行政書士 民法 問84:配偶者短期居住権
配偶者短期居住権に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**誤っているもの**はどれか。
- ア配偶者短期居住権は、相続開始時に被相続人の所有する建物に無償で居住していた配偶者が、一定期間当該建物を無償で使用する権利である。
- イ配偶者短期居住権の存続期間は、遺産分割によって居住建物の帰属が確定した日または相続開始から6か月を経過した日のいずれか遅い日までである。
- ウ配偶者が配偶者居住権を取得した場合、配偶者短期居住権は当然に消滅する。
- エ配偶者短期居住権は、配偶者居住権と同様に登記することができ、登記によって第三者への対抗力を取得する。正答
- オ配偶者短期居住権は、遺産分割または遺言によって発生するものではなく、相続開始と同時に法律上当然に発生する。
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配偶者短期居住権は2020年4月1日から施行された制度です(民法1037条〜1041条)。配偶者短期居住権と配偶者居住権の大きな違いの一つは、配偶者短期居住権には登記制度がない点です。配偶者居住権(民法1031条)は登記によって第三者対抗力を取得しますが、配偶者短期居住権は登記の規定が設けられていません。よってエが誤りです。アは正しく(民法1037条1項・無償居住の保護)、イは正しく(民法1037条1項1号・遺産分割確定日または6か月経過日のいずれか遅い日まで)、ウは正しく(民法1040条1項・配偶者居住権取得により消滅)、オは正しく(民法1037条1項・法律上当然に発生)です。
正答はエです。配偶者短期居住権には登記の制度がなく、登記によって第三者対抗力を取得することができません。これは配偶者居住権(民法1031条が登記を規定)との大きな違いです。配偶者短期居住権は、配偶者が相続開始後すぐに生活の場を失わないよう短期的に保護する制度であり、長期的な保護は配偶者居住権が担います。
各選択肢を確認します。ア(正):民法1037条1項柱書は「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた配偶者は…居住建物取得者に対し居住建物について無償で使用する権利(以下「配偶者短期居住権」という。)を有する」と規定します。イ(正):民法1037条1項1号は存続期間を「遺産分割によって居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日」までと規定します。ウ(正):民法1040条1項は「配偶者短期居住権は、次に掲げる場合には、消滅する」として、配偶者が居住建物について配偶者居住権を取得したときをその一つとして列挙します。オ(正):配偶者短期居住権は相続開始と同時に法律上当然に発生し、遺産分割・遺言を要件としません(民法1037条1項)。
【理論的背景】
配偶者短期居住権(民法1037条〜1041条)は2020年4月1日施行の相続法改正で新設された制度です。改正前は、被相続人が死亡した際に配偶者が居住していた建物について、遺産分割が完了するまでの間の法的地位が不安定でした。使用借権があると解釈する裁判例もありましたが、遺産分割に伴って建物が他の者に帰属すると配偶者は直ちに退去を求められる可能性もありました。配偶者短期居住権は、最低でも相続開始から6か月間は当該建物に無償で居住する権利を保障することで、遺産分割が完了するまでの生活の安定を図ります。配偶者居住権(長期的・終身的保護)との役割分担として、短期間の応急的保護を担う制度です。
【実務・条文構造】
民法1037条〜1041条の構造を整理します。民法1037条1項:配偶者短期居住権の成立要件(相続開始時に被相続人所有建物に無償居住)と存続期間(遺産分割確定日または相続開始から6か月のいずれか遅い日まで。ただし遺産分割の対象とならない場合は別途規律・民法1037条1項2号)。民法1037条2項:配偶者が相続欠格・廃除・放棄の場合は配偶者短期居住権は生じない。民法1038条:配偶者の義務(善管注意義務・用法遵守・改築・転貸には建物取得者の承諾が必要)。民法1039条:建物取得者は遺産分割が確定した後一定の期間をおいて配偶者短期居住権の消滅申入れができる(民法1037条1項1号の期間終了後)。民法1040条:消滅事由(配偶者居住権の取得・配偶者の死亡・消滅申入れから6か月経過等)。民法1041条:配偶者短期居住権には配偶者居住権の登記規定(民法1031条)は準用されない(登記なし)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、配偶者短期居住権は配偶者居住権との比較問題として出題されることが多いです。比較すべきポイントは、(1)存続期間(短期居住権は原則6か月以上・居住権は終身が原則)、(2)登記の有無(短期居住権は登記なし・居住権は登記あり)、(3)成立要件(短期居住権は法律上当然発生・居住権は遺産分割または遺言が必要)、(4)消滅事由(短期居住権は居住権の取得により消滅)です。エの「配偶者短期居住権も登記できる」は最も出題頻度が高い誤りです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。民法1037条1項柱書が根拠。「無償で居住」という要件と「無償で使用する権利」という内容が正確に表現されている。配偶者が有償で居住していた場合(使用貸借・賃貸借によらない場合)は対象外。
- イ: 正しい。民法1037条1項1号の存続期間の定め通り。「いずれか遅い日まで」という点が重要であり、遺産分割が6か月以内に確定した場合でも少なくとも6か月は保護される。
- ウ: 正しい。民法1040条1項2号が根拠。配偶者居住権を取得した時点で短期居住権は目的を達成したとして消滅する。
- エ: 誤り(正答)。民法1041条は「第1031条の規定は、配偶者短期居住権については、適用しない」と明記しており、配偶者短期居住権には登記制度がない。配偶者居住権(登記あり)との最大の違い。
- オ: 正しい。民法1037条1項が「配偶者は…配偶者短期居住権を有する」と規定し、相続開始と同時に法律上当然に発生する。遺産分割・遺言を要件としない点は配偶者居住権(遺産分割または遺言が必要)との重要な違い。
【根拠条文】
民法 第1037条第1項(配偶者短期居住権の成立と存続期間)、第1040条第1項(消滅事由)、第1041条(登記規定の不適用)
【補足】
配偶者短期居住権:法律上当然発生(遺産分割・遺言不要)・登記なし・6か月が最低保障。配偶者居住権:遺産分割または遺言が必要・登記あり・終身が原則。この対比を正確に押さえること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第1037条・第1038条・第1040条・第1041条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。