行政書士 民法 問35:無催告解除・定期行為・解除の効果
解除に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定および判例の趣旨に照らして**正しいもの**の組み合わせはどれか。 ア. 債務の全部の履行が不能であるときは、債権者は催告をすることなく直ちに契約を解除することができる。 イ. 債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に示した場合でも、債権者は相当期間を定めた催告をしなければ解除することができない。 ウ. 解除の効果として、契約締結前の状態に戻る原状回復義務が生じ、第三者の権利を害する場合であっても遡及効は妨げられない。 エ. 当事者の一方が解除権を有する場合、相手方はその者に対し相当の期間を定めて解除権を行使するかどうかを確答するよう催告することができ、その期間内に確答がなければ解除権は消滅する。 オ. 解除した場合、当事者は互いに損害賠償を請求することができなくなる。
- 1ア・エ正答
- 2ア・イ
- 3イ・ウ
- 4ウ・オ
- 5エ・オ
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正しいのはアとエです。アは民法542条1項1号(全部履行不能の場合の無催告解除)として正しく、エは民法547条(催告による解除権の消滅)として正しい記述です。イは誤りで、債務者が明確に履行拒絶の意思を示した場合は民法542条1項2号により無催告解除が認められます。ウは誤りで、545条1項ただし書により解除の遡及効は「第三者の権利を害することができない」との制限があります。オは誤りで、545条4項は「解除は、損害賠償の請求を妨げない」と明記しており、解除後も損害賠償請求は可能です。
アについて、民法542条1項1号は「債務の全部の履行が不能であるとき」を無催告解除の事由として明記します。全部不能の場合に催告をしても意味がないため、直ちに解除が認められます。エについて、民法547条は「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する」と規定します。これは相手方の法的地位の不安定を解消するための制度です。イについて、民法542条1項2号は「債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」を無催告解除の事由として認めており、催告不要です。ウについて、545条1項ただし書は「第三者の権利を害することができない」として第三者保護を図ります。解除の遡及効は絶対的なものではなく、善意の第三者(解除前に目的物につき権利を取得した者)の権利は保護されます。オについて、545条4項は解除と損害賠償の両立を明記しています。帰責事由のある債務者に対しては解除と同時に損害賠償も請求できます(但し解除自体に帰責事由は不要)。
【理論的背景】
民法の解除制度は、契約の拘束力からの解放という視点から整理されており、2020年改正では特に(1)帰責事由不要の解除権(催告型・無催告型の両方について旧法の帰責事由要件を撤廃)、(2)軽微な不履行への制限(541条ただし書)、(3)定期行為の無催告解除(542条1項4号)、(4)一部不能の場合の分析的処理が明確化されました。無催告解除(542条)の各号は「催告が無意味・無益となる状況」を類型化したものであり、それ以外の不履行は原則として催告解除(541条)によります。
【条文構造の精密な理解】
542条1項の無催告解除事由(全列挙)を正確に把握することが本論点の核心です。
1. 債務の全部の履行が不能(1号)→アの根拠。
2. 債務者が全部履行拒絶の意思を明確に表示(2号)→イが誤りの根拠。
3. 定期行為(「一定の時期において履行しなければ契約目的を達することができない」場合)で期間内に履行なし(3号)。
4. 部分的に上記1〜3に相当する場合で残部のみでは目的達成不可(4号)。
5. 債権者が催告しても契約目的達成の見込みがないことが明らかなとき(5号・一般的補充条項)。
547条の解除権消滅催告は、相手方(解除権者でない者)を保護するための制度で、「確答がなければ解除権消滅」という効果を定めます(なお548条は別物で、解除権者が故意・過失で目的物を著しく損傷・返還不能にした等の場合に解除権が消滅する規定)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における本論点の典型的出題パターンは、(a)催告解除(541条)と無催告解除(542条)の場合分け、(b)「明確な履行拒絶」で無催告解除可(542条1項2号)の理解(イのような誤り選択肢で確認)、(c)解除の第三者効(545条1項ただし書の第三者保護・ウの誤り)、(d)解除後の損害賠償の可否(オの誤り)、(e)解除権消滅催告(547条・エの正しい記述)の5点です。特に(b)と(e)は比較的細かい規定であり、正確な条文知識が必要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。542条1項1号。全部履行不能の例:目的物の滅失、法律上の不能(行政処分による)など。この場合に催告が不要なのは「催告しても意味がない(履行不能は確定的に履行できない状態)」から。
- イ: 誤り。「明確な履行拒絶」は542条1項2号の無催告解除事由。催告をしなければ解除できないとするのは誤り。改正前は条文に明文がなく判例法理として認められていたが、現行法では明文化された。
- ウ: 誤り。545条1項ただし書「第三者の権利を害することができない」。解除の遡及効は第三者(解除前に目的物について権利を取得した善意の第三者等)の権利を害しない。第三者保護規定は解除制度の重要な限界。なお、ここでの「第三者」は解除前に目的物について新たに法律上の利害関係を有するに至った者をいい、保護されるには対抗要件(不動産なら登記)を備えている必要がある(最判昭和33年6月14日・民集12巻9号1449頁)。
- エ: 正しい。547条の催告による解除権の消滅。相手方(解除権を有しない当事者)が「解除するかしないかを確答してほしい」と催告し、期間内に解除通知がなければ解除権が消滅する制度。解除権をめぐる相手方の地位の不安定を解消するための規定。
- オ: 誤り。545条4項「解除は、損害賠償の請求を妨げない」。解除と損害賠償は選択的ではなく累積的に行使できる。帰責事由のある債務者への損害賠償は解除後も追求可能。
【根拠条文】
民法 第541条(催告による解除・軽微な不履行は不可)
民法 第542条第1項第1号・第2号・第3号(催告によらない解除)
民法 第545条第1項(解除の効果・第三者保護)
民法 第545条第4項(解除と損害賠償の並存)
民法 第547条(催告による解除権の消滅)
【参照判例】
解除前の第三者保護(545条1項ただし書の「第三者」=解除前に新たに法律上の利害関係を有するに至った者で、対抗要件を備えた者)については最判昭和33年6月14日(民集12巻9号1449頁)等が基準を示す。
【補足】
542条1項各号は「無催告解除が認められる理由=催告が無益・無意味となる状況」という観点から理解すると体系的に把握しやすい。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第542条第1項第1号・第3号・第545条第1項・第547条・第545条第4項 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。