商法・会社法70商法・会社法/事業譲渡(商法総則・会社法)

行政書士 商法・会社法 問70:商法・会社法/事業譲渡(商法総則・会社法)

事業の譲渡に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 株式会社が事業の全部を譲渡する場合、原則として株主総会の特別決議が必要であり、事業の重要な一部を譲渡する場合(譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額の5分の1を超えるとき)も同様に特別決議が必要となる。正答
  • 商人が営業を譲渡した場合(商法16条)、譲渡人は、当事者間に別段の合意がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の区域内は同区域)内および隣接する市町村内において、同一の営業を10年間行ってはならない。
  • 会社が事業の全部または重要な一部を譲渡する場合において、譲受会社が譲渡会社の特別支配会社(議決権の3分の2以上保有)であるときは、譲渡会社の株主総会決議を省略することができる(略式事業譲渡)。
  • 事業譲渡の譲受人が譲渡人の商号を続用する場合(会社法22条)、譲渡人の事業によって生じた債務についても譲受人が弁済の責任を負うが、当事者間の免責合意を商号続用後遅滞なく登記した場合にのみ免責の効力が生じる。
  • 事業を譲渡した商人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合、その特約は期間の制限なく永続的に効力を有し、当事者は何年でも自由に競業避止期間を定めることができる(商法16条)。
正答:株式会社が事業の全部を譲渡する場合、原則として株主総会の特別決議が必要であり、事業の重要な一部を譲渡する場合(譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額の5分の1を超えるとき)も同様に特別決議が必要となる。

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事業譲渡の規律が問われています。アが正しい。会社が事業の全部を譲渡する場合は株主総会特別決議が必要(会社法467条1項1号)、事業の重要な一部を譲渡する場合(譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるとき)も特別決議が必要です(467条1項2号)。イは誤りで、商法16条1項の競業避止義務の期間は「20年間」であり「10年間」ではありません(地域範囲=同一市町村及び隣接市町村は正しい)。ウは誤りで、略式事業譲渡(468条2項)の特別支配会社の要件は「議決権の10分の9(90%)以上」であり「3分の2以上」ではありません。エは誤りで、商号続用の免責は「登記」または「通知」の二択(会社法22条2項)であり、「登記した場合にのみ」は誤りです。オは誤りで、競業避止の特約をした場合でも商法16条2項により「譲渡日から30年の期間内に限り」効力を有し、「期間の制限なく永続的に」定めることはできません。

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事業の全部・重要な一部の譲渡(会社法467条1項):株式会社が①事業の全部を譲渡(467条1項1号)、②事業の重要な一部を譲渡(467条1項2号・「譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(定款で引下げ可)を超えるもの」)する場合は原則として株主総会の特別決議が必要(ア:正しい)。略式事業譲渡(468条2項):事業譲渡等の契約の相手方が当該株式会社の特別支配会社(2条15号の2・468条1項:ある株式会社の総株主の議決権の10分の9(90%)以上を他の会社等が保有する場合の当該他の会社)であるときは、当該株式会社(被支配会社=譲渡会社)の株主総会の承認決議を要しません。ウは「3分の2以上」としている点が誤りで、正しくは「10分の9以上」です。商法上の競業避止(商法16条):商人が営業を譲渡した場合、当事者の別段の意思表示がない限り、同一市町村及び隣接市町村の区域内において、譲渡日から20年間、同一の営業を行ってはなりません(16条1項)。イは「10年間」としている点が誤りです。譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合でも、その特約は譲渡日から30年の期間内に限り効力を有します(16条2項)。オは「期間の制限なく永続的に」としている点が誤りです。商号続用の責任(会社法22条):商号を続用する事業譲受人が負う弁済責任(22条1項)。免責の要件は「遅滞なく譲受会社が責任を負わない旨を登記した場合」または「遅滞なく譲受会社及び譲渡会社から第三者に通知した場合(通知を受けた第三者について)」の二択です(22条2項)。エは「登記した場合にのみ」と限定している点が誤りです。

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【理論的背景:事業譲渡と組織再編の相違】

事業譲渡は「特定の事業(営業活動の組織的集合体)を合意によって移転する取引」であり、合併・会社分割のような包括承継(会社法上の組織再編)とは異なります。事業譲渡は①個別の財産・契約・債務の個別移転(包括承継でない)が基本(債務については各債権者の個別同意が必要:民法472条等)、②株主総会の特別決議(467条)という会社法上の手続制限がある一方、合併のような「会社法の厳格な手続(開示・株主総会・債権者保護・無効訴訟)」は存在しない、という特徴があります。「事業の全部」を譲渡した場合でも会社は存続(解散しない)し、空の器として残ります。競業避止義務(個人商人の営業譲渡は商法16条・会社が事業譲渡をする場合は会社法21条)は「事業の実質的価値(のれん・顧客基盤)を保護する」ためのものであり、譲渡人が直後に同一地域で同一営業を始めれば譲受人が取得したのれんが無意味になるためです。

【条文構造:467条・468条・商法16条・会社法21〜23条の体系】

会社法467条1項(事業譲渡等の株主総会承認):1号「事業の全部の譲渡」・2号「事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合はその割合)を超えないものを除く)」等。468条1項(事業譲渡等の承認を要しない場合:相手方が特別支配会社である略式の場合)・2項(略式事業譲渡:相手方が当該株式会社の特別支配会社であるときは当該株式会社の株主総会決議を要しない)。特別支配会社(2条15号の2)=ある株式会社の総株主の議決権の10分の9(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合)以上を他の会社及び当該他の会社の完全子会社等が有する場合の当該他の会社。商法16条(営業譲渡人の競業の禁止):1項「営業を譲渡した商人は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含み、指定都市にあっては区又は総合区)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から20年間は、同一の営業を行ってはならない」。2項「譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から30年の期間内に限り、その効力を有する」。3項「前2項の規定にかかわらず、譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない」。会社法22条1項(会社の事業譲渡での商号続用責任)・2項(免責は登記または通知の二択)。

【試験での位置づけ:行政書士試験における事業譲渡の頻出論点】

行政書士試験での事業譲渡の典型的な問われ方は①株主総会特別決議の原則(467条1項:全部譲渡・総資産5分の1超の重要な一部譲渡)と略式(468条2項:相手方が特別支配会社=議決権10分の9以上)・簡易(468条1項・2項:譲受けの対価が純資産額の5分の1以下)の例外、②商号続用責任(会社法22条・個人商人は商法17条)とその免責要件(登記または通知の二択)、③競業避止義務(個人商人=商法16条:20年・同一市町村及び隣接市町村・特約は30年まで/会社が譲渡人=会社法21条)の3点が典型です。イの「10年(誤り:20年)」、ウの「3分の2以上(誤り:10分の9以上)」、エの「登記した場合にのみ免責(誤り:登記または通知)」、オの「特約は期間無制限(誤り:特約も30年まで)」が典型的な数値・要件の引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。467条1項1号(事業全部の譲渡)・2号(事業の重要な一部の譲渡=譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1超)により、いずれも原則として株主総会の特別決議(309条2項11号)が必要。
  • イ: 誤り。商法16条1項の競業避止義務の期間は「20年間」であり「10年間」ではない。地域範囲(同一市町村及び隣接市町村)は正しいが期間の数値が誤り。
  • ウ: 誤り。468条2項の略式事業譲渡における特別支配会社の要件は「総株主の議決権の10分の9(90%)以上」であり「3分の2以上」ではない。事業譲渡等の相手方が当該会社の特別支配会社であるときに、当該会社(被支配会社)の株主総会決議が不要となる。
  • エ: 誤り。会社法22条2項は「遅滞なく責任を負わない旨を登記した場合」または「遅滞なく譲受会社及び譲渡会社から第三者に通知した場合」の二択で免責される。「登記した場合にのみ」と通知を排除する記述は誤り。
  • オ: 誤り。商法16条2項により、譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合でも、その特約は譲渡日から「30年の期間内に限り」効力を有する。「期間の制限なく永続的に」「何年でも自由に」定めることはできない。

【根拠条文】

会社法 第467条第1項第1号・第2号(事業の全部・重要な一部の譲渡における株主総会特別決議)

会社法 第468条第1項・第2項(略式事業譲渡・特別支配会社=議決権10分の9以上)

会社法 第2条第15号の2(特別支配会社の定義・10分の9以上)

会社法 第22条第1項・第2項(商号続用責任・免責要件:登記または通知の二択)

商法 第16条第1項・第2項・第3項(営業譲渡人の競業の禁止・20年・同一市町村及び隣接市町村・特約は30年まで・不正競争目的)

商法 第17条(譲渡人の商号を使用した譲受人の責任・免責要件:登記または通知)との対比

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第467条第1項(事業譲渡等の株主総会特別決議)、会社法第468条第2項(略式事業譲渡・特別支配会社=議決権10分の9以上)、商法第16条(営業譲渡人の競業の禁止・20年・同一市町村及び隣接市町村・特約は30年まで)、会社法第22条(商号続用の責任・免責要件=登記または通知) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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