行政書士 民法 問88:遺留分の算定基礎財産
Aが死亡した。Aの法定相続人はBのみ(実子)であり、Aはその遺言でXに全財産を遺贈していた。Aが死亡時に有していた財産は2,000万円、Aが相続開始前1年以内にXに贈与した財産は500万円、Aが3年前に相続人Bに生計の資本として贈与した財産は300万円であった。なお、これらの財産に債務はなく、贈与・遺贈に関して当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってはいなかった。この場合の遺留分算定の基礎となる財産の額として、現行民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。
- ア2,000万円
- イ2,300万円
- ウ2,500万円
- エ2,800万円正答
- オ3,000万円
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遺留分算定の基礎となる財産は、相続開始時の財産+一定の贈与から算出します。民法1044条によれば、相続人に対する贈与は相続開始前10年間のもの、相続人以外への贈与は1年以内のものが算入されます。本問の計算:2,000万円(相続開始時財産)+500万円(X=相続人以外への1年以内の贈与)+300万円(B=相続人への10年以内の贈与)=2,800万円がエの正答です。3年前のBへの贈与(300万円)は相続人への10年以内の贈与として算入されます。XへのXは1年以内の贈与なので算入されます。
正答はエ(2,800万円)です。民法1043条は「遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする」と規定します。民法1044条は算入すべき贈与の範囲を規定します。
算入される贈与の範囲(民法1044条):①相続人以外への贈与:相続開始前1年間(当事者が遺留分権利者を害することを知った贈与は期間制限なし)。②相続人への贈与:相続開始前10年間(同様に悪意の場合は期間制限なし)。本問の計算:相続開始時財産2,000万円+Xへの贈与500万円(相続人以外・1年以内に該当)+Bへの贈与300万円(相続人・3年前は10年以内に該当)=2,800万円(エ)。
注:本問でXへの遺贈(全財産2,000万円)は「相続開始時に有した財産」(民法1043条1項)として基礎財産に既に含まれているため、遺贈分を別途加算しない。基礎財産に加算するのはあくまで「贈与」(Xへの1年以内の贈与500万円・Bへの10年以内の贈与300万円)である。遺留分算定の基礎財産と、その後の遺留分額・侵害額の計算は段階を追って行う。
【理論的背景】
遺留分算定の基礎財産の計算は、遺留分侵害額請求の出発点となる重要な計算過程です。単に相続開始時の財産だけを基準とすると、被相続人が生前に多額の贈与をすることで遺留分を骨抜きにすることが容易になります。そこで民法1043条・1044条は、一定期間内の贈与を算入することで遺留分の実質的な保護を図っています。相続人と相続人以外で算入期間が異なる(10年 vs 1年)理由は、相続人への贈与は特別受益として遺産分割に影響するものが多く、より長期間算入しないと遺留分保護が不十分になるためです。
【実務・条文構造】
民法1043条・1044条の計算構造を整理します。民法1043条第1項:基礎財産=(相続開始時の積極財産)+(算入すべき贈与の価額)-(債務全額)。民法1044条第1項:贈与の算入範囲(1年以内の贈与・当事者双方が遺留分権利者を害することを知った贈与は期間制限なし)。民法1044条第3項:相続人への贈与は10年以内のものを算入。計算手順:まず基礎財産を計算(1043条・1044条)→基礎財産×遺留分割合(1042条)=総体的遺留分→総体的遺留分×各人の法定相続分=各人の遺留分額→遺留分額から具体的相続分(遺産から取得できる分)を差し引いた額が遺留分侵害額(1046条)。本問の計算:基礎財産=2,000+500(X贈与・1年以内)+300(B贈与・10年以内)=2,800万円。Bの遺留分割合:Bのみが相続人(配偶者なし・子のみ)の場合は2分の1×1(Bの法定相続分)=2分の1。Bの遺留分額:2,800万円×2分の1=1,400万円。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、遺留分の算定は段階を踏んだ計算問題として出題されることがあります。本問のように「基礎財産の計算」のみを問うタイプと、さらに「遺留分侵害額の計算」まで問うタイプがあります。正確な計算のために確認すべき点は、(1)相続人への贈与は10年以内・相続人以外は1年以内、(2)悪意の贈与は期間制限なし、(3)相続開始時の財産(遺贈の目的物も含む)から出発すること、(4)債務がある場合は控除することです。
【各選択肢の発展補足】
- ア(2,000万円): 誤り。贈与を一切算入しない場合の計算。民法1043条・1044条の規定を無視した計算。
- イ(2,300万円): 誤り。相続開始時財産2,000万円+Bへの贈与300万円のみを算入した場合。Xへの贈与(500万円)を算入しない誤り。
- ウ(2,500万円): 誤り。相続開始時財産2,000万円+Xへの贈与500万円のみを算入した場合。Bへの贈与(300万円・3年前でも10年以内)を算入しない誤り。
- エ(2,800万円): 正答。2,000万円+500万円(Xへの1年以内の贈与)+300万円(Bへの3年前=10年以内の贈与)=2,800万円。計算式が正確に適用されている。
- オ(3,000万円): 誤り。「3,000万円」を導くには2,000万円以外に1,000万円を加算する必要があるが、本問の贈与合計(500+300=800万円)とは一致しない。何らかの誤計算によるもの。
【根拠条文】
民法 第1043条第1項(遺留分算定の基礎財産)、第1044条第1項・第3項(算入する贈与の範囲:相続人以外1年以内・相続人10年以内)
【補足】
遺留分算定の基礎財産の計算:相続開始時財産+相続人への10年以内の贈与+相続人以外への1年以内の贈与-債務。「相続人10年・非相続人1年」の対比は正確に暗記。悪意の贈与は期間制限なし。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第1043条・第1044条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。