行政書士 商法・会社法 問52:商法・会社法/新株予約権
新株予約権に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア新株予約権とは、その保有者が権利行使をすることにより、当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利であり、行使に際して払込みをすることも、無償で行使することも定款に定めて設計することができる。
- イ新株予約権の発行(募集)は、公開会社では取締役会決議によることができるが、発行条件が引受人に特に有利な条件である場合(有利発行)には、株主総会の特別決議が必要である。
- ウ新株予約権者が権利を行使した場合、払込みによって会社の株式を取得するが、払込金額(行使価格)は権利行使時点の市場価格に自動的に連動して変動する仕組みが法律上要求されており、あらかじめ固定した行使価格を設定することはできない。正答
- エ新株予約権は、新株予約権者が自由に譲渡することができるが、定款または新株予約権の内容として、譲渡には会社の承認を要する旨を定めることができる(譲渡制限新株予約権)。
- オ会社は、新株予約権の内容として、一定の事由が生じた場合に当該新株予約権を取得することができる旨(取得条項)を設けることができ、この取得は当然に新株予約権者の同意を必要とするものではない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
新株予約権とは、一定の価格(行使価格)で会社に株式の交付を請求できる権利です(ア正しい・無償行使も設計可能)。公開会社での新株予約権発行は取締役会決議が原則ですが有利発行は株主総会特別決議が必要(イ正しい)。譲渡制限を定款や権利内容に盛り込める(エ正しい)。取得条項(一定事由で会社が取得する)も認められ新株予約権者の同意は要しない(オ正しい)。ウが誤り:行使価格は法律上「自動的に市場価格に連動する」とは要求されていません。実務では「固定した行使価格(例:1株1,000円)」として設計することが通常です。行使価格の変動仕組み(修正条項:MSワラントなど)は実務上設計可能ですが、法律上「市場価格への連動が要求」される規定は存在しません。
新株予約権の概要(236条):新株予約権は①行使価格(払込金額)、②行使により交付される株数、③行使期間、④その他の条件を236条に列挙された必要的記載事項として設計します。行使価格は「固定型」(例:1株=1,000円と固定)のほか、「時価連動型」「修正型(MSワラント)」など様々な設計が可能ですが、これはあくまで実務上の設計の話であり、法律上「市場価格への連動」が強制される規定はありません(ウ誤りの根拠)。有利発行規制(238条3項・240条1項):新株予約権の発行条件が引受人に「特に有利な条件」である場合は株主総会特別決議が必要(イ正しい)。「有利な条件」とは、プレミアム(時間的価値)が低すぎる発行価格のことです。譲渡制限新株予約権(236条1項6号):新株予約権の内容として「譲渡には会社の承認を要する」旨を定めることができます(エ正しい)。取得条項付新株予約権(236条1項7号・273条):一定の事由が生じた場合に会社が新株予約権者の同意なく当該新株予約権を取得できる制度です(オ正しい)。これは種類株式の取得条項(107条)と類似した設計です。
【理論的背景:新株予約権の活用と既存株主保護の衝突】
新株予約権は主に①ストックオプション(役員・従業員へのインセンティブ報酬)、②敵対的買収防衛策(ポイズンピル)、③資金調達手段(ワラント債:社債に新株予約権を付帯)という三つの場面で活用されます。既存株主との関係では、新株予約権が行使されると株式の希薄化が生じるため、有利発行規制(株主総会特別決議)という形で保護が図られます。MSワラント(Moving Strike Warrant)は行使価格が市場価格に連動して修正される設計のワラントで、株価下落局面でも行使可能なため資金調達に使われますが、大幅な希薄化リスクから既存株主への不利益が問題となることがあります。これは「有利発行」として規制される可能性があり(238条3項)、判例・実務上も議論があります。
【条文構造:新株予約権の内容(236条)と募集手続(238条〜)】
会社法236条は新株予約権の内容として必要的記載事項(1項1号〜13号)と任意的記載事項を定めます。主要なものとして①新株予約権の行使により交付する株式の種類・数(1号)、②新株予約権の行使に際して出資する財産の価額(行使価格・2号)、③行使期間(4号)、④譲渡制限(6号)、⑤取得条項(7号)、⑥行使条件(条件付行使:9号)などです。行使価格については「一定の金額」のほか「算定方法」を定めることも可能(2号・「株式一株を取得するために出資すべき財産の価額またはその算定方法」)で、市場価格への連動も可能な設計ですが「要求」されません。募集新株予約権の発行手続は238条(内容決定)・240条(公開会社の取締役会決議)・241条(有利発行の株主総会特別決議)に規定されます。
【試験での位置づけ:行政書士試験における新株予約権の頻出論点】
行政書士試験での新株予約権の問われ方は①募集手続(公開会社:取締役会決議・有利発行:特別決議)、②株主となる時期(行使価格の払込みが完了した時:254条)、③譲渡制限の設計可否(可)、④取得条項の効果(新株予約権者の同意不要)の4点が典型です。ウのような「行使価格は市場価格に自動連動が法律上要求」という誤りは、実務上のMSワラントと法律上の要件を混同させる典型的な引っかけです。また新株予約権と種類株式の取得条項の類似性(どちらも一定事由で会社が取得できる)も対比として理解しておくと有益です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。新株予約権は行使価格を「ゼロ(無償)」と設定することも可能で、これは役員への報酬としてのストックオプション等で活用される(有利発行規制が問題となることはある)。行使に際して出資することが一般的だが、無償での行使を内容とする設計も許容される(236条1項2号参照)。
- イ: 正しい。238条3項・240条1項・241条により、有利発行(引受人に特に有利な条件)の場合は株主総会特別決議が必要。
- ウ: 誤り。行使価格は事前に固定した価格を設定することが通常であり(236条1項2号:「一株を取得するために出資すべき財産の価額」を定める)、市場価格への自動連動が「法律上要求」される規定はない。市場価格連動型(MSワラント等)は当事者の合意で設計可能だが法律上の義務ではない。
- エ: 正しい。236条1項6号により、「譲渡による新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要すること」を内容とすることができる(譲渡制限新株予約権)。
- オ: 正しい。236条1項7号・273条により、取得条項付新株予約権が認められる。取得は新株予約権者の同意なく、一定の事由(例:会社が公開買付けを受けた場合・上場廃止等)の発生により会社が取得できる設計が可能。
【根拠条文】
会社法 第236条第1項(新株予約権の内容・必要的記載事項)
会社法 第238条第3項(有利発行・株主総会特別決議の要件)
会社法 第240条第1項(公開会社の取締役会決議)
会社法 第254条(新株予約権者が株主となる時期)
会社法 第273条(取得条項付新株予約権の取得手続)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第236条(新株予約権の内容)、会社法第238条(募集新株予約権の内容決定)、会社法第240条(公開会社の取締役会決議)、会社法第254条(権利行使)、会社法第273条(取得条項付新株予約権) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。