民法39連帯債務・現行規律

行政書士 民法 問39:連帯債務・現行規律

A・B・Cは、Dに対してそれぞれ負担部分を平等として連帯して300万円の金銭債務を負っている。この連帯債務に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • Dは、A・B・Cのいずれに対しても、同時に300万円全額の弁済を請求することができる。
  • Aが300万円全額を弁済した場合、AはBおよびCに対して各100万円の求償権を取得する。
  • DがAに対して請求(訴え提起)をした場合、その効力は当然にBおよびCにも及ぶ。正答
  • DがAに対して債務を免除した場合、その免除はBおよびCの債務に影響を与えない。
  • AがDに対して反対債権(50万円)を有している場合、BはAの反対債権を用いてDに対してその履行を拒むことができる。
正答:DがAに対して請求(訴え提起)をした場合、その効力は当然にBおよびCにも及ぶ。

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現行民法(2020年改正後)では、連帯債務における相対的効力の原則が拡張され、「請求」についても相対効(一方への請求が他の連帯債務者に当然には及ばない)とされました(441条)。よってウ「請求の効力が当然にBおよびCにも及ぶ」は誤りです。改正前(旧法)では請求は絶対効(一方への請求が全員に及ぶ)でしたが、現行法では相対効になっています。アは連帯債務の基本的効力(全部について各債務者に請求可)として正しい。イは求償権(442条)として正しい。エは免除の相対効(441条により当然には他に及ばない)として正しい。オは439条2項の履行拒絶権(他の連帯債務者が反対債権を有する者の負担部分の限度で履行を拒める)として正しい記述です(現行法は「相殺の援用」ではなく「履行拒絶権」として整理)。

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ウが誤りである理由は2020年改正で「請求」が絶対効から相対効に変更されたことです。旧法438条は「連帯債務者の一人に対してなされた請求は他の連帯債務者に対してもその効力を生じる」と規定し、請求を絶対的効力事由としていました。しかし現行法はこの規律を廃止し、441条は「連帯債務者の一人について生じた事由は…他の連帯債務者に対してその効力を生じない」という相対的効力の原則を採用し、絶対的効力事由を大幅に限定しました。現行法上の絶対的効力事由は(1)弁済等(436条・債権を消滅させる行為)、(2)相殺(439条1項)、(3)更改(438条)の3類型に限定されます。請求・免除・時効の完成等は相対効となりました。エ(免除も相対効)は現行法のもとでは正しく、Aへの免除はBおよびCの100万円ずつの負担部分には影響しません。オについて、439条2項は「連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合、他の連帯債務者はその連帯債務者の負担部分の限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と規定しており(相殺の援用ではなく履行拒絶権)、正しい記述です。

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【理論的背景】

2020年改正前の民法(旧法)では、連帯債務における「絶対的効力事由」として、弁済・代物弁済・供託・相殺・更改・混同・免除・請求・時効の完成(旧435〜440条)の多くが定められていました。しかし「請求の絶対効」は、債権者が訴訟提起することで連帯債務者全員の消滅時効を中断できるという実務上の意義がありましたが、連帯債務者の一人に対する訴訟追行の効果が他者に及ぶという不合理も指摘されていました。現行法は相対的効力の原則を大幅に拡張し、絶対的効力事由を「弁済・相殺・更改」に限定しました(請求・免除・時効は相対効)。

【条文構造の精密な理解】

現行連帯債務規定の骨格を把握します。

  • 436条: 連帯債務者の一人が弁済・代物弁済・供託・相殺をした場合は絶対効(全員の債務が消滅)。
  • 437条: 連帯債務者への反対給付(受領)は全員の利益のために効力あり。
  • 438条: 更改→絶対効(一人との更改で全員の債務消滅)。
  • 439条1項: 連帯債務者の一人が相殺権を行使→全員の債務を消滅させる(絶対効)。
  • 439条2項: 相殺権を行使しない場合→他の連帯債務者はその負担部分の限度で履行拒絶権を持つ(オの根拠)。
  • 440条: 混同→絶対効(混同が生じた債務者は弁済したものとみなす)。
  • 441条: その他の事由→相対効(請求・免除・時効の完成等は全て相対効)。
  • 442条: 連帯債務者の求償権(弁済額から自己の負担部分を超えた額を他の連帯債務者に求償)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における連帯債務の典型的な出題パターンは、(a)「請求の絶対効→現行法では相対効」(ウのような問題)、(b)「免除の効力が他の連帯債務者に及ぶか」(エのような問題・現行法は相対効なので他者に及ばない)、(c)「相殺権を行使しない場合の他の連帯債務者の履行拒絶権」(オのような問題)、(d)求償権の成立要件・求償額の計算です。特に(a)は旧法(請求=絶対効)と現行法(請求=相対効)が逆転しているため、改正ポイントとして最重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。連帯債務の基本的性質。Dは各連帯債務者に対して各自全額(300万円)を請求でき、その合計が900万円になっても、一度全額弁済があれば全員の債務が消滅する(実際に得られる総額は300万円)。
  • イ: 正しい。442条1項。負担部分が平等(各100万円)なので、300万円全額を弁済したAは超過分(300万円−100万円=200万円)をB・Cに各100万円ずつ求償できる。
  • ウ: 誤り(正答)。現行441条により請求は相対効。DがAに訴訟提起(請求)しても、その効力はBおよびCには及ばない。時効中断のためには各連帯債務者に個別に請求(訴訟提起等)する必要がある。改正前(旧法)との混同が典型的な誤り。
  • エ: 正しい。現行441条により免除も相対効。DがAの300万円の債務を免除しても、その効果はBおよびCの債務には影響しない。BおよびCは引き続き各自300万円全額についてDに対して責任を負う(但し内部的な負担部分については調整される)。
  • オ: 正しい。439条2項。AがDに対して50万円の反対債権を持つが相殺を行使しない場合、BはAの負担部分(100万円)の範囲内で、Dに対して50万円(反対債権額)の限度で履行を拒絶できる。Aの負担部分(100万円)>反対債権(50万円)なので、Bは50万円分の履行拒絶が可能。

【根拠条文】

民法 第436条(弁済等の絶対的効力)

民法 第439条第2項(相殺権を行使しない場合の履行拒絶権)

民法 第441条(相対的効力の原則)

民法 第442条第1項(連帯債務者の求償権)

【参照判例】

(本論点は条文問題として整理。旧法判例は現行法で置き換えられている)

【補足】

旧法で「請求の絶対効」があったため時効中断を一人への請求で図る実務があったが、現行法では各債務者に個別に時効更新手続が必要。この改正は実務に大きな影響を与えた。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第436条・第440条・第441条・第445条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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