行政書士 商法・会社法 問67:商法・会社法/会社の設立
設立中の会社および発起人の権限に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア設立中の会社とは、定款作成後から設立登記完了前の段階の会社をいい、この段階における発起人の行為は、原則として設立後の会社に帰属する。
- イ発起人が設立中の会社の機関として行った「設立に必要な行為」は、会社成立後に当然に会社に帰属するが、設立の目的の範囲を超えた行為(いわゆる「開業準備行為」)については、設立後の会社に当然に帰属するものではない。
- ウ発起人が複数いる場合、発起人全員が署名(または記名押印)した定款を作成し、公証人の認証を受けることが必要であるが、発起人全員が定款に同時に署名しなければ定款としての効力は生じない。正答
- エ設立費用(発起人が会社設立のために支出した費用)は定款への記載が必要であり、定款に記載されていない設立費用は会社に負担させることができないが、公証人への定款認証費用や設立登記の登録免許税は法定の例外として会社に当然帰属する。
- オ発起人は、会社成立前に設立に関する費用を立替えた場合、会社成立後に当該費用を会社に対して請求することができる。ただし、定款に変態設立事項として記載されていない設立費用については、会社に請求できない場合がある。
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設立中の会社・発起人の権限が問われています。ウが誤り。発起人が複数いる場合でも、全員が同時に署名することは会社法上の要件ではなく、順次(個別に)署名することも定款として有効です(26条は全員の署名を要求しますが「同時」は要求しない)。アは正しい(設立中の会社の行為→成立後の会社帰属)。イは正しい(最判昭28.12.3:開業準備行為は会社に当然帰属しない)。エは正しい(28条:変態設立事項の定款記載と例外的な法定費用)。オは正しい方向(設立費用の立替えと会社への請求)。
設立中の会社の法的地位:設立中の会社は実体法上の団体として認められる(権利能力なき社団に類似)とされており、発起人は設立中の会社の機関として行為します(ア正しい)。発起人が「会社設立のため(設立のために必要な行為)」に行った行為は設立後の会社に帰属しますが、開業準備行為(設立後の事業活動の準備:例えば「店舗の賃借契約」「商品の仕入れ予約」等)は設立中の会社の行為として会社への帰属が認められず、発起人個人の行為として処理されます(イ正しい・最判昭28.12.3)。定款の作成と署名(26条):26条1項「株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し(中略)なければならない」。「全員が署名」という要件はありますが、「同時に署名」という要件はありません(ウ誤りの根拠)。実務上、定款は発起人が順次署名・認証することもあります。変態設立事項・設立費用(28条):28条4号は「設立費用」を変態設立事項の一つとして定款記載を要求します。ただし公証人への定款認証費用・登録免許税等は定款記載不要で会社に帰属する法定費用とされます(エ正しい)。
【理論的背景:設立中の会社と発起人の権限の限界】
設立中の会社(法人格取得前の会社)は、民法上の「権利能力なき社団」に類似した実体として扱われますが、会社法の目的論・解釈論上独自の位置づけがなされています。判例(最判昭28.12.3)は「設立中の会社を実体として認め、発起人の行為のうち設立に必要な範囲のものが成立後の会社に帰属する」とする見解を採用しています。発起人の権限の外縁は「設立目的の達成のために必要な行為」であり、開業準備行為(将来の営業に向けた事業活動の準備)は設立目的の範囲外として会社への帰属が否定されます。これは「設立中の会社の権利能力は設立目的に限定される」という目的的制限の考え方によります。なお変態設立事項(28条:現物出資・財産引受・発起人への報酬・設立費用)の定款記載と検査役調査(33条)は、設立段階での発起人による会社財産の不当取得を防ぐための制度です。
【条文構造:26条・28条・33条の体系】
会社法26条1項(定款の作成):「株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない」。「全員が署名」という要件のみで「同時」という要件はない(ウ誤りの根拠)。会社法28条(変態設立事項):1号「現物出資」・2号「財産引受」・3号「発起人への報酬その他の特別の利益」・4号「設立費用」の4種が定款に記載しなければ効力を生じない事項として規定されます。28条4号かっこ書により「定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるもの」は除外され、会社法施行規則5条が定款認証手数料・定款印紙税・設立時発行株式の払込取扱機関の手数料・検査役の報酬・設立登記の登録免許税を法定費用として列挙します(これらは定款記載不要で会社が負担)。会社法33条(検査役の調査):現物出資・財産引受について原則として裁判所の選任する検査役の調査が必要(33条10項の省略事由:定款記載の価額の総額が500万円以下・市場価格のある有価証券・弁護士等の証明+不動産は不動産鑑定士の鑑定評価)。
【試験での位置づけ:行政書士試験における設立中の会社・発起人権限の頻出論点】
行政書士試験での設立中の会社・発起人権限の典型的な問われ方は①設立中の会社への行為帰属(設立に必要な行為のみ帰属・開業準備行為は帰属しない:最判昭28.12.3)、②定款の作成(26条:発起人全員の署名・公証人認証が原始定款の有効要件・同時署名は不要)、③変態設立事項(28条:4種類・検査役調査の原則と例外)の3点が典型です。ウの「同時署名が必要(誤り)」と「開業準備行為の帰属(誤り:帰属しない)」が頻出の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。設立中の会社→発起人の設立行為の帰属先。設立登記によって完成した会社に、設立中の行為が「同一性の連続」として引き継がれる(設立中の会社≒成立後の会社という理論的根拠)。
- イ: 正しい。最判昭28.12.3が開業準備行為(設立後の営業目的のための行為)は設立中の会社の権限外として会社への当然帰属を否定。発起人個人が責任を負う。
- ウ: 誤り。26条1項「全員がこれに署名し」という要件はあるが、「同時に署名」という要件はない。電子定款も含め、発起人が順次(個別に・異なる時期・場所で)署名して公証人認証を受けることも有効。
- エ: 正しい。28条4号の変態設立事項として「設立費用」は定款記載を要求されるが、28条4号かっこ書・会社法施行規則5条により「定款認証の手数料・設立登記の登録免許税」等の法定費用は除外(定款記載不要で会社に帰属)。
- オ: 正しい。会社法28条4号により「株式会社の負担する設立に関する費用」は変態設立事項であり、定款に記載しなければその効力を生じない。発起人が立替えた設立費用は、定款に記載され検査役の調査等を経た範囲で会社に請求できる。定款記載のない設立費用は原則として発起人負担となり会社への請求ができない(ただし定款認証手数料・設立登記の登録免許税等の法定費用は28条4号かっこ書・会社法施行規則5条により定款記載を要せず会社が負担する)。
【根拠条文】
会社法 第26条第1項(定款の作成・発起人全員の署名・同時署名は不要)
会社法 第28条各号・但書(変態設立事項・設立費用の定款記載要件・法定費用の除外)
会社法 第33条(検査役の調査・省略事由)
最判昭和28年12月3日(開業準備行為の設立中の会社への帰属否定)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第26条(定款の作成・発起人全員の署名)、会社法第28条(変態設立事項・設立費用)、最判昭28.12.3(開業準備行為の会社帰属否定) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。