民法111民法債権各論

行政書士 民法 問111:民法債権各論

請負に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • 請負人が仕事を完成した後、注文者が報酬の支払を拒む場合、請負人は仕事の目的物について留置権を行使することができる。
  • 請負契約において仕事が完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除することができる。
  • 請負において、仕事の目的物が注文者の提供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合、注文者は請負人に担保責任を追及することができない。
  • 請負人が仕事の完成前に死亡した場合、請負契約は当然に消滅する。正答
  • 請負において、仕事の完成が不可能となった場合でも、その不能が注文者の責めに帰すべき事由によるものである場合、請負人は報酬の全額を請求することができる。
正答:請負人が仕事の完成前に死亡した場合、請負契約は当然に消滅する。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

エが誤りです。請負契約は原則として請負人の死亡によって当然に消滅するものではなく、相続人が請負人の地位を承継します(民896条)。請負は労務の給付を目的とする点で雇用に類似しますが、「仕事の完成」という成果を約束する請負では、必ずしも請負人本人が行う必要がないため(再下請けも可能)、一身専属的ではなく相続される場合があります(ただし特約によって異なる)。アは正しく(報酬未払いに対する留置権行使可)、イは正しく(民641条・仕事完成前の損害賠償解除可)、ウは正しく(民636条・注文者の材料・指図による場合は担保責任不追及が原則)、オは正しく(民536条2項の危険負担・注文者帰責の不能なら報酬全額請求可)。

標準試験対策の基準レベル

エが誤りです。請負契約は、原則として請負人の死亡によって当然に消滅するものではありません。民法896条により、相続人は原則として被相続人(請負人)の契約上の地位を相続します。請負は「仕事の完成」を約束する契約であり、作業員・労働者(雇用)と異なり、請負人の個性よりも成果物の完成が主眼であるため、相続人による完成履行が可能な場合は相続されます(例外として、特定の芸術家・設計士への依頼など人的信頼が本質的な場合は、特約または契約の解釈で一身専属性が認められることがある)。

アは正しいです。請負人は仕事の完成後に目的物の引渡しと同時に報酬を受けます(民633条)。報酬未払いの場合、留置権(民295条)が成立しえます(牽連性:報酬請求権は目的物に関して生じた債権)。

イは正しいです。民641条は「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」と規定しています。

ウは正しいです。民636条本文は「仕事の目的物の種類又は品質に関する担保責任については、その不適合が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた場合においては、請負人は、その担保責任を負わない」と規定しており、注文者自身の原因による不適合には担保責任を負いません(ただし請負人の過失がある場合は別途責任あり)。

オは正しいです。注文者の帰責事由による履行不能の場合は危険負担の規律(民536条2項)により、請負人は報酬の全額を請求できます。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

請負(民632条〜642条)は、当事者の一方(請負人)が仕事を完成させることを約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約です。請負の特徴として、①成果主義(仕事の完成が条件)、②再下請けの許容(雇用と異なり人的信頼より成果が優先)、③担保責任(契約不適合責任)の特則(民636条)があります。2020年施行の改正民法では、旧法の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」(民559条・562条等を準用)に変更されたため、請負においても「種類・品質に関する不適合」という概念に統一されました。

【条文構造】

請負の核心条文を整理します。

民632条:請負の成立(諾成契約・書面不要・仕事完成+報酬)。

民633条:報酬の後払い原則(仕事完成・引渡しと同時が原則)。

民634条:注文者が受ける利益の割合に応じた報酬(仕事が完成前に終了した場合・注文者の利益がある部分は割合報酬)。

民636条:担保責任の制限(注文者の材料・指図による不適合→請負人の担保責任なし。ただし請負人の過失は別)。

民641条:注文者による任意解除(仕事完成前にいつでも損害賠償して解除可)。

民642条:注文者の破産等による解除。

民536条2項(危険負担・注文者帰責):注文者の責めに帰すべき事由による履行不能→請負人の報酬全額請求可。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における請負の典型論点は、①注文者の任意解除権(民641条・損害賠償して解除可)、②担保責任の制限(注文者材料・指図による不適合→担保責任なし・民636条)、③危険負担・注文者帰責の場合の報酬全額請求(民536条2項)、④請負人死亡と契約の承継(一身専属性の原則の例外・相続可)の4点です。特に「請負人が死亡すると請負契約が消滅する」という誤りパターンは、雇用(一身専属的)との混同から生じるため注意が必要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。報酬請求権と目的物の牽連性により留置権成立(民295条1項)。請負人が建物を建設し注文者が代金を支払わない場合に建物を留置できる。ただし注文者の土地に建設した場合の留置権の効力(建物に留置権を設定できるが土地には及ばない等)は実務上問題となる。
  • イ: 正しい(民641条)。注文者の任意解除権は損害賠償が要件。「損害」は請負人が仕事のために既に投じたコスト・逸失利益が含まれる。任意解除の場合、原状回復義務はなく(仕事完成前の解除)、損害賠償で決済する。
  • ウ: 正しい(民636条)。注文者帰責の不適合に担保責任を負わないという規律は、請負人への不当な責任追及を防ぐ衡平的規律。ただし「請負人がその材料又は指図の不適当であることを知りながら告げなかったとき」は例外(民636条ただし書)。
  • エ: 誤り(正答)。請負は成果物の完成が本質であり、一身専属的ではないため相続される(民896条)。例:建設会社(法人)が請負人の場合は会社の継続で問題ないが、個人の大工が死亡した場合も、相続人が技術を持っていれば原則として契約は承継される。特約で「本人死亡による解除」を定めることは可能(民641条・任意解除として処理)。
  • オ: 正しい(民536条2項)。注文者帰責の場合の危険負担規律。請負人が完成義務を免れるとともに、対価(報酬)は全額請求できる(反対給付の請求権は失わない)。ただし請負人の費用節減(仕事をしないことで節約できた費用)を差し引くという規律は、信義則の観点から解釈上議論がある。

【根拠条文】

民法 第632条(請負の成立)、第636条(担保責任の制限)、第641条(注文者による任意解除)、第896条(相続の一般的効力)、第536条第2項(注文者帰責の履行不能における報酬請求権)

【補足】

請負人の死亡による当然消滅はない(民896条で相続・雇用との違い)。注文者の任意解除は損害賠償して可(民641条)。注文者帰責の不適合には担保責任なし(民636条)が頻出論点。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)、第636条(請負人の担保責任の制限)、第641条(注文者による契約の解除) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

請負・仕事の完成前の解除・報酬頻出度A

民法の他の問題

1
制限行為能力者・未成年者
2
制限行為能力者・被保佐人・被補助人
3
制限行為能力者・取消権・追認
4
意思表示・錯誤の現行規律
5
意思表示・錯誤の重要性・動機の錯誤
6
意思表示・詐欺・強迫

全418問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。