行政書士 商法・会社法 問65:商法・会社法/持分会社(合名会社)
合名会社における社員の退社および持分の払戻しに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア合名会社の社員は、やむを得ない事由がある場合には、会社の同意なく退社することができ、事業年度の途中でも退社できる。ただし、解散を会社に請求することにより退社することも認められている。
- イ合名会社の社員は、定款に定めた時期の到来・その他の退社事由の発生のほか、死亡・破産・成年被後見・除名等により会社を退社する。
- ウ退社した社員は、その出資の種類を問わず、退社の時における会社の財産状況に従って持分の払戻しを受けることができ、その持分は、出資の種類を問わず金銭で払い戻すことができる。
- エ退社した社員は、退社前に生じた会社の債務についても、退社の登記前に生じた債務に限り責任を負い、退社の登記後は一切の責任を免れる。正答
- オ合名会社の社員の退社に際し、持分の払戻しにより会社財産が不足する場合、会社の債権者の保護のため、退社社員は払戻しを受けた額を限度として会社の債務について責任を負う場合がある。
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合名会社の退社・持分払戻しが問われています。エが誤り。退社した社員は退社の登記後も一定期間(2年間)は退社前に生じた会社の債務について責任を負い続けます(612条:退社の登記前に生じた会社の債務について従前の責任の範囲内で責任を負い、その責任は登記後2年以内に請求・請求の予告をしない債権者に対しては登記後2年を経過した時に消滅する)。したがって「退社の登記後は一切の責任を免れる」は誤りです。アは正しい(606条3項:やむを得ない事由がある場合はいつでも退社できる任意退社)。イは正しい(607条:法定退社事由の列挙=死亡・破産・解散・後見開始・除名等)。ウは正しい(611条1項・3項:退社した社員は出資の種類を問わず財産状況に従った持分の払戻しを受けられ、その持分は出資の種類を問わず金銭で払い戻すことができる)。オは正しい(612条の趣旨:払戻し限度の責任)。
退社事由(606条・607条):①任意退社(606条:存続期間の定めがない場合等は事業年度終了時に6箇月前の予告で退社でき、やむを得ない事由があるときはいつでも退社できる)、②法定退社(607条:定款で定めた事由の発生・総社員の同意・死亡・合併・破産手続開始の決定・解散・後見開始の審判・除名):イ正しい。なお社員はやむを得ない事由があるときはいつでも退社できます(606条3項:ア正しい)。持分の払戻し(611条):退社した社員は、その出資の種類を問わず、退社の時の財産状況に従った持分の払戻しを受けられます(611条1項・2項)。払戻しの方法:611条3項は「退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる」と定めており、出資の種類が金銭以外(例:現物出資・労務)でも、払戻しは金銭で行うことが認められています(ウ正しい)。退社後の責任(612条):退社した社員は退社前(登記前)に生じた会社の債務について従前の責任の範囲内で責任を負い、その責任は退社の登記後2年以内に請求(または予告)をしない債権者に対しては登記後2年を経過した時に消滅します(612条:エの「登記後は一切免れる」は誤り)。払戻し後の責任(612条関連):退社社員が持分の払戻しを受けた後、会社の債権者が保護されない場合には払戻し額を限度として責任を負う場合があります(オ正しい)。
【理論的背景:持分会社の社員責任と退社後の保護構造】
合名会社は全社員が無限責任を負う持分会社です(580条1項)。社員が退社した後も、退社前に生じた債務については一定期間責任を負うとされています。この「退社後の継続責任」の根拠は、①会社の債権者は社員の信用(無限責任)を前提に取引した可能性があること、②退社の事実を知らない債権者を保護する必要があることです。退社の登記(商業登記)によって対外的に退社が公示されますが、2年という期間は「合理的な期間内に権利行使した債権者」を保護するためのものです。合名会社における持分の払戻しは、株式会社の配当(剰余金配当規制)と異なり、会社財産と個人財産が事実上連動しているため、会社の財産状況に応じた払戻しが可能とされています。ただし払戻しによって会社の財産が減少し、会社の債権者に損害が生じる可能性があるため、612条の退社後責任が設けられています。
【条文構造:606条・607条・611条・612条の体系】
会社法606条(任意退社):1項「持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、6箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない」。3項「前2項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる」(やむを得ない事由による随時退社)。会社法607条(法定退社):1項各号「定款で定めた事由の発生・総社員の同意・死亡・合併・破産手続開始の決定・解散・後見開始の審判・除名」。会社法611条(退社に伴う持分の払戻し):1項「退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる」、2項「退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない」、3項「退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる」。会社法612条(退社社員の責任):1項「退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う」、2項「前項の責任は、同項の登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する」。
【試験での位置づけ:行政書士試験における合名会社・持分会社の頻出論点】
行政書士試験での合名会社・持分会社の典型的な問われ方は①社員の無限責任(580条:補充的責任・直接連帯無限)と有限責任(合同会社の有限責任社員)の比較、②退社事由(任意退社:606条・法定退社:607条)、③退社後の責任(612条:退社登記後2年内の請求に対して責任あり)、④持分の払戻し(611条:財産状況に応じた払戻し・出資の種類を問わず金銭払戻し可)の4点が典型です。エの「退社登記後は一切免責(誤り:2年間は責任継続)」は最頻出の引っかけです。また「やむを得ない事由」による随時退社(事業年度途中でも可:606条3項)と存続期間の定めがない場合等の「予告退社」(事業年度終了時・6箇月前予告:606条1項)の区別も重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。606条3項「各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる」(事業年度の途中でも退社可)。また持分会社の社員は会社に対し解散請求をすることもできる(833条2項)。
- イ: 正しい。607条1項各号が列挙する法定退社事由(定款で定めた事由の発生・総社員の同意・死亡・合併・破産手続開始の決定・解散・後見開始の審判・除名)に該当する。
- ウ: 正しい。611条1項「退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる」、2項「計算は退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない」、3項「退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる」。出資が金銭以外(現物・労務)でも金銭で払戻しを受けられる。
- エ: 誤り。612条1項により退社した社員は退社の登記前に生じた会社の債務について従前の責任の範囲内で責任を負い、612条2項により当該責任は退社の登記後2年以内に請求または予告をした債権者に対しては登記後2年を経過した時に消滅する。すなわち登記後2年間は責任が継続するため、「退社の登記後は一切の責任を免れる」は612条に反し誤り。
- オ: 正しい。持分の払戻しによって会社財産が減少し、会社の債権者への弁済が困難になる場合、退社社員は払戻し額を限度として責任を負う可能性がある(612条の実質的な根拠)。
【根拠条文】
会社法 第606条第1項・第3項(任意退社・予告退社・やむを得ない事由による随時退社)
会社法 第607条第1項(法定退社事由の列挙)
会社法 第611条第1項・第2項・第3項(退社に伴う持分の払戻し・財産状況基準・出資の種類を問わず金銭払戻し可)
会社法 第612条第1項・第2項(退社社員の責任・退社登記後2年以内に請求した債権者への責任・2年経過で消滅)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第606条(任意退社)、会社法第607条(法定退社)、会社法第611条(退社に伴う持分の払戻し)、会社法第612条(退社社員の責任・退社登記後2年) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。