行政書士 商法・会社法 問42:資本金・準備金・剰余金の関係
株式会社の計算(資本金・準備金・剰余金)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア株式の発行に際して払込みを受けた金額の一部を資本金としないことができるが、資本金としない金額は資本準備金としなければならず、払込金額の2分の1を超えて資本金としないことはできない。正答
- イ会社は、資本金の額を減少させることができるが、これには株主総会の特別決議が必要であり、また債権者保護手続(官報公告・個別通知)を行わなければならない。
- ウ準備金(資本準備金・利益準備金)は、それぞれ株主総会の普通決議により取り崩すことができ、資本金に組み入れることも剰余金に振り替えることもできる。
- エ利益準備金は、剰余金の配当の際に積み立てられる準備金であり、利益処分の結果として積み立てられる点で資本準備金(株式の払込みに由来)と性格が異なる。
- オ資本金・準備金の合計額が会社の純資産額を下回る場合であっても、剰余金の配当は分配可能額がある限り適法に行うことができる。
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資本金・準備金の規律に関する問題です。アが誤りです。445条2項は「株式の発行に際して払込みを受けた額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる」と定め、資本金としない部分は資本準備金としなければなりません(445条3項)。つまり「払込金額の2分の1以上を資本金に、残りの2分の1以下を資本準備金に」というのが正しい規律です。アは「2分の1を超えて資本金としないことはできない」と述べており、「超えない」と「超える」が逆になっています。アの記述通りに解釈すると「払込金額の2分の1未満しか資本準備金にできない」という意味になり、実際の規定と逆です。
アが誤りの根拠(445条2項の正確な解釈)
445条2項を整理します:「株式会社が株式を発行した場合において、当該払込み・給付に係る額(払込金額等)の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。」
これを言い換えると:①払込金額等の少なくとも2分の1は資本金に計上しなければならない(2分の1以上は必ず資本金)。②払込金額等の最大2分の1まで(超えない部分)は資本金に計上しなくてよい(資本準備金にできる)。
アは「払込金額の2分の1を超えて資本金としないことはできない」としており、これは「2分の1超は資本金からはずせない」という意味ですが、445条2項は「2分の1超えない額は資本金としないことができる」つまり「2分の1以下なら資本金から外せる(資本準備金にできる)」と定めています。表現が紛らわしいですが、結論として「払込金額の半分以下を資本準備金にすること」が認められているのが正しい規律です。
他の選択肢の確認
- イ: 正しい。447条(資本金の減少)は株主総会の特別決議(309条2項9号)・債権者保護手続(449条)が必要。
- ウ: 正しい。448条1項(準備金の減少)は株主総会普通決議。ただし債権者保護手続が必要な場合あり(449条)。
- エ: 正しい。資本準備金(株式の払込みに由来・445条3項)と利益準備金(利益処分に由来・445条4項)の性格の違いは正確な記述。
- オ: 正しい。分配可能額(461条2項)は資本金・準備金を超えても計算上生じることがあります。純資産が資本金・準備金を下回らない限り問題なく、純資産が上回っていれば分配可能額が生じる場合があります。
【理論的背景:資本金制度の意義と「資本三原則」】
会社法における資本金制度は「資本充実の原則・資本維持の原則・資本不変の原則」という伝統的な資本三原則に基づいています。①資本充実の原則:会社設立時に資本金に相当する実質的な財産が払い込まれること。②資本維持の原則:会社存続中は資本金相当の財産を維持すること(分配可能額規制の根拠)。③資本不変の原則:資本金の額は株主総会の特別決議と債権者保護手続なしには変更できないこと。
ただし現代の会社法は「資本金が債権者保護の実質的な保障になりにくい」という認識から(中小会社では資本金1円も可能)、資本金制度よりも「純資産に基づく分配規制(461条)」を重視する方向に移行しています。445条2項の「2分の1以下は資本準備金に」という規定は、この方向性の現れの一つです。
【実務・条文構造:資本金・準備金の変動に関する手続比較】
| 変動の種類 | 決議 | 債権者保護手続 | 主な場面 |
|---|---|---|---|
| 資本金の増加 | 取締役会(募集株式発行) | 不要(増額は債権者に有利) | 募集株式の発行・株式分割 |
| 資本金の減少 | 株主総会特別決議 | 必要(449条) | 欠損填補・剰余金の創出 |
| 資本準備金の増加 | 払込金の算入(自動) | 不要 | 株式発行 |
| 資本準備金の減少 | 株主総会普通決議 | 必要(449条) | 欠損填補・資本金への繰入・剰余金化 |
| 利益準備金の増加 | 配当決議に伴い自動積立(445条4項) | 不要 | 剰余金配当時 |
| 利益準備金の減少 | 株主総会普通決議 | 必要(449条)※ | 欠損填補・剰余金化 |
※債権者保護手続が不要となる例外(449条1項ただし書):資本金・準備金の減少額以上の額を同時に資本金・準備金に組み入れる場合等。
【試験での位置づけ:資本金減少の手続とM&Aでの活用】
資本金の減少(447条・資本金の額の減少)は行政書士試験で手続面が問われます。通常は株主総会の特別決議(309条2項9号)と債権者保護手続(449条)が必要です。ただし欠損の範囲内での資本金減少(欠損填補)は、普通決議で足りる場合があります(447条1項ただし書・309条2項9号の例外)。実務では、累積欠損金がある会社が欠損填補のために資本金を減少させ、減少した資本金額を損失に充当することで財務体質を改善するケースが多くあります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 445条2項の「2分の1を超えない額は資本金としないことができる」の使い方の例:払込金1億円で株式を発行する場合、5000万円以下を資本準備金に算入し、残り5000万円以上を資本金に算入できます。全額を資本準備金にすることはできません(最低半分は資本金必須)。
- ウ: 準備金の減少(448条)は普通決議ですが、その後の使途(剰余金化・資本金への繰入等)によって手続が異なります。また449条の債権者保護手続は必要ですが、欠損填補目的等では例外があります。
- オ: 純資産(総資産ー総負債)が資本金+準備金を上回っている場合に分配可能額が生じます。逆に純資産が資本金+準備金を下回る(欠損がある)場合は分配可能額がゼロまたはマイナスとなり、配当はできません。
【根拠条文】
会社法 第445条第2項・第3項・第4項(資本金・資本準備金・利益準備金)
会社法 第447条第1項(資本金の額の減少)
会社法 第448条第1項(準備金の額の減少)
会社法 第449条(資本金・準備金の減少に係る債権者保護手続)
会社法 第461条第2項(分配可能額の計算)
【補足】
445条2項「2分の1超えない額は資本準備金にできる(つまり最低半分は資本金必須)」の正確な理解が最重要。資本金減少(特別決議)と準備金減少(普通決議)の決議要件の違いも頻出。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第445条(資本金・資本準備金)・第447条(資本金の減少)・第448条(準備金の減少) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。