行政書士 憲法 問69:憲法
外国人の入国・在留・退去に関する次の記述のうち、**最高裁判所の判例・通説の趣旨に照らして正しいもの**はどれか。
- ア外国人の入国の自由は、憲法22条2項(外国移住の自由)によって保障されているため、国家が外国人の入国を制限・拒否する場合には、正当な理由が必要であり、入管法(出入国在留管理法)による入国制限は原則として違憲となる。
- イ最高裁判所は、外国人が在留期間内に在留更新申請をした場合、法務大臣には広範な裁量権が認められており、在留更新の許否は法務大臣の裁量に委ねられているとしている。
- ウ日本は難民条約(1951年条約・1967年議定書)を締結しており、難民として認定された者については退去強制命令を発することは憲法13条・14条の趣旨上許されないとした最高裁判所の判決がある。
- エ外国人が在留期間を超えて不法に在留した場合(不法在留)でも、不法在留が長期に及び生活の基盤が形成された場合には、憲法22条1項(居住・移転の自由)によって当該外国人の退去を拒む権利が保障される。
- オ外国人(日本国籍を有しない者)が日本に入国する権利は、国際慣習法上も、また日本国憲法上も保障されておらず、入国を許可するかどうかは国家の主権的裁量に属する事項であるとするのが判例・通説の立場である。正答
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
外国人の入国・在留に関する基本的な法的立場を確認します。最高裁(マクリーン事件・最大判昭53.10.4)は「外国人は日本に入国する権利を憲法上保障されていない(入国は主権的裁量)」「在留は在留制度の枠内でのみ保障される」という立場を明示しています。オの「外国人の入国権は国際慣習法上も憲法上も保障されておらず、入国許可は国家の主権的裁量」という記述はこの判例の立場と整合しており正答です。アの「入管法による制限は原則違憲」は誤りです(入管法による規制は合憲)。イの「在留更新許否は法務大臣の裁量」という部分は正しいが、マクリーン判決の「在留制度の枠内」という理解との整合で選択します。
外国人の入国・在留に関する判例の立場を整理します。マクリーン事件(最大判昭53.10.4)の主要な判示:①外国人は日本に入国する権利(入国の自由)を憲法上保障されていない。②在留中の外国人については、「外国人在留制度の枠内においてのみ」憲法上の権利の保障が及ぶ。③在留期間中の政治活動等は在留更新の際に「消極的事情」として評価されうる。この判旨からオが正答となります。アについて:外国人の入国は主権的裁量であり、入管法による制限は合憲(「原則として違憲」は誤り)。イについて:法務大臣の在留更新の裁量は広範に認められているというのはマクリーン判決の判示ですが、「在留更新申請をした場合に許否は裁量に委ねられる」という記述はほぼ正しい方向。ただしオが最も直接的かつ正確な正答です。ウについて:「難民認定者への退去強制は憲法13条・14条の趣旨で許されないとした最高裁判決がある」という命題については、実際の最高裁判例にそのような明示的判示は存在せず、ウは存在しない判決を前提とする点で誤りです(迫害国への送還を禁ずるノン・ルフルマン原則は難民条約・入管法上の原則であり、憲法13条・14条違反として判示した最高裁判例はありません)。エについて:「不法在留が長期化しても退去を拒む権利が憲法22条1項で保障される」という命題は、入国・在留の権利が憲法上保障されないという判例の立場と正反対であり誤りです。
【理論的背景】
外国人の入国・在留に関する法的枠組みは、「国家主権」と「人権保障」のジレンマとして論じられます。伝統的国際法の立場では「外国人の入国は国家主権の問題であり、国際法上入国の権利を保障する義務は各国に課されていない」とされており、日本の判例(マクリーン事件)もこの考え方を採用しています。ただし、現代の国際人権法(難民条約・人権条約等)はこの「主権的裁量」に一定の制限を課しており(特にノン・ルフルマン原則・迫害が予想される国への送還禁止)、日本も難民条約・議定書を締結しています。しかし難民認定制度の厳格さや退去強制の問題については、日本の制度が国際基準に照らして批判されることがあります(このような背景がウに関連)。
【実務・条文構造】
外国人の入国・在留に関する主要な法・条文:
- 憲法22条1項: 居住・移転の自由(国民の国内移転の自由)
- 憲法22条2項: 外国移住の自由・国籍離脱の自由(日本人が外国に移住する自由を保障するもので外国人の入国を保障するものではない)
- 出入国在留管理法(入管法): 外国人の入国・在留・退去を規律
- マクリーン事件(最大判昭53.10.4): 「外国人の入国権は憲法上保障されない・在留は在留制度の枠内・在留更新は法務大臣の広範な裁量」
「外国移住の自由(22条2項)」は、日本人(および一定範囲で外国人も)が外国に移住する自由を保障するものであり、外国人が日本に入国する自由を保障するものではありません(アが「22条2項により保障されている」とする点が誤りである根拠)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での外国人の入国・在留の出題ポイントは次の3つです。①外国人の入国権:憲法上保障されない(主権的裁量)。②在留中の外国人への権利保障:在留制度の枠内においてのみ(マクリーン事件)。③在留更新の裁量:法務大臣に広範な裁量(在留中の政治活動等も消極的評価の対象となりうる)。「外国人の入国権は憲法上保障される(誤り)」「不法在留が長期でも退去不可(誤り)」が典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。外国人の入国の自由は憲法22条2項によって保障されていない(22条2項は「外国移住の自由」であり日本人が外国に移住する自由を指す)。外国人の入国は主権的裁量に属し、入管法による規制は合憲。
- イ: 概ね正しい方向(マクリーン判決の趣旨)だが、オが最も直接的かつ明確に正答。イの「在留更新の許否は法務大臣の裁量」という記述は正しいが、設問の文脈ではオが外国人の入国・在留の全体的な法的地位について最も正確に表現。
- ウ: 誤り。難民として認定された者への退去強制を「憲法13条・14条の趣旨上許されない」と判示した最高裁判決は存在しない。迫害のおそれのある国への送還を禁ずるノン・ルフルマン原則は難民条約33条・出入国管理及び難民認定法に由来する原則であって、最高裁がこれを憲法13条・14条違反として位置づけた判例はない。存在しない判決を前提とするウは誤り。
- エ: 誤り。不法在留が長期化しても、退去を拒む権利が憲法22条1項によって保障されるという命題は、マクリーン事件(「在留制度の枠内においてのみ保障」)の趣旨と正反対。不法在留者に退去を拒む憲法上の権利は認められていない。
- オ: 正答。「外国人の入国権は国際慣習法上も憲法上も保障されておらず、入国許可は国家の主権的裁量」という命題はマクリーン事件(最大判昭53.10.4)および国際法の伝統的立場と整合しており、日本の判例・通説の立場として正確。
【根拠条文】
日本国憲法 第22条第2項(外国移住の自由・外国人の入国権を保障するものではない)
出入国在留管理法(入管法)(外国人の入国・在留・退去を規律)
【参照判例】
マクリーン事件(最大判 昭和53年10月4日):外国人の入国権は憲法上保障されない・在留制度の枠内での権利保障・在留更新は法務大臣の広範な裁量
【補足】
「外国人の入国権は憲法上・国際慣習法上も保障されない(主権的裁量)」「在留は在留制度の枠内でのみ保障(マクリーン判決)」「22条2項は日本人の外国移住の自由(外国人の入国権ではない)」の3点を確実に押さえること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第22条(居住・移転の自由・外国移住の自由) 参照: マクリーン事件(最大判 昭和53年10月4日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。