登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問22:医薬品に共通する特性と基本的な知識(健康食品・相互作用)
いわゆる健康食品・サプリメントと医薬品の相互作用に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)は、シトクロムP450(CYP)酵素を強力に阻害するため、一緒に服用した医薬品の血中濃度を大幅に上昇させる危険がある。
- イいわゆる健康食品は医薬品ではないため、医薬品との相互作用が生じることは原則としてなく、登録販売者が相互作用の観点から購入者に注意を促す必要はない。
- ウセント・ジョーンズ・ワートを含む製品は、ワルファリン・経口避妊薬・HIV治療薬・免疫抑制剤等と同時に使用すると、それらの薬効が減弱するおそれがある。正答
- エ医薬品とサプリメントの相互作用は、必ず「医薬品の血中濃度を上昇させる」方向にのみ作用するため、効果が増強されて過剰作用が起こりやすい。
- オ栄養補助食品として販売されているグレープフルーツ成分(フラノクマリン類)は、消化管内でのCYP酵素を誘導して医薬品の代謝を促進するため、薬効が低下することがある。
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正答はウです。
セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)は、ハーブ系サプリメントとして広く流通していますが、医薬品との重要な相互作用があります。セント・ジョーンズ・ワートはシトクロムP450(CYP3A4等)や薬物トランスポーター(P糖タンパク)を誘導(活性を高める)するため、一緒に使用した医薬品が体内でより速く代謝・排出されてしまいます。その結果、血中濃度が低下して薬効が弱まります。
ワルファリン(抗凝固薬)・経口避妊薬・HIV治療薬・免疫抑制剤(シクロスポリン等)などで臨床的に重要な相互作用が報告されています。
健康食品は「医薬品ではないから安全」ではなく、医薬品との飲み合わせに注意が必要であり、登録販売者も購入者に確認・説明する義務があります。
セント・ジョーンズ・ワートの相互作用の全体像:
セント・ジョーンズ・ワート(Hypericum perforatum・セイヨウオトギリソウ)の主要有効成分はヒペリシン・ヒペルフォリンです。ヒペルフォリンはCYP3A4・CYP2C9・P糖タンパク(PGP)の誘導作用が強いことが確認されています。
| 相互作用のタイプ | 機序 | 結果 |
|---|---|---|
| CYP誘導 | 肝臓の代謝酵素活性が上昇 | 医薬品の血中濃度が低下 |
| PGP誘導 | 消化管での薬物排出が増加 | 吸収量が低下 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): セント・ジョーンズ・ワートはCYPを「阻害」ではなく「誘導」します。阻害であれば血中濃度上昇・中毒リスクですが、誘導は血中濃度低下・効果減弱のリスクです。記述が逆です。
- イ(誤): 健康食品であっても、成分が消化管・肝臓の代謝に影響を与えれば医薬品との相互作用は生じます。登録販売者は相互作用の観点から購入者への確認・説明が求められます。
- ウ(正): セント・ジョーンズ・ワートとの併用で薬効が低下する医薬品として、ワルファリン・経口避妊薬・インジナビル等のHIV薬・シクロスポリン等の免疫抑制剤が代表的です。
- エ(誤): 相互作用は「血中濃度を上昇させる(阻害)」方向と「低下させる(誘導)」方向の両方があります。どちらの方向かは関与する物質により異なります。
- オ(誤): グレープフルーツのフラノクマリン類はCYP3A4を阻害します(誘導ではない)。その結果、一部の医薬品(カルシウム拮抗薬等)の血中濃度が上昇し、過剰作用が起こるおそれがあります。
【健康食品・サプリメントによる薬物相互作用の分類と機序】
薬物相互作用は大きく「薬物動態学的相互作用(Pharmacokinetic: PK相互作用)」と「薬力学的相互作用(Pharmacodynamic: PD相互作用)」に分類されます。
PK相互作用(ADME各段階での影響):
| 段階 | 阻害の例 | 誘導の例 |
|---|---|---|
| 吸収(A) | グレープフルーツ→PGP阻害→吸収増加 | セント・ジョーンズ→PGP誘導→吸収低下 |
| 代謝(M) | グレープフルーツ→CYP3A4阻害→血中濃度上昇 | セント・ジョーンズ→CYP誘導→血中濃度低下 |
| 排泄(E) | 一部の生薬→腎トランスポーター阻害 | — |
セント・ジョーンズ・ワートの詳細機序:
主要成分ヒペルフォリンは核内受容体PXR(pregnane X receptor)のリガンドとして機能し、PXR活性化を通じてCYP3A4・CYP2C9・CYP2C19・P糖タンパク(ABCB1)の転写を誘導します。
臨床的に重要な相互作用(誘導による薬効低下):
1. ワルファリン: 抗凝固作用が低下 → 血栓リスク上昇<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウは一意で適切。セント・ジョーンズ・ワートはCYP「誘導」で薬効減弱という機序は手引き第1章記載と整合(阻害=アのグレープフルーツとの対比も正確)。ワルファリン・経口避妊薬・HIV薬・免疫抑制薬との相互作用は手引きの代表例として記載あり。問題本文・解説とも修正不要 -->
2. 経口避妊薬(エチニルエストラジオール等): 避妊効果が低下 → 意図しない妊娠のリスク
3. インジナビル等のHIV治療薬(プロテアーゼ阻害薬): 血中濃度が最大57%低下(FDA警告)
4. シクロスポリン・タクロリムス(免疫抑制薬): 移植臓器の拒絶反応リスク上昇
5. ジゴキシン(強心薬): 血中濃度が約25%低下(PGP誘導の影響大)
グレープフルーツ相互作用との対比:
| 特性 | セント・ジョーンズ | グレープフルーツ |
|---|---|---|
| 機序 | CYP誘導・PGP誘導 | CYP3A4阻害・PGP阻害 |
| 血中濃度への影響 | 低下(薬効減弱) | 上昇(過剰作用・中毒) |
| 影響の持続 | 継続摂取で定常的に影響 | 摂取後数時間〜数日持続 |
| 代表的な被影響薬 | ワルファリン・免疫抑制薬 | カルシウム拮抗薬・スタチン等 |
グレープフルーツのフラノクマリン類(ベルガモチン・6',7'-ジヒドロキシベルガモチン)は消化管上皮のCYP3A4を不可逆的(自殺的)に阻害します。そのため摂取後24〜72時間は影響が持続します。
登録販売者に求められる実践的な対応:
手引き第1章では「医薬品と食品の相互作用」について、食品と医薬品の組み合わせによって作用が増強・減弱することがあると明記しています。登録販売者が購入者から聴取すべき事項:
1. 現在服用中の医薬品の有無(処方薬・市販薬の両方)
2. 健康食品・サプリメントの使用状況(セント・ジョーンズ・ワート含有製品の使用有無)
3. 特定の飲み物・食品の常用状況(グレープフルーツジュース等)
特にセント・ジョーンズ・ワートは「うつ・不安に効く」という触れ込みで需要が高く、抗うつ薬(SSRIとの併用では相加的セロトニン症候群リスクも報告されている)・睡眠薬等と併用するユーザーが想定されます。購入時に「現在お薬を飲んでいますか?」の一声が医療事故を防ぐことにつながります。
医薬品でない成分が引き起こす相互作用の規制的位置づけ:
いわゆる健康食品・サプリメントは「食品」に分類されるため、薬機法の医薬品規制外ですが、有効成分を含む場合は実質的な薬理作用(相互作用を含む)が生じます。この「制度上は食品だが薬理学的には医薬品類似の影響を持つ」状況を理解し、区分に関わらず相互作用リスクを適切に評価できることが登録販売者の専門性の核心です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第2節「医薬品の相互作用」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。