行政書士 商法・会社法 問57:商法・会社法/機関(社外役員)
社外取締役および社外監査役の要件に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア社外取締役(会社法2条15号)とは、当該会社の取締役・支配人その他の使用人でなく、かつ過去10年間も当該会社の取締役・支配人その他の使用人であったことがない者をいい、この要件を満たせば当該会社の親会社の取締役であっても社外取締役になることができる。
- イ社外取締役は、一定の大会社(監査役会設置会社であり公開会社である大会社)において義務化されており、少なくとも1人の社外取締役を置かなければならない。
- ウ社外監査役(会社法2条16号)とは、当該会社もしくは子会社の取締役・支配人その他の使用人でない者であるが、当該会社の親会社の取締役・監査役・支配人その他の使用人については欠格事由に含まれないため、親会社の取締役や監査役であっても社外監査役になることができる。
- エ大会社でない公開会社の場合、社外取締役の設置は法律上義務化されておらず、また上場会社においても証券取引所の規則(自主規制)による社外取締役設置要件は存在しない。
- オ社外取締役が業務執行取締役(特定取締役)を兼任した場合、当該取締役はその時点から社外取締役ではなくなり、社外取締役としての独立性が失われる。正答
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社外取締役・社外監査役の要件が問われています。オが正しい。社外取締役が業務執行取締役(代表取締役・業務執行取締役・使用人)を兼任すれば会社の業務執行に関与することになり、社外取締役の「非業務執行性」という要件(2条15号イ等)を失い、社外取締役でなくなります。アは誤りで、親会社の取締役は社外取締役の要件を満たさない(2条15号ハ)。イは不正確で、社外取締役の設置義務(327条の2)は「監査役会設置会社・公開会社・大会社」の3要件をすべて満たす会社に課されるもので、「大会社」というだけでは義務化されません。ウは誤りで、会社法2条16号ハにより親会社等の取締役・監査役・支配人その他の使用人は社外監査役の欠格事由に含まれるため、親会社の取締役や監査役は社外監査役になれません。エは誤りで、上場会社では取引所の規則(コーポレートガバナンス・コード)により社外取締役設置が要求されています。
社外取締役の要件(2条15号):社外取締役とは、①当該会社の取締役・業務執行取締役・支配人その他の使用人でないこと、②過去10年間も上記でなかったこと(現在の使用人要件の遡及)、③当該会社の親会社等の取締役・業務執行取締役・支配人・使用人でないこと(ア誤りの根拠:親会社取締役は社外取締役になれない)、④当該会社の子会社の業務執行取締役等でないこと(会社・子会社との非執行関係)、⑤当該会社の取締役・執行役・支配人の配偶者・親族(2親等以内)でないことを要します。社外取締役設置義務(327条の2):監査役会設置会社であり、かつ公開会社であり、かつ大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)に対して社外取締役1人以上の設置が義務化されています(2019年改正で法制化)。イの「少なくとも1人」は327条の2の義務内容として正確ですが、要件(監査役会設置・公開会社・大会社)を省略していることで正確さに欠けます。オ正しい:社外取締役が業務執行を行う役割(業務執行取締役)を兼任すれば「非業務執行性」が失われ社外取締役の要件を充たさなくなります。
【理論的背景:社外取締役の意義とコーポレートガバナンス】
社外取締役制度は「業務執行に関与しない外部的視点を経営に取り込み、取締役会の監督機能を強化する」ことを目的としています。日本のコーポレートガバナンス改革(2015年コーポレートガバナンス・コードの制定)の流れで社外取締役の重要性が高まり、2019年の会社法改正(令和元年・2021年3月施行)で法律上の設置義務(327条の2)が設けられました。社外取締役の独立性(会社の業務執行から切り離された「外部の目」)こそが、経営監督機能として価値を持つため、業務執行を兼任するとその独立性が失われます(オ正しいの背景)。なお、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードは「プライム市場上場会社は独立社外取締役を3分の1以上(または過半数)置くことが望ましい」という推奨水準を設けており、法律上の義務(1人以上:327条の2)を超えた実務基準となっています。
【条文構造:2条15号(社外取締役)と16号(社外監査役)の比較】
会社法2条15号(社外取締役の定義)の要件は多岐にわたります(イ〜ホの5つの要件:①現在・過去の会社の取締役等でないこと、②親会社等の取締役等でないこと、③兄弟会社の業務執行取締役等でないこと(令和元年改正追加)、④近親者でないこと)。親会社等の取締役であれば社外取締役になれない(ア誤り)という点が2条15号ハの「当該株式会社の親会社等の取締役、監査役、支配人、使用人ではないこと(これらの者として在任中の者も含む)」による。会社法2条16号(社外監査役の定義):社外監査役の要件は社外取締役と類似しており①就任前10年間、当該会社又はその子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人でなかったこと(過去の従属性要件・監査役経験者には追加要件あり)、②当該会社の親会社等又は親会社等の取締役・監査役・執行役・支配人その他の使用人でないこと(2条16号ハ)、③親会社等の子会社等(当該会社・子会社を除く=兄弟会社)の業務執行取締役等でないこと、④近親者でないこと、が要件です。2条16号ハにより親会社等の取締役・監査役は社外監査役になれません(この点がウの正誤判断の核心)。
【試験での位置づけ:行政書士試験における社外役員の頻出論点】
行政書士試験での社外役員の問われ方は①社外取締役の要件(特に親会社取締役は不可・子会社取締役も不可・過去10年要件)、②社外取締役の設置義務(327条の2:監査役会設置会社・公開会社・大会社の3要件で1人以上)、③社外監査役の要件(2条16号ハ:親会社等の取締役・監査役も不可)、④業務執行との兼任による独立性喪失の4点が典型です。アの「親会社取締役でも社外取締役になれる(誤り:なれない)」とウの「親会社の取締役・監査役でも社外監査役になれる(誤り:2条16号ハで欠格)」が頻出の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。2条15号ハにより「当該株式会社の親会社等の取締役・業務執行取締役・支配人その他の使用人」は社外取締役の欠格事由に含まれる。親会社の取締役は社外取締役になれない(親会社と当該会社の利益衝突があり独立性が担保されないため)。
- イ: 条件が不完全。327条の2の義務化は「監査役会設置会社・公開会社・大会社」という3要件の全てを満たす会社に対するものであり、「大会社」というだけで義務化されるわけではない。
- ウ: 誤り。会社法2条16号ハは「当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役、執行役、支配人その他の使用人でないこと」を社外監査役の要件として明記する。すなわち親会社等の取締役・監査役は社外監査役の欠格事由に含まれ、社外監査役になることはできない。「欠格事由に含まれないため…なることができる」とする本肢は誤り。
- エ: 誤り。上場会社(特に東証プライム市場)では取引所のコーポレートガバナンス・コードにより独立社外取締役の設置が強く要求されており(コンプライ・オア・エクスプレイン原則)、「取引所の規則による要件が存在しない」は誤り。
- オ: 正しい。社外取締役の要件の一つは「当該会社の業務執行取締役ではないこと(2条15号イ)」。業務執行取締役を兼任した瞬間に社外取締役の地位を失う。
【根拠条文】
会社法 第2条第15号(社外取締役の定義・要件)
会社法 第2条第16号(社外監査役の定義・要件)
会社法 第327条の2(監査役会設置会社・公開会社・大会社への社外取締役設置義務)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第2条第15号(社外取締役の定義)、会社法第2条第16号(社外監査役の定義)、会社法第327条の2(監査役会設置会社の社外取締役設置義務) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。