行政書士 商法・会社法 問31:取締役会の招集・議事録・特別利害関係人
取締役会の招集および議事運営に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア取締役会の招集は代表取締役のみが行うことができ、代表取締役以外の取締役が取締役会を招集するためには株主総会の承認が必要である。
- イ取締役会の招集通知は、会日の2週間前までに各取締役(および監査役設置会社においては監査役)に対して発しなければならず、この期間は定款によっても短縮することができない。
- ウ取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、当該決議に参加することができるが、その議決権を行使することはできない。
- エ取締役会の議事録は10年間、会社の本店に備え置かなければならないが、株主は理由を明示すれば任意に閲覧・謄写の請求をすることができ、会社はこれを拒絶することができない。
- オ監査役設置会社において、取締役会に出席した監査役が取締役の法令・定款違反を発見した場合、監査役は取締役会において意見を述べる義務を負うが、取締役会の決議には参加できない。正答
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取締役会の手続に関する問題です。オが正しい。監査役は取締役会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければなりません(383条1項)。監査役は取締役会の「業務の適法性」を監査する立場であり、取締役会の決議に参加(議決権行使)はできません。これはオの記述と一致します。アは誤り:取締役会招集権は各取締役が持ちます(366条1項)。イは誤り:取締役会の招集通知は会日の「1週間前」まで(定款でさらに短縮可)に発すれば足り(368条1項)、2週間前ではありません。株主総会の公開会社2週間前(299条1項)と混同させる引っかけです。ウは誤り:特別の利害関係を有する取締役は議決権行使ができないだけでなく、定足数にも算入されません(369条2項)。エは誤り:株主による議事録閲覧は裁判所の許可が必要な場合があります(371条2項・4項)。
オが正答の根拠(383条の監査役の権限)
監査役は取締役会に「出席する義務」を負い(383条1項本文)、必要があると認めるときは意見を「述べなければならない」義務があります(同項ただし書)。この意見陳述義務は、監査役が単なるオブザーバーではなく積極的な監視機能を担うことを示します。ただし監査役は取締役ではなく、取締役会の決議において議決権を行使する地位にはありません。オはこの構造を正確に述べています。
各選択肢の誤りの核心
- ア: 取締役会の招集権は原則として各取締役が持ちます(366条1項)。定款・取締役会の規則で招集権者を定めた場合でも、他の取締役は「取締役会の目的事項を示して招集を請求」でき(366条2項)、拒絶されれば自ら招集できます(同条3項)。「代表取締役のみ」は誤り。
- イ: 誤り。取締役会の招集通知は会日の「1週間前」までに発するのが原則で、定款でこれを下回る期間に短縮することもできます(368条1項)。イは「2週間前・短縮不可」としており、期間も短縮可否も誤りです(株主総会の招集通知期間との混同に注意)。なお全員の同意による招集手続の省略(368条2項)は可能です。
- ウ: 不正確。特別利害関係取締役は①議決権を行使できない(369条2項)だけでなく、②「議決に加わることができる取締役」から除かれ定足数の算定からも除外されます(同項)。ウは「決議に参加することができる」とし、定足数からの除外という重要な効果に触れていない点で正確な記述とはいえません(事実上の傍聴的な出席自体は妨げられないが、決議に「加わる」ことはできない)。本問でより完全に正確なのはオです。
- エ: 株主による取締役会議事録の閲覧請求(371条2項)は、監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社では「裁判所の許可を得て」行う必要があります(371条3項・4項・5項)。「任意に…拒絶することができない」という断定は誤りです。
【理論的背景:取締役会における監査役の独立性と意見陳述義務】
監査役は会社法上「監査役会」を設置する義務のある大会社等を除き、取締役会の外部から独立した監視機能を担います。383条1項の「意見を述べなければならない」という義務的規定は、監査役が単なる参観者にとどまることを禁じています。監査役の独立性を担保するため、会社法は①監査役の解任を特別決議(309条2項7号)に要求し、②任期を4年(会計監査人設置会社等では定款でも短縮不可・336条1項・2項)とし、③報酬を定款または株主総会決議で定めることを要求(387条)しています。これらの制度的独立性があって初めて、383条の意見陳述義務が実効的に機能します。
【実務・条文構造:取締役会の招集権と少数取締役の救済】
取締役会招集の手続は以下の段階的な規律があります。①招集権者の定め:定款または取締役会規則で招集権者(通常は代表取締役等)を定めた場合(366条1項ただし書)。②他の取締役の救済:招集権者以外の取締役は「目的事項を示して招集権者に請求」でき、合理的期間内に招集が行われない場合は「直接招集する権限が認められる」(366条2項・3項)。③緊急の場合:監査役も取締役に対して取締役会の招集を請求でき(383条2項)、拒絶されれば自ら招集できます(383条3項)。この救済ルートの存在が「代表取締役のみが招集権を持つ」(選択肢ア)が誤りである理由です。
取締役会の招集通知は368条1項に基づき「会日の1週間前まで」(定款でさらに短縮可)に各取締役・監査役に発することが必要。省略は全員の同意(368条2項)により可能です。
【試験での位置づけ:特別利害関係取締役の処理と頻出問題】
特別の利害関係を有する取締役(369条2項)の典型例は「代表取締役の選定・解職の決議において当該代表取締役がその対象となっている場合」「取締役と会社の利益相反取引の承認決議において当該取締役」等です。特別利害関係取締役は①議決権行使ができない、②定足数算定から除外される(「議決に加わることができる取締役」から除かれる)という二つの効果があります。選択肢ウは「参加はできるが議決権行使はできない」という一部正しい記述ですが、定足数から除外されるという重要な効果を欠落させている点で正確性に欠きます(なお、出席自体は妨げられない点は正しい)。本問はオが最も完全に正確であるため正答とします。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 取締役会の招集権限の委縮は「代表取締役が専横的に取締役会を開かない」という問題を招くため、会社法は他の取締役への救済ルート(366条2項・3項)を確保しています。また監査役による招集請求・自己招集(383条2項・3項)もあります。
- エ: 取締役会議事録の備置・閲覧の規律(371条)は複雑です。①株主は371条2項により閲覧・謄写請求ができる。②ただし監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社では「裁判所の許可」が必要(371条3項・4項・5項)。③会社は「調査等の妨げとなるおそれがある場合等」を理由に拒絶できる場合があります(371条3項各号)。「任意に拒絶できない」という断定は誤りです。
- オ: 監査役の意見陳述義務(383条1項)は「必要があると認めるとき」という要件があるため、常に発言義務があるわけではありません。ただし法令・定款違反を発見した場合は「必要がある」と認められるのが原則であり、積極的に意見を述べる義務が生じます。この義務を怠った場合、監査役の任務懈怠(善管注意義務違反・330条・民法644条)として責任を問われうります。
【根拠条文】
会社法 第366条第1項〜第3項(取締役会の招集権)
会社法 第368条第1項・第2項(取締役会の招集通知・省略)
会社法 第369条第2項(特別利害関係取締役の議決権・定足数)
会社法 第371条(取締役会議事録の備置・閲覧)
会社法 第383条第1項・第2項・第3項(監査役の取締役会出席・意見陳述・招集請求)
【補足】
監査役は取締役会に出席して意見陳述義務を負うが議決権なし(383条1項)。特別利害関係取締役は出席できるが議決権なし・定足数から除外(369条2項)の二重効果を整理。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第368条(取締役会の招集)・第369条(取締役会の決議)・第383条(監査役の権限) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。