商法・会社法69商法・会社法/商行為(商事留置権)

行政書士 商法・会社法 問69:商法・会社法/商行為(商事留置権)

商事留置権(商法第521条)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 商事留置権は、商人間において双方のために商行為となる行為によって生じた債権を有する者が、その弁済を受けるまで相手方の所有に属する物・有価証券を留置することができる権利であり、民法上の留置権と異なり、債権と占有物との間に牽連性は不要とされる。
  • 商事留置権は、当事者双方が商人であることが要件であるが、留置される物が「商行為によって生じた債権」に牽連する必要はなく、被担保債権の発生原因が留置物と無関係であっても成立しうる。
  • 商事留置権を有する債権者が商人間の破産手続において留置権を主張した場合、当該留置権は破産法上「特別の先取特権があるものとみなす」と定められており(破産法66条1項)、留置権者は別除権者として優先弁済を受けることができる。
  • 商事留置権と民法上の留置権は、いずれも担保目的物を「占有」することで行使するものであり、物の占有を失った場合には原則として留置権が消滅する。
  • 自己の生産した農産物を店舗等の設備を用いずに反復継続して販売するにすぎない農業者は、商法上の商人に当たらないが、商事留置権は被担保債権が商行為から生じていれば足りるため、当事者の一方が商人でない農業者であっても、その者と商人との間で商事留置権が成立する。正答
正答:自己の生産した農産物を店舗等の設備を用いずに反復継続して販売するにすぎない農業者は、商法上の商人に当たらないが、商事留置権は被担保債権が商行為から生じていれば足りるため、当事者の一方が商人でない農業者であっても、その者と商人との間で商事留置権が成立する。

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商事留置権(商法521条)が問われています。オが誤り。商法521条は「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権」を要件とし、当事者双方が商人であることを要します。店舗等の設備を用いず自己の生産した農産物を販売するにすぎない農業者は、固有の商人(自己の名をもって商行為をすることを業とする者:商法4条1項)でも擬制商人(店舗等の設備による物品販売・鉱業:商法4条2項)でもなく、商人に当たりません。したがって、農業者(非商人)と商人との間では「商人間」要件を満たさず、商事留置権は成立しません。オは「商人でない農業者であっても商事留置権が成立する」としている点が521条の商人間要件に反し誤りです。アは正しい(牽連性不要)。イは正しい(牽連性不要の具体化)。ウは正しい(破産法66条1項:別除権)。エは正しい(占有喪失で消滅)。

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商事留置権(521条)の要件:①当事者双方が商人(「商人間において」)、②双方のために商行為となる行為(双方的商行為)から生じた債権、③相手方の所有に属する物・有価証券を占有していること、④牽連性不要(民法の留置権(295条)と異なる点:ア・イ正しい)。牽連性不要の意義:民法295条の留置権は「その物に関して生じた債権(牽連性)がある場合」に行使できます。商法521条は「債権と留置物との間に牽連性がなくても」成立します(商取引の継続的関係への信用確保が目的)。破産における商事留置権(破産法66条1項):「商事留置権者は、その目的物について(中略)特別の先取特権を有するものとみなす」。これにより商事留置権者は「別除権者(破産手続によらずに行使できる権利者)」として優先弁済を受けることができます(ウ正しい)。オが誤りの理由:商事留置権は「商人間(双方が商人)」要件があります(521条)。店舗等の設備を用いず自己の生産物を販売するにすぎない農業者は商法上の商人(4条1項・2項のいずれにも当たらない)ではないため、農業者(非商人)が当事者の一方である場合、商人間要件が満たされず商事留置権は成立しません。オは「商人でない農業者であっても商事留置権が成立する」としている点が521条の商人間要件に明確に反するため誤りです。

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【理論的背景:商事留置権の法的性質と民法留置権との比較】

商事留置権(商法521条)は民法の留置権(295条)の商法上の特則として設けられています。民法上の留置権の要件①他人の物を占有すること、②その物に関して生じた債権があること(牽連性)、③債権が弁済期にあること。商事留置権はこのうち②の牽連性を不要としており、商人間で継続的な取引関係がある場合に取引全体を担保する機能を持ちます。商事留置権が破産手続で「別除権(破産法66条1項)」として扱われる根拠は、商事留置権者が実質的に担保権者と同様の地位を持つことを破産法が認めたものです。これにより商事留置権者は破産配当(一般債権者の割当)に参加せず、担保物から優先弁済を受けることができます。民法上の留置権者は破産手続において別除権者にはなれず(破産法65条:留置権は破産手続開始によって消滅しないが別除権ではない)、商事留置権との差異が大きい点です。

【条文構造:521条の要件の精密な理解】

商法521条「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に帰した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし(中略)当事者の別段の意思表示があるときはこの限りでない」。条文上「商人間」と「双方のために商行為となる行為」という二重の商行為要件があります。「双方のために商行為となる行為」とは双方的商行為(当事者双方にとって商行為)であり、片面的商行為(一方のみの商行為:商法3条1項)では足りません(521条は片面的商行為には適用されない)。したがって農業者(非商人)との取引は「双方のために商行為」要件を満たさず商事留置権は成立しません(オは正しい内容)。

【試験での位置づけ:行政書士試験における商事留置権の頻出論点】

行政書士試験での商事留置権の典型的な問われ方は①牽連性不要(民法留置権との最大の差異)、②双方が商人であることの要件(商人間要件:521条)、③破産手続での別除権(破産法66条1項)の3点が典型です。既存問題(REVIEW_kaishahou_a_2026-05-30:問08で商事留置権を扱い、破産法66条で別除権と確定)とも連動する論点です。オのような「農業者=非商人→商事留置権不成立」は商人の定義(商法4条)と商事留置権の商人間要件(521条)を組み合わせた問題として重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。521条の商事留置権は民法295条の牽連性要件を排除。商人間の商行為から生じた任意の債権を被担保債権として、占有している相手方所有の物を留置できる。
  • イ: 正しい。牽連性不要の具体的説明。例えば「A(商人)がB(商人)に商品代金債権を持っていれば、その商品と無関係なBの所有物(Bに預けているA所有の別の商品等)を留置できる」。この広い留置が商事留置権の特徴。
  • ウ: 正しい。破産法66条1項「商事留置権は(中略)特別の先取特権があるものとみなす」→別除権(破産手続外での優先弁済可)として機能。民法の留置権は別除権でない(破産法65条)との対比が重要。
  • エ: 正しい。留置権の占有要件は商事・民事とも共通。占有を失えば留置権消滅(295条2項:留置権は占有を失うことで消滅)。競売申立ては可能だが、その前に占有が失われれば権利消滅。
  • オ: 誤り。商法521条は「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権」を要件とし、当事者双方が商人であることを要する。店舗等の設備を用いず自己の生産した農産物を販売するにすぎない農業者は、固有の商人(4条1項)でも擬制商人(4条2項:店舗等による物品販売・鉱業)でもなく商人に当たらない。したがって農業者(非商人)が当事者の一方である場合は商人間要件を欠き商事留置権は成立しない。「商人でない農業者であっても商事留置権が成立する」とする本肢は521条に反し誤り。

【根拠条文】

商法 第4条第1項(固有の商人・自己の名をもって商行為をすることを業とする者)

商法 第4条第2項(擬制商人・店舗等による物品販売・鉱業/農産物の原始生産者は含まない)

商法 第521条(商人間の留置権・商人間要件・双方のために商行為となる行為・牽連性不要)

破産法 第66条第1項(商事留置権=特別の先取特権とみなす=別除権)

民法 第295条(留置権・牽連性要件)との対比

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 商法第521条(商事留置権)、商法第3条第1項(片面的商行為・双方への商法適用)、破産法第66条第1項(商事留置権の別除権) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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