商法・会社法45組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転

行政書士 商法・会社法 問45:組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転

株式会社の組織再編に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 吸収合併とは、合併当事会社のうちの一社(存続会社)が他の会社(消滅会社)の権利義務を承継する手続であるが、存続会社は消滅会社の権利義務のうち承継する財産を個別に選択することができ、消滅会社の債務については各債権者の個別の同意を得たものに限り承継する。
  • 会社分割のうち新設分割とは、会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割によって新たに設立する会社に承継させる手続であり、分割後に元の会社は必ず解散しなければならない。
  • 株式交換とは、株式会社が発行済株式の全部を他の会社(完全親会社となる会社)に取得させる手続であり、完全親会社となることができるのは株式会社に限られ、合同会社が完全親会社となることはできない。
  • 吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割・株式交換・株式移転の各組織再編行為は、原則として当事会社の株主総会の特別決議を要し、また合併等の無効は合併等の無効の訴えによらなければならない。正答
  • 組織再編に際して、消滅会社(または分割会社)の株主に交付される対価は、存続会社(または設立会社)の株式に限られ、金銭やその他の財産を対価とすることはできない。
正答:吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割・株式交換・株式移転の各組織再編行為は、原則として当事会社の株主総会の特別決議を要し、また合併等の無効は合併等の無効の訴えによらなければならない。

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組織再編に関する問題です。エが正しい。吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割・株式交換・株式移転はいずれも原則として当事会社の株主総会の特別決議(309条2項各号)を要します。また組織再編の無効は会社法上の「組織再編無効の訴え」(828条1項各号)によらなければならず、一般的な民事訴訟での無効主張はできません(対世効を持つ確認訴訟の必要性)。アは誤り:吸収合併では、存続会社が消滅会社の権利義務を「全部」かつ「包括的に(当然に)」承継します(2条27号・750条1項)。承継する財産を個別に選択したり、債務について各債権者の個別の同意を要したりするものではありません(債権者の保護は債権者異議手続(789条)で図られます)。アはこの包括承継の性質を否定する点で誤りです。なお存続会社・消滅会社には持分会社もなれます(748条)。イは誤り:新設分割後に元の会社(分割会社)は解散しません(権利義務の一部のみを分割会社に承継させることも可能)。オは誤り:対価柔軟化(三角合併等)により金銭・親会社株式等を対価とすることができます(749条1項2号等)。

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エが正答の根拠(組織再編の特別決議要件と無効訴訟)

特別決議要件:各組織再編において当事会社(存続会社・消滅会社・分割会社等)は原則として株主総会の特別決議(309条2項各号)が必要です。ただし「簡易組織再編」(規模が小さく影響が軽微な場合:796条・805条等)や「略式組織再編」(特別支配会社が存在する場合:784条・796条の特則)には株主総会決議が不要な場合があります。

無効の訴え:組織再編の無効は828条1項各号の「組織再編無効の訴え」によらなければなりません。提訴権者(当事会社の株主・取締役・監査役等)と期間(効力発生後6か月以内)の制限があります。判決が認容されると対世効(対合併等の当事者・第三者にも効力が及ぶ)があります。

各選択肢の誤りの核心

  • ア: 誤り。吸収合併の本質は消滅会社の権利義務の「全部」の「包括承継」です(2条27号・750条1項)。個別の財産選択や債権者ごとの個別同意は不要で、合併の効力発生日に消滅会社の権利義務が当然に存続会社へ移転します。債権者保護は債権者異議手続(789条・799条)で図られます。なお当事会社には株式会社・持分会社のいずれもなれます(748条)が、アの誤りは承継の包括性を否定した点にあります。
  • イ: 新設分割は「権利義務の全部または一部を新設会社に承継させる」手続(762条)。元の会社(分割会社)は分割後も存続します。「必ず解散」は誤りです。
  • ウ: 株式交換とは「株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させること」(2条31号)です。すなわち完全親会社となれるのは株式会社または合同会社の両方であり、合同会社も完全親会社になれます。ウは「完全親会社になれるのは株式会社に限られ、合同会社はなれない」としている点で2条31号に反し誤りです。なお、完全子会社(発行済株式の全部を取得される側)は「株式会社」に限られます。
  • オ: 三角合併等の「対価の柔軟化」(749条1項2号:吸収合併の対価として存続株式会社の親会社株式・金銭等を交付できる)により、株式以外を対価とすることが可能です(2007年施行の改正で導入)。
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【理論的背景:組織再編手続の統一的設計と債権者・株主保護】

会社法の組織再編手続は「①開示(情報提供)→②承認(株主総会等)→③債権者保護→④登記・効力発生→⑤事後開示」という統一的なフローで設計されています。各フローにおける保護手続の厳格さは「再編の規模・影響の大きさ」に比例して設計されており、簡易・略式の例外によって小規模な場合には手続が簡略化されます。

株主の保護手段として特に重要なのが「反対株主の株式買取請求権」(785条・797条・806条等)です。組織再編に反対する株主は、会社に対して公正な価格での株式買取りを請求することができ、これにより組織再編に同意しない少数株主の利益が保護されます。

債権者の保護は「債権者異議手続」(789条・799条等)によって行われます。会社は債権者に対して官報公告・個別通知を行い、異議を申し出た債権者には弁済・担保提供を行う義務があります。

【実務・条文構造:六種の組織再編の類型比較】

| 組織再編の種類 | 当事会社の数 | 消滅・分割する会社 | 株主総会 | 無効の訴え期間 |

|---|---|---|---|---|

| 吸収合併 | 2社以上 | 消滅会社 | 特別決議(原則) | 効力発生後6か月 |

| 新設合併 | 2社以上 | 全消滅会社 | 特別決議(原則・簡易・略式なし) | 効力発生後6か月 |

| 吸収分割 | 2社 | 分割会社は存続 | 特別決議(原則) | 効力発生後6か月 |

| 新設分割 | 1社(分割会社) | 分割会社は存続 | 特別決議(原則) | 効力発生後6か月 |

| 株式交換 | 2社 | 完全子会社は存続 | 特別決議(原則) | 効力発生後6か月 |

| 株式移転 | 1社以上 | 移転会社は存続 | 特別決議(原則・簡易・略式なし) | 効力発生後6か月 |

新設合併と株式移転では「新設する会社が事前に決議機関を持たない」ため簡易・略式の適用がなく、常に当事会社の特別決議が必要です。

【試験での位置づけ:反対株主の買取請求権と三角合併の頻出論点】

行政書士試験では以下の論点が頻出です。

反対株主の株式買取請求権(785条等):①事前に反対の通知(総会前に株主が反対の意思を通知)、②総会で反対、③請求期間内に買取請求、という三段階。公正な価格での買取り。価格決定は当事者間の協議で決まらない場合は裁判所が決定(787条4項等)。

対価柔軟化・三角合併(749条1項2号等):存続会社の株式ではなく、存続会社の親会社の株式(外国親会社の株式を含む)を消滅会社の株主に交付できる。2007年の外資系企業による三角合併解禁で注目された論点。

スクイーズ・アウト(少数株主締め出し):株式等売渡請求(179条)・特別支配株主が全株主から強制取得できる制度(2015年の改正で導入)。従来の組織再編を経ずに少数株主を排除できる。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 吸収合併(748条〜)における当事会社は株式会社・合名会社・合資会社・合同会社のいずれでもよいとされています(748条は「他の会社(消滅会社)と合併し…当該他の会社の権利義務の全部を承継する」と規定。当事者の会社の種類は制限していない)。ただし実務上は株式会社同士の合併が圧倒的多数です。
  • ウ: 株式交換(2条31号)の定義は「株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させること」。したがって完全親会社になれるのは株式会社と合同会社の両方です。768条は完全親会社が株式会社である場合の株式交換契約を、770条は完全親会社が合同会社である場合の株式交換契約を定めており、合同会社が完全親会社になる類型も会社法上明文で認められています。一方、完全子会社(株式を取得される側)は「株式会社」に限られる点が出題ポイントです。
  • オ: 対価の柔軟化は組織再編のあり方を根本的に変えました。2007年以前は原則として存続会社等の株式を対価とする必要がありましたが、現在は親会社株式・社債・金銭等を対価とすることができます。外国親会社株式を対価とする「クロスボーダー三角合併」も理論上可能です。

【根拠条文】

会社法 第748条・第749条(吸収合併契約・対価の規定)

会社法 第762条(新設分割計画)

会社法 第783条第1項・第795条第1項・第804条第1項(組織再編の特別決議承認)

会社法 第785条・第797条・第806条(反対株主の株式買取請求権)

会社法 第789条・第799条(債権者異議手続)

会社法 第828条第1項各号(組織再編無効の訴え・6か月以内)

【補足】

六種の組織再編は「特別決議が原則・簡易・略式で例外」と「効力発生後6か月以内の無効の訴え」がセット。対価柔軟化(749条1項2号等・金銭・親会社株式も可)でオが誤り。反対株主の買取請求権(785条等)と債権者異議手続(789条等)の保護手続を体系的に理解する。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第783条・第795条(吸収合併等の承認)・第804条(新設合併等の承認)・第828条第1項(組織再編の無効の訴え) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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