商法・会社法61商法・会社法/組織再編(債権者保護)

行政書士 商法・会社法 問61:商法・会社法/組織再編(債権者保護)

吸収合併における債権者異議手続に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 吸収合併に際して、消滅会社の債権者および存続会社の債権者は、合併に対して異議を述べることができ、それぞれの会社が債権者異議手続を経なければならない。
  • 消滅会社は、吸収合併に際して、合併の内容を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別の催告を行わなければならないが、定款に規定する公告方法(日刊新聞紙または電子公告)を合わせて行った場合には各別の催告を省略することができる。
  • 債権者が法定の期間内(合併公告・催告から原則1か月以上)に異議を述べなかった場合、当該債権者は合併を承認したものとみなされる。
  • 債権者が適法に異議を述べた場合、会社はその債権者に対して弁済をし、もしくは相当の担保を提供し、またはその債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。
  • 存続会社の債権者が適切に債権者異議手続を行わずに合併が実施された場合、当該債権者は合併無効の訴え(会社法828条1項7号)を提起することができるが、提訴期間は合併効力発生日から6か月以内とされている。正答
正答:存続会社の債権者が適切に債権者異議手続を行わずに合併が実施された場合、当該債権者は合併無効の訴え(会社法828条1項7号)を提起することができるが、提訴期間は合併効力発生日から6か月以内とされている。

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吸収合併の債権者異議手続が問われています。オが誤り。828条1項7号の吸収合併無効の訴えの提訴権者は「当事会社の株主・取締役・監査役等」です。債権者は合併無効の訴えの提訴権者に含まれません。「債権者が異議手続を利用できなかった場合の保護」は合併の効力に関して合併無効の訴えで争うのではなく、別途民事訴訟等で対応する必要があります。アは正しい(消滅会社・存続会社の双方が手続を要する:789条・799条)。イは正しい(官報公告+定款所定の公告方法で各別催告省略可)。ウは正しい(期間内不異議→承認とみなす)。エは正しい(弁済・担保提供・信託)。

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債権者異議手続の流れ(789条・799条):①官報公告と知れている債権者への各別の催告(催告省略が可能な場合:定款に規定する方法=電子公告または日刊新聞紙での公告を合わせて行った場合:イ正しい)。②法定期間(1か月以上)の経過:期間内に異議を述べなかった債権者は合併を承認したとみなされます(ウ正しい)。③適法な異議が述べられた場合:会社は弁済・担保提供・信託のいずれかで債権者を保護しなければなりません(エ正しい)。オが誤りの理由:828条1項7号(吸収合併無効の訴え)の提訴権者は「当事会社(存続会社・消滅会社)の株主等、取締役、監査役、清算人等」と規定されており、債権者は提訴権者に含まれません。債権者異議手続を実施せずに合併した場合でも、債権者が「合併無効の訴え」で争うことはできません(保護は別途民事上の手続で)。なお828条2項7号は提訴権者を列挙し、「合併によって設立された会社若しくは吸収合併後の存続会社の株主等」とされており、債権者は含まれていません。提訴期間は効力発生日から6か月以内(828条1項7号:オの期間は正しいが提訴権者が誤り)。

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【理論的背景:債権者保護の設計思想と合併無効訴訟の対世効】

合併は「消滅会社の全権利義務が存続会社に包括的に移転する」という特殊な行為であり、消滅会社の債権者にとっては「債務者の実質が変わる」という影響があります。消滅会社の債権者は、合併後に責任財産が変化する(存続会社の財産に置き換わる)ため、存続会社の財務状況が悪化していれば回収可能性が下がります。逆に、存続会社の債権者は「消滅会社の既存債務が存続会社に移転してくる」ことで負債が増加するリスクがあります。債権者異議手続はこれらのリスクに対応するため、合併前に①情報提供(公告・催告)し、②異議のある債権者には個別に弁済・担保提供を行う仕組みです。合併無効の訴えの提訴権者が「株主等・役員等(債権者を除く)」に限定されているのは、一度実施された合併を無効とすることの影響が甚大(包括的な法律関係の変動が元に戻る)であるため、取引の安全を優先して無効主張を制限したものです。

【条文構造:789条・799条と828条の関係】

会社法789条(消滅会社等の手続):1項「吸収合併をする場合には、消滅会社等(合併により消滅する会社等)は、一定の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければならない」。789条3項(催告省略):官報公告に加えて定款所定の公告方法(電子公告・日刊新聞紙)を実施した場合は各別の催告が不要(但し不法行為によって生じた債権の債権者は省略できない)。789条5項(異議対応):「債権者が異議を述べた場合、弁済・担保提供・信託」による保護が必要。799条は存続会社の債権者保護について789条に準じた内容を規定します。828条1項7号(合併無効訴訟):「吸収合併の効力が生じた日から6か月以内」が提訴期間。828条2項7号(提訴権者):株主等・取締役・監査役等(債権者は含まない)。

【試験での位置づけ:行政書士試験における債権者異議手続と合併無効訴訟の頻出論点】

行政書士試験での合併の債権者保護・無効訴訟の典型的な問われ方は①債権者異議手続の内容(公告・個別催告・省略要件・異議後の弁済等)、②合併無効の訴えの提訴権者(株主・役員等・債権者は不可)と期間(6か月以内)の3点が頻出です。オのような「債権者が合併無効の訴えを提起できる(誤り:提訴権者に含まれない)」は最頻出の引っかけです。また「公告と個別催告を実施したうえで各別の催告を省略できる要件(定款所定の公告方法の二重公告)」(イ)も重要論点です。なお不法行為による債権の債権者は二重公告でも個別催告を省略できない(789条3項但書)という例外も押さえておくと発展問題に対応できます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。消滅会社(789条)と存続会社(799条)の双方が債権者異議手続を要する。消滅会社の債権者は「債務者が変わる」、存続会社の債権者は「財務が変化する」リスクへの保護手続として双方に義務付け。
  • イ: 正しい。789条3項の「催告省略要件」:定款所定の公告方法(電子公告・日刊新聞紙)を官報公告と合わせて実施した場合に各別の催告を省略できる。ただし不法行為による債権者は省略不可(但書)。
  • ウ: 正しい。法定期間(1か月以上)内に異議を述べなかった場合、承認とみなされる。期間経過後は追加的に異議を述べることはできない(合併手続の確定性確保)。
  • エ: 正しい。789条5項(消滅会社の異議対応)の正確な内容。弁済・担保提供・信託の三択で債権者を保護。このいずれかが実施されれば合併手続を続行できる。
  • オ: 誤り。828条2項7号の提訴権者に「債権者」は含まれない(株主等・役員等に限定)。なお提訴期間「6か月以内」という部分は828条1項7号通り正確だが、「債権者が提訴できる」という前提が誤り。債権者は別途の民事訴訟(債権者代位・詐害行為取消等)での保護を求めることになる。

【根拠条文】

会社法 第789条第1項・第3項・第5項(消滅会社の債権者異議手続・催告省略・異議への対応)

会社法 第799条(存続会社の債権者異議手続)

会社法 第828条第1項第7号・第2項第7号(吸収合併無効の訴え・提訴期間・提訴権者)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第789条・第799条(債権者異議手続)、会社法第828条第1項第7号(合併無効の訴え・提訴期間) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

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