商法・会社法60商法・会社法/社債

行政書士 商法・会社法 問60:商法・会社法/社債

社債に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 社債とは、株式会社が事業資金を調達するために発行する有価証券であり、社債権者は会社に対して元本および利息の支払請求権を有するが、社債権者は会社の残余財産の分配において株主よりも優先順位が低い。
  • 社債の発行は、株主総会の特別決議によらなければならず、取締役会設置会社の取締役会のみの決議では社債を発行することができない。
  • 社債権者集会は、社債権者全体の利益代表機関として位置づけられ、社債権者集会の決議は社債管理者・裁判所の認可を必要とする場合があり、認可を受けた決議はすべての社債権者に効力が及ぶ。正答
  • 新株予約権付社債(ワラント債)とは、社債に新株予約権が付帯されたものであり、新株予約権を行使した場合には社債部分が消滅して株式に転換されるため、転換後の投資家は社債権者としての地位を失い株主となる。
  • 社債の発行に際しては、社債管理者(銀行等)の設置が常に義務付けられており、社債管理者の設置を省略することはできない。
正答:社債権者集会は、社債権者全体の利益代表機関として位置づけられ、社債権者集会の決議は社債管理者・裁判所の認可を必要とする場合があり、認可を受けた決議はすべての社債権者に効力が及ぶ。

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社債の基本事項が問われています。ウが正しい。社債権者集会(715条以下)は社債権者の利益を保護するための機関であり、その決議は原則として裁判所の認可を受けなければ効力を生じず(734条1項)、認可を受けた決議はすべての社債権者に対してその効力を有します(735条)。アは誤りで、社債権者は株主より優先順位が高い(社債=負債・株式=資本で、清算時に債権者が優先)。イは誤りで、社債の発行は取締役会決議で行うことができます(676条:募集社債に関する事項の決定)。エは誤りで、ワラント債(新株予約権付社債)は新株予約権を行使しても社債は消滅しないため、社債権者の地位と株主の地位が別個に並存します。オは誤りで、社債管理者は「各社債の金額が1億円以上の場合」等には設置を省略できます(702条但書)。

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社債の性質と清算優先順位:社債は会社の「負債(借入金)」であり、社債権者は「債権者」です。株主より先に弁済を受けることができます(清算時に債権者が優先・株主はその後)。アの「株主より優先順位が低い」は完全に逆(誤り)。社債発行の手続(676条):676条は「募集社債の発行」を取締役会(取締役会設置会社)または株主総会(非設置会社)の決議で行うと規定しています。株主総会特別決議は不要(イ誤り)。社債管理者(702条):702条本文は「各社債の金額が1億円以上の場合等(702条但書)は例外的に設置不要」という例外を設けており、常に設置義務があるわけではありません(オ誤り)。社債権者集会(715条以下):社債権者集会の決議は裁判所の認可を受けなければ効力を生じず(734条1項)、認可を受けた決議は当該社債の社債権者の全部に対して効力を有します(735条:ウ正しい)。新株予約権付社債(エ):ワラント債の新株予約権を行使しても、社債部分は別途消滅しない(社債と新株予約権は分離できない一体設計の場合でも、行使によって社債が自動消滅するという規定はない)。エの「転換社債型(社債が株式に転換される)」との混同が誤りの源です。

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【理論的背景:社債と株式の相違・社債権者保護の構造】

社債は会社の「他人資本(負債)」であり、株式は「自己資本(資本)」です。この区別は財務上も法律上も重要です。社債権者は①元利金支払請求権(約定利息)、②清算時の残余財産分配における株主優先の地位を持ちます(倒産法:優先弁済)。株主はリスク資本の提供者として配当(会社の業績連動)と残余財産分配(最後順位)という劣後した立場です。社債権者保護の制度として、①社債管理者(702条:大口社債の場合に設置・信託銀行等が担当)、②担保付社債(担保付社債信託法)、③社債権者集会(706条〜)という三層の仕組みがあります。社債権者集会は個々の社債権者が多数であっても集約的に意思決定できる場として機能し、会社の財務悪化時(債務不履行・リストラ案)等に活用されます。

【条文構造:676条・702条・715条〜735条の体系】

社債の発行手続は676条(募集社債に関する事項の決定)に規定されます。676条各号に列挙された事項(社債の総額・各社債の金額・利率・償還の方法・利息支払の方法・申込期間等)を取締役会決議(取締役会設置会社の場合)で定めます(イ誤り:株主総会特別決議は不要)。社債管理者(702条):702条本文「会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない」。702条但書「ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者を保護することができるものとして法務省令で定める場合は、この限りでない」。社債権者集会の決議の認可(734条1項):「社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない」(裁判所の認可が効力要件)。社債権者集会の決議の効力(735条):認可を受けた決議は「当該社債の社債権者の全部に対してその効力を有する」(総社債権者への拘束力)。

【試験での位置づけ:行政書士試験における社債の頻出論点】

行政書士試験での社債の典型的な問われ方は①社債権者と株主の清算優先順位(社債権者が優先)、②社債発行の手続(取締役会決議で足りる・株主総会不要)、③社債権者集会の決議と裁判所認可(734条1項・認可決議の全社債権者への効力は735条)、④社債管理者の設置義務と例外(702条但書:大口社債は例外)の4点です。アの「株主より優先順位が低い(誤り)」は社債の基本的性質を問う典型的な引っかけです。またエの「ワラント債の行使で社債が消滅(誤り)」は転換社債型新株予約権付社債との混同を問うものです。実務では「ワラント債(行使しても社債存続)」と「転換社債(行使で社債が株式に転換・消滅)」を区別することが重要ですが、現行会社法では「転換社債型新株予約権付社債」が正式名称で、社債と新株予約権が分離できない設計です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。社債権者は債権者として株主より優先して弁済を受ける(清算優先順位:担保付社債権者>一般債権者(社債含む)>株主)。「優先順位が低い」は完全に逆。
  • イ: 誤り。社債発行の決定は676条により取締役会(取締役会設置会社)が行う。株主総会特別決議は社債の発行には不要。社債の発行は「資金調達の経営判断」であり取締役会の専決事項として位置づけられる。
  • ウ: 正しい。社債権者集会の決議は裁判所の認可を受けなければ効力を生じず(734条1項)、認可を受けた決議は当該社債の社債権者の全部に対して効力を有する(735条)。
  • エ: 誤り。新株予約権付社債(ワラント債)の新株予約権を行使しても、社債部分は別途残存(行使により社債が自動消滅するわけではない)。エが述べているのは「転換社債型新株予約権付社債(CB:Convertible Bond)」の行使(社債→株式転換)であり、ワラント債の特性と異なる。ただし現行会社法では「転換社債型新株予約権付社債」として「社債と新株予約権が分離不可能」な設計が認められており、行使時の社債の扱いは会社・社債権者間の約定による。
  • オ: 誤り。702条但書(各社債の金額が1億円以上の場合等)の例外により社債管理者の設置が不要な場合がある。「常に義務付けられている」という絶対的表現が誤り。

【根拠条文】

会社法 第676条(募集社債に関する事項の決定)

会社法 第702条(社債管理者の設置義務・但書による例外)

会社法 第715条以下(社債権者集会)

会社法 第734条第1項(社債権者集会の決議の認可・効力要件)

会社法 第735条(認可を受けた決議の総社債権者への効力)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第676条(募集社債に関する事項の決定)、会社法第702条(社債管理者の設置義務・例外あり)、会社法第734条(社債権者集会の決議の認可)、会社法第735条(社債権者集会の決議の効力=総社債権者への効力) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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