行政書士 商法・会社法 問63:商法・会社法/解散・清算
株式会社の解散および清算に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア株式会社は、定款で定めた存続期間の満了・定款で定めた解散事由の発生・株主総会の決議・合併(消滅会社の場合)・破産手続開始の決定等によって解散する。
- イ株主総会の決議による解散(任意解散)には、株主総会の特別決議が必要であり、普通決議によって解散することはできない。
- ウ会社の解散後、清算手続が開始されるが、清算中の会社は清算の目的の範囲内においてのみ存続するものとされ、清算結了の登記を完了した時点で会社は消滅する。正答
- エ解散した株式会社の清算人は、就任後遅滞なく会社の財産の現況を調査し、清算開始の時における財産目録および貸借対照表を作成し、これらを株主総会の承認を受けなければならない。
- オ清算手続において、残余財産は会社の負債を全額弁済した後に株主に分配されるが、種類株式として「残余財産の分配について優先的内容」を定めた株式がある場合、当該種類株主はその内容に応じた優先的分配を受ける。
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株式会社の解散・清算が問われています。ウが誤り。解散後の清算株式会社は「清算の目的の範囲内において、清算が結了するまでなお存続する」という点は正しいですが(476条)、会社が消滅するのは「清算結了の登記を完了した時点」ではなく、清算事務が終了し株主総会で清算事務報告の承認を受けた時点(清算結了の時点)です(507条)。清算結了の登記(929条)は確認的(報告的)効力にとどまり、登記が会社消滅の効力発生要件ではありません。アは正しい(471条各号の解散事由)。イは正しい(309条2項11号:特別決議が必要)。エは正しい(492条:清算人の財産目録等の作成・株主総会承認義務)。オは正しい(108条1項2号:残余財産分配優先種類株式)。
解散事由(471条):①定款に定めた存続期間の満了(1号)、②定款で定めた解散事由の発生(2号)、③株主総会の特別決議(3号:309条2項11号:イ正しい)、④合併による消滅(5号)、⑤破産手続開始の決定(6号)、⑥特定目的会社等の解散(7号)等。清算株式会社の能力(476条):「清算株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす」。ウの「清算の目的の範囲内において存続」という部分は正しいですが、「清算結了の登記を完了した時点で消滅」という部分が誤りです。会社が消滅するのは「清算結了」時(清算事務終了・清算事務報告の株主総会承認:507条)であり、清算結了の登記(929条)は確認的な届出であって消滅の効力発生要件ではないと解されています(ウ誤りの理由)。清算人の義務(492条):清算人は就任後遅滞なく「財産目録・貸借対照表を作成」して「株主総会(定時または臨時)の承認」を受ける義務があります(エ正しい)。残余財産の分配(504条・108条1項2号):残余財産は全負債弁済後に株主に分配されますが、残余財産分配優先種類株式の保有者は優先的に分配を受けます(オ正しい)。
【理論的背景:解散後の会社の法的地位と清算手続の目的】
株式会社が解散した後も「清算の目的の範囲内」で法人格が存続するのは、現実の財産処理・債権回収・債務弁済・残余財産分配という手続を完了させるために会社という器が必要だからです。解散決議だけで会社が即座に消滅すると、未了の契約処理・債務弁済が法的に宙に浮いてしまいます。清算手続は①財産の現況調査・目録作成→②債権の取立て→③既存債務の弁済→④残余財産の株主への分配→⑤清算結了という流れで行われます。清算人(解散前の取締役が原則として清算人となる:478条1項)が手続を主導し、株主総会と裁判所の監督を受けます。なお、破産手続開始の決定による解散の場合は「清算手続」ではなく「破産手続」が適用されるため、清算の規定(481条以下)の多くは適用されません。
【条文構造:471条・475条・476条・492条・507条の体系】
会社法471条(解散の事由):1号〜6号に解散事由を列挙。3号「株主総会の決議」が任意解散(特別決議要:309条2項11号)。会社法475条(清算の開始原因):「株式会社は、次に掲げる場合には(中略)清算をしなければならない。一 解散した場合(合併により当該株式会社が消滅する場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)」。会社法476条(清算株式会社の能力):「清算株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす」。この規定が解散後も法人格が継続する根拠です。会社の消滅時点は清算結了(清算事務終了・清算事務報告の株主総会承認:507条3項)であり、清算結了後の登記(929条)は確認的(報告的)届出で消滅の効力発生要件ではありません(通説)。会社法492条(財産目録等の作成):「清算人(中略)は、その就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し(中略)財産目録及び貸借対照表を作成しなければならない」。492条3項で株主総会の承認を要する。
【試験での位置づけ:行政書士試験における解散・清算の頻出論点】
行政書士試験での解散・清算の典型的な問われ方は①解散事由の列挙(特に471条3号:株主総会特別決議が任意解散の要件)、②清算株式会社の存続(476条:清算目的の範囲内・清算結了まで存続)、③清算人の義務(財産目録・貸借対照表の作成・株主総会承認:492条)、④残余財産の分配順位(債権者優先・その後株主)の4点が典型です。ウのような「清算結了の登記の完了で消滅(誤り:清算結了の時点=清算事務報告の承認時に消滅し、登記は確認的)」は、登記と実体的効果の関係を問う問題として出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。471条各号(定款の存続期間・解散事由・株主総会決議・合併・破産)が主要解散事由。なお裁判所による解散命令・解散判決(824条)もあるが頻度は低い。
- イ: 正しい。309条2項11号「解散の決議」は特別決議(出席議決権の3分の2以上・定足数は議決権の過半数・定款で3分の1以上まで緩和可)。重要事項として普通決議では不足。
- ウ: 誤り。会社が消滅し法人格を失うのは「清算結了」の時点(清算事務が終了し、清算人が作成した決算報告を株主総会が承認したとき:507条3項)である。清算結了の登記(929条)は確認的(報告的)届出であり、登記の完了が会社消滅の効力発生要件ではない。「清算結了の登記を完了した時点で消滅する」とする本肢は誤り。
- エ: 正しい。492条(就任後遅滞なく財産目録・貸借対照表を作成)と492条3項(株主総会の承認)の正確な内容。
- オ: 正しい。清算は「負債全額弁済→残余財産を株主へ」という順序であり、残余財産分配優先種類株式(108条1項2号)の保有者はその内容に応じた優先的分配を受ける(504条3項・108条2項2号の定款の定めによる)。
【根拠条文】
会社法 第471条各号(解散の事由の列挙)
会社法 第475条第1号(清算の開始原因・解散した場合)
会社法 第476条(清算株式会社の能力・清算の目的の範囲内で清算結了まで存続)
会社法 第492条第1項・第3項(清算人の財産目録等作成義務・株主総会承認)
会社法 第507条(清算事務の終了等・決算報告の株主総会承認=清算結了)
会社法 第504条(残余財産の分配方法・種類株主の優先)
会社法 第309条第2項第11号(解散の特別決議要件)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第471条(解散の事由)、会社法第475条(清算の開始原因)、会社法第476条(清算株式会社の能力・清算の目的の範囲内で存続)、会社法第492条(清算人の財産目録等の作成)、会社法第507条(清算事務の終了等・清算結了) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。