商法・会社法68商法・会社法/機関(取締役会非設置会社)

行政書士 商法・会社法 問68:商法・会社法/機関(取締役会非設置会社)

取締役会を設置しない株式会社(取締役会非設置会社)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 取締役会を設置しない株式会社では、取締役が1人の場合は当然にその取締役が代表取締役となり、取締役が複数の場合は全員が代表権を持ち、全員が会社を代表することができる。正答
  • 取締役会を設置しない株式会社の株主総会は、会社に関する一切の事項について決議することができるが、業務執行の決定に関しては取締役一人では決定できず、常に取締役全員の過半数の決議が必要とされる。
  • 取締役会を設置しない株式会社においても、監査役を設置することができるが、この場合の監査役の権限は業務監査に限られ、会計監査は含まれない。
  • 取締役会を設置しない非公開会社においては、株主総会の権限は取締役会設置会社と同様に会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限定されており、業務執行事項を株主総会が決議することはできない。
  • 取締役会を設置しない株式会社では、公開会社のように取締役会設置が義務付けられる場合を除き、取締役の人数に最低人数・最高人数の制限はなく、取締役1人のみで会社を設立することも可能である。
正答:取締役会を設置しない株式会社では、取締役が1人の場合は当然にその取締役が代表取締役となり、取締役が複数の場合は全員が代表権を持ち、全員が会社を代表することができる。

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取締役会非設置会社の機関設計が問われています。アが正しい。取締役会を設置しない会社では、取締役が複数いる場合は各取締役が代表権を持ちます(349条1項:各取締役が代表取締役)。取締役が1人の場合は当然にその者が代表権を持ちます(アの記述は正しい)。イは誤りで、業務執行の決定は取締役の過半数(348条2項)で行いますが、定款に別段の定めがある場合や単純な業務執行判断は個々の取締役が行うこともできます。ウは誤りで、取締役会非設置会社の監査役の権限は会計監査に限定される場合があります(389条1項:定款で会計監査に限定できる)。エは概ね正しい方向。オは正しい内容ですが(取締役1人での設立は可能)、アが一義的に正しい選択肢として正答となります。

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代表取締役の選任(349条):349条1項「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない」、2項「前項本文の取締役が2人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する」(取締役の各自代表が原則:アの根拠)。取締役が1人の場合は当然にその取締役が代表権を持ちます。取締役が複数の場合は、定款・定款の定めに基づく取締役の互選・株主総会の決議によって代表取締役を定めることができますが(349条3項)、その選定がない場合は各取締役が代表権を持ちます(ア正しい)。業務執行の決定(348条):業務執行は各取締役が行うことができますが(348条1項)、業務執行の決定は取締役の過半数で行います(348条2項)。ただしイの「常に取締役全員の過半数の決議が必要」という絶対的な記述は誤りで(定款で別段の定め等も可能)、通常の業務執行判断は個々の取締役も行える場合があります(イ誤り)。監査役の権限(389条):取締役会非設置会社(非公開かつ非大会社)では、定款の定めにより監査役の権限を「会計に関する監査のみに限定」することができます(389条1項)。ウの「業務監査に限られ会計監査は含まれない」は逆(会計監査に限定できる設計・業務監査も持てる)で誤りです。

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【理論的背景:取締役会非設置会社の機関設計の柔軟性】

会社法は取締役会設置会社(大規模・公開会社等)と取締役会非設置会社(小規模・閉鎖会社等)で機関設計の規律を大きく変えています。取締役会設置会社では「取締役会への業務執行権限の集中・株主総会の権限限定(295条2項)」という垂直的分業が求められますが、取締役会非設置会社(典型的には中小同族会社)では「株主総会が一切の事項を決議できる(295条1項)」という広い権限が認められています。取締役会非設置会社の取締役は原則として各自が代表権と業務執行権を持つため、「代表取締役の選定(取締役会決議:362条3項)」という手続が不要であり、各自が直接会社を代表できる柔軟な設計です。ただし業務執行の「決定」は過半数が必要(348条2項)とすることで、複数取締役間での意思決定のルールが設けられています。

【条文構造:349条・348条・295条・389条の体系】

会社法349条1項「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない」。349条2項「前項本文の取締役が2人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する」(取締役の各自代表=アの根拠)。349条3項「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる」(取締役会非設置会社では選定により代表取締役を定めることも可)。会社法348条(業務執行):348条1項「取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社の業務を執行する」。348条2項「取締役が2人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する」。会社法295条1項(取締役会非設置会社の株主総会権限):「株主総会は(中略)株式会社に関する一切の事項について決議することができる」(取締役会設置会社:2項で限定)。会社法389条1項(監査役の権限制限):「公開会社でなく、かつ、大会社でない株式会社は、第381条第1項の規定にかかわらず、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる」(会計監査のみに限定可・業務監査権限を与えるか否かは定款設計次第)。

【試験での位置づけ:行政書士試験における取締役会非設置会社の頻出論点】

行政書士試験での取締役会非設置会社の典型的な問われ方は①各取締役が代表権を持つ(349条1項:選定なければ各自が代表)、②株主総会が一切の事項を決議できる(295条1項:非設置会社の広権限)、③監査役の会計監査限定の定款設計(389条1項:非大会社・非公開会社のみ可)の3点が典型です。ウの「業務監査に限られ会計監査は含まれない(逆:会計監査に限定できる)」は監査役権限の誤解を問う典型的な引っかけです。またアの「各取締役が代表権を持つ(取締役会設置会社では取締役会が代表取締役を選定:362条3項との比較)」も頻出の対比論点です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。349条1項・2項により、代表取締役の選定がない取締役会非設置会社では各取締役が代表権を持つ。取締役1人なら当然その者が代表。複数なら全員が代表権(定款等で特定の者を代表取締役に選定することも可能)。
  • イ: 誤り。業務執行の「決定」(重要な業務に関する判断)は348条2項により取締役の過半数で行うが、日常的な業務執行は個々の取締役が行うことができる(348条1項:各取締役が業務を執行する)。「常に全員の過半数の決議が必要」という絶対的記述が誤り。
  • ウ: 誤り(逆)。389条1項は「公開会社でなく大会社でない株式会社」では監査役の権限を「会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる」と規定。つまり「会計監査のみに限定できる」という設計であり、「業務監査に限られ会計監査を含まない」は真逆。
  • エ: 概ね正しい。取締役会非設置会社では株主総会が一切の事項を決議でき(295条1項)、業務執行事項も株主総会が決定できる。取締役への委任後でも株主総会の決議・承認を要求する定款の定めも許容される。
  • オ: 正しい内容。取締役の人数に会社法上の最低・最高の法定制限はなく、1人でも設立可能(非公開会社。ただし委員会型設置会社等は複数が必要)。しかしアが一義的に正しいためオを正答とする根拠は薄い。

【根拠条文】

会社法 第295条第1項(取締役会非設置会社の株主総会の権限・一切の事項)

会社法 第348条第1項・第2項(取締役の業務執行・業務執行決定の過半数要件)

会社法 第349条第1項・第2項(各取締役が代表権を持つ原則・選定がない場合)

会社法 第389条第1項(監査役の権限を会計に限定できる定款設計・非大会社・非公開会社)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第349条第1項(代表取締役の選任・各取締役が代表権を持つ原則)、会社法第348条(業務執行の決定・取締役の過半数)、会社法第295条第1項(取締役会非設置会社の株主総会の権限) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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