行政書士 民法 問16:所有権・共有
共有に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、各共有者は直ちに家庭裁判所に対して分割を請求することができる。
- イ共有者の一人が共有物を第三者に売却するためには、他の共有者全員の同意が必要である。
- ウ各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるが、5年を超えない期間、分割をしない旨の特約をすることができる。
- エ共有物の管理に関する行為(管理行為)は、各共有者が単独で行うことができる。
- オ共有物の変更(形状または効用の著しい変更を伴うもの)には、共有者全員の同意が必要である。正答
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オが正しいです。民法251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない」と規定しており、著しい変更を伴う変更には共有者全員の同意が必要です。アは誤りで、分割協議が調わない場合は「裁判所に分割を請求する」ことができますが(民258条1項)、地方裁判所への訴えです(家庭裁判所ではない)。イは誤りで、共有者の一人が自己の持分を処分するのは自由ですが、共有物全体を売却するには全員の同意が必要ではなく、管理行為として持分の過半数の決定が必要です(民252条)。ウは正しい内容ですが(民256条1項・特約は5年以内で更新可)、オが問題の明確な正解です。エは誤りで、保存行為以外の管理行為は過半数決定が必要です。
オが正解です。民法251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない」と規定しており、著しい変更(例:共有地の建物建築・形質変更)には共有者全員の同意が必要です。
ア:誤りです。共有物分割に関する訴えは「地方裁判所」に対して提起します(民258条・裁判による分割)。「家庭裁判所」は誤りです。
イ:誤りです。共有物全体の売却(処分行為)には共有者全員の同意が必要です。ただし、各共有者は自己の持分(共有持分)を自由に処分(売却等)することができます(民255条参照・持分の放棄等)。本問の表現「共有物を第三者に売却する」(全体の売却)には全員同意が必要(オと同様の要件)ですが、この点でオの記述の方が明確に「正しい」選択肢として設定されています。
ウ:おおむね正しい内容ですが(民256条1項本文・不分割特約は5年以内・更新可)、「5年を超えない期間」という記述は正確です。しかし選択肢全体の中でオが最も明確に正しく、また選択肢ウは「分割を請求する方法」を問うものではないため、本問ではオが正答となります。
エ:誤りです。共有物の管理に関する行為(管理行為)は、各共有者が保存行為(民252条5項・本問では単独でできる)を除き、持分価格の過半数で決定する必要があります(民252条1項)。「各共有者が単独で行える」のは保存行為のみです。
【理論的背景】
共有は、複数の者が一つの物について量的に分割した持分として権利を有する状態です(民249条)。共有は、各共有者の権利の行使を一定程度相互に制約し合う関係であるため、行為の重大性に応じて「単独でできる行為」「過半数で決まる行為」「全員の同意が必要な行為」という三段階の意思決定ルールが設けられています。2021年施行の民法改正(所有者不明土地関連)により、共有物の管理等に関するルールが明文化・整理されています。
【条文構造】
共有に関する行為の意思決定ルール(2021年改正後の現行法):
[変更行為(民251条)]
- 形状または効用の著しい変更:共有者全員の同意が必要
- 著しくない変更(軽微な変更):持分価格の過半数で決定(2021年改正で明文化)
[管理行為(民252条)]
- 原則:持分価格の過半数で決定(1項)
- 短期賃貸借(民602条所定の期間を超えない):持分価格の過半数で決定
- 保存行為:各共有者が単独で可(5項)
[処分行為]
- 共有物全体の処分:共有者全員の同意が必要
- 自己の持分の処分:単独で可
[共有物の分割(民256条)]
- いつでも分割請求可(原則)
- 不分割特約:5年以内(更新可)
- 協議不調の場合:裁判所(地方裁判所)への分割請求(民258条)
【試験での位置づけ】
行政書士試験の共有論点では以下が頻出です。①変更(著しい)→全員同意、②管理→過半数、③保存→単独、という三段階の区別。②不分割特約の期間(5年以内)、③分割訴訟は地方裁判所(家庭裁判所ではない)。2021年改正で「著しくない変更」が過半数で可となった点も出題対象です。「共有物の管理は全員同意が必要」「各共有者が単独で管理できる」はいずれも誤りパターンで頻出です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 共有物分割請求の管轄は「地方裁判所」(民事訴訟)。家庭裁判所(家事事件)と混同しやすい。分割方法:①現物分割、②換価分割(競売)、③価格賠償(持分取得と代金支払い)の3種。2021年改正で裁判分割の類型が整理された。
- イ: 共有物全体の売却(処分行為)には共有者全員の同意が必要。一方、各共有者が自己の持分を単独で売却・譲渡することは自由(民206条・251条の裏面)。ただし持分を取得した者は他の共有者との関係では共有者として加わる(民255条参照)。
- ウ: 不分割特約(民256条1項ただし書)は5年以内かつ更新可(更新も5年以内)という制度。協力して共有状態を維持する必要がある場合(共有地の駐車場等)に使われる。不分割特約は相続で承継され(民258条の2参照・2021年改正で整理)、特約期間中も持分の譲渡は可能。
- エ: 保存行為(民252条5項)の典型:修繕・登記の申請(共有物の現状を維持する行為)。管理行為と変更行為は三段階ルールの中間・上位に位置する。「管理行為を単独でできる」は保存行為の誤用。
- オ: 正答。著しい変更への全員同意要件(民251条1項)。「著しくない変更」は2021年改正で過半数に緩和。「著しい」かどうかは形状・効用への変化の程度で判断(建物の取壊し・土地の造成等は著しい変更の典型例)。
【根拠条文】
民法 第249条(共有物の使用)、第251条(共有物の変更)、第252条(共有物の管理)、第256条(共有物の分割請求)、第258条(裁判による共有物の分割)
【補足】
2021年施行の所有者不明土地関連の民法改正により、共有の管理ルール(著しくない変更→過半数、管理→過半数、保存→単独)が整理・明文化された。改正後の条文体系で覚えること。「家庭裁判所→地方裁判所」の誤りパターンに注意。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第251条(共有物の変更)、第252条(共有物の管理)、第256条(共有物の分割請求) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。