行政書士 商法・会社法 問50:商法・会社法/株式(種類株式の内容)
会社法上の種類株式の内容に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア株式会社は、定款で定めることにより、株主総会の決議によって当該種類の株式の全部を会社が取得することができる旨(全部取得条項)を、その株式の内容として定めることができる。
- イ全部取得条項付種類株式の全部取得には、株主総会の特別決議が必要であり、取得した株式は自己株式となる。
- ウ会社法上、株主総会の決議事項について、その決議のほかに、当該種類の株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する旨(拒否権)を定款で定めることができる。
- エ拒否権付種類株式(黄金株)を保有する株主は、通常の株主総会決議と別に種類株主総会での承認がなければ当該決議事項を成立させないことができるため、経営権の防衛手段として活用される。
- オ全部取得条項付種類株式を取得する際に株主に交付する財産は、全部取得時において株主が取得できると定款に定めた財産(株式・社債・金銭等)に限られ、会社は自社株式以外の財産を対価として交付することができない。正答
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会社法108条は9種類の種類株式を定めています。全部取得条項付種類株式(108条1項7号):株主総会特別決議によって当該種類株式の全部を会社が取得できる株式です(ア・イ正しい)。少数株主の締め出し(スクイーズアウト)や組織再編に利用されます。拒否権付種類株式(108条1項8号):一定の株主総会決議事項について、種類株主総会の承認(拒否権行使)がなければ決議が成立しない株式で「黄金株」とも呼ばれます(ウ・エ正しい)。オが誤り:全部取得の対価として交付できる財産は、定款に定めた財産(自社株式・新株予約権・社債・他の種類株式・金銭等)と幅広く認められており(171条1項1号)、自社株式以外も交付できます。
全部取得条項付種類株式(108条1項7号)の詳細:①定款に「当該種類株式の全部を株主総会決議で取得できる」旨を定める(相対的記載事項)。②全部取得には株主総会の特別決議(171条3項・309条2項3号)が必要。③取得日に全株主から当該種類株式を取得し、取得した株式は自己株式となります(ア・イ正しい)。④取得対価として交付する財産の種類・内容・数・算定方法は株主総会の特別決議で定めます(171条1項)。対価の種類(171条1項1号):「当該株式会社の他の株式」「社債」「新株予約権」「新株予約権付社債」「金銭その他の財産」と幅広く認められています(オ誤り:「自社株式以外の財産を交付できない」という記述が誤り)。拒否権付種類株式(黄金株・108条1項8号):株主総会の決議事項について種類株主総会の承認を条件とするもの。持株会社の創業者保護・敵対的買収防衛策として活用されます。ただし上場企業では証券取引所の自主規制(新規上場時の黄金株保有は原則認められない)があります(エ正しい・実務知識として重要)。
【理論的背景:全部取得条項付種類株式の活用場面と少数株主保護】
全部取得条項付種類株式は主に①100%子会社化(スクイーズアウト)と②再建計画(100%減資後に再増資)という2つの場面で活用されます。スクイーズアウトに利用される場面では、まず定款変更で普通株式を全部取得条項付種類株式に変更し(309条3項の特殊決議が必要:会社法の種類変更型)、次に株主総会特別決議で全株式を取得し、対価として端数となる金銭を交付することで少数株主を排除します。少数株主の保護手段としては、①全部取得に反対した株主の価格決定申立権(172条:裁判所が公正な価格を決定)、②差止請求(171条の3)があります。拒否権付種類株式(黄金株)は、株式会社の支配権を特定の者(創業者・公的機関)に留保させる手段として、M&A防衛策や特定の経営判断への拒否権を確保する目的で設計されます。EUなどでは「黄金株」を公共性の高い企業に認める国もありますが、日本の上場市場では実質的に発行が制限されています。
【条文構造:108条1項7号・8号と171条の関係】
会社法108条1項は9種類の種類株式(1号~9号)を列挙しています。7号(全部取得条項)と8号(拒否権)の内容は108条2項で詳細が規定されます。2項7号イ:全部取得に際して株主に対して交付する財産の内容・数・算定方法を定款で定めることができます(ただし実際の取得条件は株主総会の特別決議で決定:171条)。2項8号:「株主総会(取締役会設置会社にあっては、株主総会又は取締役会)の決議によって定めるべき事項について…その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する旨」を定める。全部取得の手続は171条が規定し、取得対価(171条1項1号ロ:金銭等を含む)・取得日(1号ハ)・種類株式数等を株主総会特別決議で定めます。171条1項1号が「金銭その他の財産」を対価として認めているため、オの「自社株式以外交付不可」は誤りです。
【試験での位置づけ:行政書士試験における種類株式の頻出論点】
行政書士試験での種類株式の問われ方は①108条の種類株式の列挙(優先株・議決権制限・譲渡制限・取得請求権・取得条項・全部取得条項・拒否権・役員選任権:9種類)の識別、②全部取得条項付種類株式の手続(特別決議・価格決定申立権・差止請求)、③拒否権付種類株式の効果(種類株主総会の承認を要する)の3点が典型です。また種類株式の活用(スクイーズアウト・M&A防衛策)も論述式への応用として重要です。「全部取得条項と取得条項の違い」(取得条項付:会社の意思決定のみで取得可・108条1項6号、全部取得条項付:株主総会特別決議が必要)も頻出の対比です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。108条1項7号により、定款で「株主総会決議によって当該種類株式の全部を会社が取得できる旨」を定めることができる。これは相対的記載事項(定款に定めない限り効力なし)。
- イ: 正しい。全部取得には171条3項・309条2項3号の特別決議が必要(定足数:議決権の過半数・定款で3分の1以上まで緩和可;賛成:出席議決権の3分の2以上)。取得した株式は自己株式(155条各号参照)。
- ウ: 正しい。108条1項8号の拒否権付種類株式の定義の正確な記述。「当該決議のほか」に種類株主総会の決議を要するため、通常の株主総会決議が成立しても種類株主総会が否決すれば決議は成立しない。
- エ: 正しい。黄金株の活用場面(経営権防衛・創業者保護)の説明として正確。1株でも保有すれば重要決議を否決できるため「黄金」株と呼ばれる。
- オ: 誤り。171条1項1号により、全部取得の対価として「他の種類株式」「社債」「新株予約権」「金銭その他の財産」を交付することができる。自社株式以外の財産も対価として認められており、「自社株式以外の財産を交付できない」という記述は会社法上の根拠がない。
【根拠条文】
会社法 第108条第1項第7号・第8号(全部取得条項付種類株式・拒否権付種類株式)
会社法 第108条第2項第7号・第8号(各種類株式の内容の詳細)
会社法 第171条第1項第1号・第3項(全部取得の手続・対価・特別決議)
会社法 第172条(反対株主の価格決定申立権)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第108条第1項第7号・第2項第7号(全部取得条項付種類株式)、会社法第108条第1項第8号(拒否権付種類株式)、会社法第171条(全部取得の手続) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。