行政書士 商法・会社法 問48:商法・会社法/商行為
商人間の売買(商事売買)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア商人間の売買において、買主が売買の目的物の受領を拒絶し、または受領できない場合、売主は当該物品を供託することができ、また、相当の期間を定めて催告した後に競売に付すことができる。
- イ商人間の売買における目的物の供託・競売に際し、売主が当該物品を競売した場合には、売主は遅滞なく買主に対して競売の通知をしなければならない。
- ウ商事売買において、売買の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行しなければ契約の目的を達することができない場合(定期売買)に、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したとき、相手方は、ただちに催告なしに契約を解除することができる。
- エ定期売買において、履行期を経過した後でも、相手方が直ちに契約の解除の意思を示さず、催告を行った場合には、もはや無催告解除の特則は適用されず、民法の原則に戻って催告による解除が必要となる。
- オ買主が目的物の受領を拒んでいる間に、その物品が価格の著しい下落によって損傷のおそれがある場合でも、売主は裁判所の許可がなければ競売に付すことはできない。正答
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商事売買(商人間の売買)には民法と異なる特則があります。商法524条(供託・競売):買主が受領拒絶・受領不能の場合、売主は①供託、または②相当の期間を定めて催告後に競売に付すことができます(ア正しい)。競売後は遅滞なく買主への通知義務があります(イ正しい)。さらに、目的物に「損傷のおそれがある場合」は裁判所の許可なしに競売できる特則があります(オが誤りの根拠)。商法525条(定期売買の解除):「特定の日時・一定期間内に履行しなければ目的を達せない売買」で、一方が履行しないまま時期を経過した場合、相手方は催告なしに解除できます(ウ正しい)。ただし「履行の請求」をした場合は直ちに解除できません(エ正しい)。
商法524条(供託・競売)の詳細:買主が受領を拒絶・できない場合の売主の救済手段です。①供託(民法494条の弁済供託と同様)。②催告後競売(相当期間の催告が必要)。③損傷のおそれがある物品の裁判所許可なしの競売(524条2項:価格の著しい下落・損傷のおそれがある場合に裁判所の許可なしで競売可)。この③が重要で、「損傷のおそれがある場合でも裁判所の許可が必要」とするオは誤りです。競売後は遅滞なく買主への通知義務があります(524条3項・イ正しい)。商法525条(定期売買の解除)の詳細:定期売買(性質または意思表示により特定の日時・期間内の履行が契約目的達成の条件となる売買)では、一方が履行しないまま時期を経過した場合、相手方は「直ちに」催告なしに解除できます(ウ正しい)。ただし「相手方が直ちに契約の解除の意思表示をしないときは、この限りでない」(525条但書)という規定があり、解除の意思を示さず履行の請求を行った場合には無催告解除の特則は適用されません(エ正しい)。これは継続的取引への迅速な対応を促すものです。
【理論的背景:商事売買特則の存在意義】
商人間の取引(商事売買)には、民法の原則に加えて迅速・安全という商取引固有の要請から特則が設けられています。商法524条の供託・競売特則は、買主の受領拒絶によって売主が目的物を長期間保管し続ける不合理を解消するためのものです。民法の弁済供託(民法494条)は法務局等への供託を要しますが、商事売買では競売という迅速な換価手段も認められ、商品価値の下落リスクに対応できます。商法525条の定期売買の無催告解除は、「ちょうどクリスマスに届けるウェディングケーキ」のように、特定の日時を逃せば目的が失われる取引では、催告に時間をかけることが無意味であることから設けられています。民法541条の催告解除の原則(相当期間の催告後に解除)の例外として、商取引の迅速性要請を反映した規定です。
【条文構造:商法524条・525条の正確な内容】
商法524条1項:「商人間の売買において、買主が目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。」(催告後競売)。524条2項:「前項の規定にかかわらず、目的物が損傷のおそれがあるときは、売主は、直ちに競売に付することができる。ただし、遅滞なく、買主に対して競売の通知をしなければならない。」(損傷のおそれ=催告不要・裁判所許可不要で即時競売可)。オが誤りとなる理由はこの2項の存在によります。なお524条の競売は「自助売却」であり、競売後の代金は売主の請求権の担保となります(余剰があれば供託)。商法525条「商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその契約の解除をすることができる。ただし、相手方が直ちに契約の解除の意思表示をしないときは、この限りでない。」但書により、履行期後に解除をせず履行請求等をした場合には無催告解除権を放棄したとみなされます(エ正しい)。
【試験での位置づけ:行政書士試験での商事売買特則の問われ方】
行政書士試験での商事売買(商法524条・525条)の問われ方は以下が頻出です。①524条の競売要件(催告後競売 vs 損傷のおそれによる即時競売)、②525条の定期売買の無催告解除と但書(解除の意思を示さなかった場合の効果)、③民法の催告解除(541条)との比較です。本問オの「損傷のおそれがある場合でも裁判所の許可が必要」は頻出の誤り肢パターンです。実際は524条2項により「裁判所の許可なし・即時競売可」が認められています。また526条(商事売買の目的物の検査・通知義務)も頻出ですが本問の対象外です。なお2020年の民法改正(瑕疵担保→契約不適合責任)に伴い、526条の「瑕疵」表現は「契約不適合」に改められています。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。商法524条1項の正確な内容。「相当の期間を定めて催告」後に競売に付すという手順が重要。
- イ: 正しい。商法524条2項但書により、損傷のおそれによる即時競売の場合は「遅滞なく買主に通知」が義務。通常の催告後競売の場合も524条3項により通知義務がある。
- ウ: 正しい。商法525条本文の正確な内容。「直ちに」「催告なし」が特徴。
- エ: 正しい。商法525条但書の内容。解除の意思を直ちに示さなかった場合(履行請求等をした場合)には無催告解除の特則が使えなくなり、民法541条の催告解除ルールに戻る。
- オ: 誤り。商法524条2項により、目的物に損傷のおそれがある場合は「直ちに競売に付することができる」(裁判所許可不要・催告不要)。これが民法との大きな相違点。
【根拠条文】
商法 第524条第1項・第2項・第3項(供託・競売・通知義務)
商法 第525条(定期売買の解除・但書)
民法 第541条(催告解除)との対比
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 商法第524条(商事売買の供託・競売)、商法第525条(定期売買の解除) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。