、行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があつたときは、次に掲げる処分をすることができる」として、①戒告、②2年以内の業務の停止、③業務の禁止を定めています。処分権者は都道府県知事です(行政書士会長ではない)。ア(誤):懲戒の3種類(戒告・業務停止・業務禁止)の記述自体は正しいですが、処分権者を「行政書士会の会長」とする点が誤りです。正しくは都道府県知事です。ウ(誤):14条の3は、業務停止(14条2号)・業務禁止(14条3号)の処分をしようとするときは聴聞を行わなければならないと定めています。書面による弁明の機会付与では足りず、聴聞手続が必要です。エ(誤):14条柱書は「行政書士たるにふさわしくない重大な非行」を懲戒事由として明記しており、品位を傷つける行為も含まれます。オ(誤):業務禁止処分を受けた者の欠格期間は処分の日から3年であり(2条の2第6号)、「2年間」は誤りです。
【行政書士懲戒制度の全体像と行政手続との関係】
行政書士の懲戒は都道府県知事による「不利益処分」(行政手続法2条4号)であり、適法な不利益処分の手続要件として行政手続法が適用されます。業務停止・業務禁止は特に重大な不利益処分であるため、行政書士法14条の3の直接規定に基づいて聴聞手続が必要です(同条は「第14条第2号又は第3号の処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならない」と定める)。聴聞手続の流れは、①聴聞通知(当事者への開始通知・聴聞期日の1週間前まで)、②聴聞期日における陳述・証拠提出の機会付与(審理は公開)、③聴聞主宰者による調書・報告書作成、④処分権者による決定という段階を踏みます。一方、戒告については聴聞ではなく「弁明の機会の付与」(行手法13条1項2号)で足ります。業務停止・業務禁止の重大処分でのみ聴聞が必要です。
【懲戒事由の詳細(14条)】
14条柱書が規定する懲戒事由は、①この法律もしくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき(法令違反型)、②行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったとき(品位非行型)です。品位非行型は「行政書士たるにふさわしくない」という要件から、業務外の行為であっても行政書士としての社会的信頼・品位を著しく損なう行為が含まれます。例えば業務に無関係な詐欺・横領等の犯罪行為や、依頼者から金銭を不正に取得する行為等が典型例です。令和7年(2025年)の行政書士法改正(2026年1月1日施行)で「使命規定」(第1条)が整備され、行政書士が国民の権利利益の実現に資する使命を有することが明文化されたことで、この「品位」の基準がより明確化されました。
【懲戒処分と行政不服申立て・行政訴訟】
都道府県知事による懲戒処分に不服がある場合、行政書士は行政不服申立て(審査請求)または行政訴訟(取消訴訟)を提起できます。審査請求先は上級行政庁(都道府県知事の処分であれば総務大臣または内閣総理大臣への申立て)です。取消訴訟の被告は都道府県(都道府県知事の処分の場合)です。業務停止処分に対して執行停止申立てが認められた場合、処分の効力が停止して業務を継続できる場合があります(行政不服申立法25条・行政事件訴訟法25条)。実務上、懲戒処分を受けた行政書士が争う場合は行政書士会の支援・法的援助を求めることが多く、日本行政書士会連合会が指針・相談窓口を設けています。
【上位資格・実務への接続】
他士業の懲戒制度との比較として、弁護士は弁護士会による自律的懲戒(戒告・2年以内の業務停止・退会命令・除名)であるのに対し、行政書士は都道府県知事という行政機関による懲戒(外部統制)という点が異なります。社会保険労務士・司法書士も行政書士と同様に都道府県知事等の行政庁による懲戒が主体です。行政書士として実務に就く際、依頼者との契約・報酬・守秘義務・非弁行為防止(弁護士法72条)の各場面で懲戒リスクを意識したコンプライアンス体制が必要です。
【根拠条文】
行政書士法 第14条(懲戒の種類:戒告・2年以内の業務停止・業務禁止/処分権者:都道府県知事)・第14条の3(聴聞手続:業務停止・業務禁止について必要)・第2条の2第5号(登録取消処分から3年欠格)・第2条の2第6号(業務禁止処分から3年欠格)
※令和7年(2025年)改正(2026年1月1日施行)の使命規定(第1条)改正を反映。
【補足】
懲戒処分権者は都道府県知事(行政書士会長ではない)。3種類:戒告・2年以内の業務停止・業務禁止(「登録取消し」という懲戒名称ではない点に注意)。業務停止・業務禁止には聴聞手続必要(14条の3)。品位非行も懲戒事由(14条柱書)。業務禁止・登録取消処分の欠格期間はいずれも処分の日から3年(2条の2第5号・6号)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政書士法 第14条(懲戒の種類:戒告・2年以内の業務停止・業務禁止/処分権者:都道府県知事)・第14条の3(聴聞手続)・第2条の2第6号(業務禁止処分から3年間の欠格)・令和7年改正(使命規定化・2026年1月1日施行) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。