行政書士 商法・会社法 問22:株式の相続・株主権の共有・共有者の権利行使
株式の相続・共有に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア株式が共有に属する場合、共有者は会社に対して権利を行使する者1名を定め、その者を通じて権利行使しなければならない。
- イ株式の共有者が権利行使者を定めないまま株主総会で議決権を行使しようとした場合、会社はその行使を拒絶することができる。
- ウ会社が共有者全員の同意がある場合には、株式の共有者がそれぞれ持分に応じて個別に議決権を行使することを認めることができる。正答
- エ株式が相続によって共同相続人の共有となった場合、相続人が遺産分割を行うまでの間は株式を共有する状態が続き、その間は権利行使者を1名定めて権利行使しなければならない。
- オ譲渡制限株式を相続により取得した者に対し、会社は、その相続人から会社が売渡しを請求する旨の定めを定款に設けることができる。
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株式の共有(会社法106条):株式が複数の者の共有に属する場合、共有者は会社に対して権利を行使する者を1名定め、その者を通じて権利行使しなければなりません(ア正しい・イ正しい)。ウが誤りで、「共有者全員の同意があれば個別に議決権行使を認めることができる」とありますが、会社法106条は「共有者は…権利を行使する者1人を定め…なければならない」と規定し、会社が個別行使を認めることを前提としていません。ただし会社が同意した場合に例外が認められるとする見解もありますが、一般的には会社が全員同意があれば認められるという明文規定はありません。相続による共有(エ正しい)や、相続人への売渡請求(オ正しい)も正確です。
株式の共有・相続に関する各論点を整理します。株式の共有と権利行使(会社法106条):株式が共有の場合、共有者は会社に対して権利を行使する者1名を定め、会社に通知しなければなりません(1項)。この者を定めて通知しない間は、会社は共有者に対して義務を負いません(2項)。会社が認めた場合の例外については同条に規定がなく(ウ:「全員の同意があれば個別行使を認めることができる」という一般的な規定はない)、これが誤りの核心です。ただし、会社が同意した場合に個別行使を認めることの可否については学説上の議論があり、会社が事前に個別行使を認める旨を同意した場合は有効と解される余地があるとも言われますが、「全員の同意さえあれば当然に認められる」という断定はできません(ウは誤り)。相続による共有(エ正しい):株式が相続で共有となった場合(例:3人の共同相続人が均等に相続)、遺産分割完了まで共有状態が続き、106条のルール(権利行使者1名の指定)が適用されます。相続人への売渡請求(オ正しい):会社法174条〜177条は、定款に定めを置くことで、相続等の一般承継により譲渡制限株式を取得した相続人等に対して会社が売渡請求できる制度を設けています(閉鎖会社での株主の固定化を維持するため)。売渡請求はその都度、株主総会の特別決議(会社法175条・176条・309条2項3号)により請求株式数等を定めて行い、会社が相続その他の一般承継を知った日から1年以内に行使する必要があります(176条1項)。
【理論的背景】
株式の共有に関する会社法106条の規律は、会社の事務負担の軽減(複数の共有者がそれぞれ異なる意見で権利行使を求めると会社が対応困難になる)と株主権の単一性(1株1議決権という原則を維持するために、共有株式の分割行使を防ぐ)という2つの要請から設けられています。相続による共有(遺産共有)は、相続人が遺産分割をするまでの間、暫定的に発生するものであり、長期化した場合の会社の運営に支障をきたすことがあります。このため、相続人等への売渡請求制度(174条〜)が設けられており、閉鎖会社が「会社に無関係な相続人が株主となること」を防ぐための手段として機能します。売渡請求は相続その他の一般承継を知った日から1年以内に行使しなければならず(会社法176条1項)、その都度株主総会の特別決議(309条2項3号)を要します。全員同意による個別行使の問題は、会社法106条の解釈として「会社が同意した場合に限り認める」という解釈と「条文上認められない」という解釈の対立がありますが、出題上はウの「全員の同意があれば当然に認められる」という無条件の記述が誤りの核心です。
【条文構造】
会社法106条1項「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」。同条ただし書「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない」(同意があれば例外がありうることを示しているが、「全員同意で個別行使が当然に認められる」という意味ではない)。会社法174条「株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる」。176条(売渡しの請求)は株主総会の特別決議(309条2項3号)を要件とし、会社が相続その他の一般承継を知った日から1年以内という請求期間の制限があります。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での株式の共有・相続の問われ方は、①権利行使者の指定義務(106条・1名・通知要件)、②相続による共有と遺産分割の関係、③相続人等への売渡請求(定款の定め必要・会社法174条〜)、④106条ただし書の「会社の同意」の意味の4点が典型です。本問ウは106条ただし書の解釈の精確さを問うものです。「全員同意があれば個別行使が当然に認められる」ではなく「会社が同意した場合に限り例外」という精度の差が問われています。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。106条1項本文(権利行使者1名の指定・通知義務)の趣旨に正確に対応している。
- イ: 正しい。106条1項(権利行使者の指定・通知がない場合、会社は権利行使を拒絶できる)。会社には通知のない共有者による権利行使に応ずる義務はない。
- ウ: 誤り。会社法106条ただし書は「株式会社が…同意した場合は、この限りでない」と規定しており、「会社の同意」が要件。共有者全員の同意だけで当然に個別行使が認められるわけではなく、会社の同意が必要。
- エ: 正しい。相続による遺産共有の場合、遺産分割まで共有状態が続き、106条1項の権利行使者指定義務が適用される。複数相続人が共有する株式は1名を指定して権利行使する。
- オ: 正しい。会社法174条により、定款の定めを設けることで、相続等の一般承継で譲渡制限株式を取得した者に対して会社が売渡請求できる(閉鎖会社の株主固定化手段)。請求は株主総会の特別決議(309条2項3号)を要件とし、相続その他の一般承継を知った日から1年以内に行使する必要がある(176条1項)。
【根拠条文】
会社法 第106条第1項・ただし書(株式の共有・権利行使者の指定・会社の同意)
会社法 第174条(相続人等への売渡請求の定款の定め)
会社法 第175条・第176条第1項(売渡しの請求・株主総会特別決議・知った日から1年以内)
会社法 第309条第2項第3号(売渡請求の特別決議要件)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第106条(株式の共有・権利行使者の指定)、会社法第174条〜177条(相続人等に対する売渡し請求) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。