商法・会社法58商法・会社法/株式(授権株式制度)

行政書士 商法・会社法 問58:商法・会社法/株式(授権株式制度)

発行可能株式総数(授権株式制度)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 発行可能株式総数とは、株式会社が発行することができる株式の総数の上限であり、この上限は定款に記載しなければならないが、株主総会の特別決議によって随時自由に増加させることができる。
  • 公開会社においては、発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えることができないという制限(4倍規制)が設けられている。
  • 非公開会社においても、公開会社と同様に発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍以下でなければならないという4倍規制が適用される。
  • 発行可能株式総数が発行済株式総数以下になった場合(例えば、消却により発行済株式総数が増加した場合など)、定款変更なしに自動的に発行可能株式総数が調整される。
  • 設立時の定款において、設立に際して発行する株式の数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができないが、この制限は非公開会社には適用されない。正答
正答:設立時の定款において、設立に際して発行する株式の数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができないが、この制限は非公開会社には適用されない。

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授権株式制度(発行可能株式総数)が問われています。オが正しい。設立時に発行する株式数は発行可能株式総数の4分の1以上でなければならない制限(37条3項:いわゆる「4分の1規制」)がありますが、この制限は非公開会社には適用されないと明示されています(37条3項但書)。アは誤りで、発行可能株式総数の増加には株主総会の特別決議(466条)が必要ですが「自由に」と言えるわけではなく、公開会社では4倍規制(113条3項)もあります。イは正しい方向ですが「4倍を超えることができない」の正確な内容は「発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍を超えることはできない」(113条3項)です。ウは誤りで、非公開会社には4倍規制は適用されません(113条3項は公開会社のみ)。エは誤りで、消却による発行済み株式総数の減少(増加ではない)が生じても自動調整はなく定款変更が必要です。

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授権株式制度の概要:株式会社は定款に発行可能株式総数を記載しなければなりません(27条4号が絶対的記載事項には含まれないが、37条で発行可能株式総数を定めることが要求される)。実際の株式発行は発行可能株式総数の範囲内で行われます(113条1項:取締役会の権限で発行できる上限枠)。公開会社の4倍規制(113条3項):「公開会社における発行可能株式総数は、発行済株式の総数の4倍を超えることができない」。これは株主が知らないうちに会社が大量の株式を発行して持分比率を希薄化させることを防ぐ規制です(イ正しい方向)。非公開会社への不適用(113条3項・4倍規制は公開会社のみ):非公開会社(全株式に譲渡制限がある閉鎖会社)では、取締役会の増資にも株主総会が関与するため(199条2項)、授権枠の制限は不要とされています(ウ誤り)。設立時の4分の1規制(37条3項):設立に際して発行する株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない(公開会社での設立時発行株式数の下限)。「ただし、発行可能株式総数の全部について譲渡制限の定めがある場合は、この限りでない」(非公開会社への適用除外:オ正しい)。

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【理論的背景:授権株式制度の意義と株主保護】

授権株式制度(authorized shares/authorized capital)は、取締役会に一定量の新株発行権限を事前に付与することで、機動的な資金調達を可能にしつつ、取締役会が際限なく株式を発行することを防ぐ仕組みです。日本では公開会社において「発行済株式総数の最大4倍まで」という授権枠が認められており(113条3項)、この範囲内で取締役会(公開会社の場合)が機動的に増資できます。4倍規制の意義は「株主の持分比率が最小25%(4分の1)まで希薄化する可能性を認識した上で投資する」という株主への情報提供機能と、際限のない希薄化防止のバランスです。米国のデラウェア州法では発行可能株式総数の制限が緩やかですが、日本法は4倍規制という明確な上限を設けています。なお非公開会社では新株発行に株主総会特別決議が原則として必要なため(199条2項)、授権枠による制限を設ける必要性が低く、4倍規制・4分の1規制の双方が適用されません。

【条文構造:37条・113条の関係】

会社法37条(設立時の発行可能株式総数の定め):37条1項「発起人は、(中略)設立に際して発行する株式の総数を定款で定めなければならない(または定款で定めることができる)。」37条3項「第1項の規定にかかわらず、株式会社の成立の時における発行済株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。ただし、発行可能株式総数の全部について、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めがあるときは、この限りでない。」(公開会社の設立時下限規制:但書で非公開会社適用除外)。会社法113条3項:「公開会社においては、発行可能株式総数は、当該株式会社が発行することができる株式の総数の範囲内における発行済株式の総数の4倍を超えることができない」(公開会社の授権枠上限・成立後も維持)。

【試験での位置づけ:行政書士試験における授権株式制度の頻出論点】

行政書士試験での授権株式制度の典型的な問われ方は①公開会社の4倍規制(113条3項:発行可能株式総数≦発行済株式総数×4)、②非公開会社への4倍規制・4分の1規制の不適用、③発行可能株式総数の変更(定款変更として株主総会特別決議が必要)の3点です。ウのような「非公開会社にも4倍規制が適用(誤り)」は頻出の引っかけです。またオの「設立時の4分の1規制は非公開会社に適用されない(37条3項但書)」は実務・試験ともに重要な論点です。なお発行可能株式総数の増加に必要な手続(定款変更:466条・株主総会特別決議)と、授権枠の限界に達した後の増資手続(先に発行可能株式総数を増加させてから増資)の流れも理解しておくと応用問題に対応できます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り(2点の誤り):①発行可能株式総数の増加は定款変更(466条)として株主総会特別決議が必要であり「随時自由に」ではない。②公開会社では4倍規制(113条3項)があるため、発行済株式総数の4倍を超えて増加させることはできない。
  • イ: 正しい方向だが「4倍を超えることができない」の厳密な内容確認が必要。113条3項は「発行済株式の総数の4倍を超えることができない」であり、等倍(発行済=発行可能)は可。基本的に正しい内容。
  • ウ: 誤り。113条3項の4倍規制は「公開会社において」という明示があり、非公開会社には適用されない。非公開会社は取締役会の新株発行権限が株主総会で制限されているため、授権枠による保護が不要。
  • エ: 誤り(事実誤認)。消却により発行済株式数は減少(増加ではない)する。また発行可能株式総数は消却によって自動調整される規定はなく、定款変更(466条・特別決議)が必要。なお消却後に4倍規制を維持するためには発行可能株式総数を引き下げる定款変更が必要となる場合がある。
  • オ: 正しい。37条3項本文・但書の正確な内容。設立時の4分の1規制は公開会社(設立後も公開会社となる場合)への規制であり、非公開会社(全株式に譲渡制限がある場合)は適用除外。

【根拠条文】

会社法 第37条第3項(設立時の4分の1規制・非公開会社への適用除外)

会社法 第113条第3項(公開会社の授権枠上限・4倍規制)

会社法 第466条(定款変更・株主総会特別決議)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第37条第3項(設立時の4分の1規制・非公開会社適用除外)、会社法第113条(発行可能株式総数の制限・公開会社の4倍規制) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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